第十四節 いつかのメリークリスマス
第十四節 いつかのメリークリスマス
冬――。
ここは、シゲミが活動限界を迎えた、グループホーム。本日は、クリスマスレクリエーションなるものが行われていた。スタッフは何か先に丸い紙があり、表に〇、裏に×と書かれた棒を用意していた。
「次は、〇×クイズでーす!」
どうやらその棒は、〇×クイズに使うモノの様だ。
「東京五輪で獲得した金メダルは、××個である、〇か×か? 皆―! 棒を上げてくださーい!」
グループホームの利用者は棒を上げ、〇か×か判定した。
ここにグループホーム一卑怯な男が一人――、
河本である。
河本は初め、×を上げていた。
そこで――、
「正解は、〇でーす!」
河本は〇×クイズに、不正解だった。
しかし――、
「あ、ああ」
河本はくるりと裏表逆にし、棒を〇に変えた。
「正答を記録していまーす。手を高く上にあげてくださーい!」
スタッフは各自の正答を記録していった。
「ふー」
河本は依然棒を〇側に向けて上げていた。それを見逃さない老師A。
(あやつ……)
「正解は×でーす!」
「正解は〇でーす!」
「正解は〇でーす!」
〇×クイズはどんどん進行していった。
「先ほどの問題で最後となります! 今、集計取ってます……」
〇×クイズの各人の正解数が数えられた。
「一位は……」
ゴクリと息を呑む利用者達。
「河本さんでーす!」
「わぁ!! やったぁ!!」
河本は声を上げた。
「おめでとうございます。どうでしたか?」
「まっ、余裕ですよ」
河本は調子に乗っている。
「優勝賞品でーす。おめでとうございます!」
「やったぁ!!」
ここでこの状況を是としない者が……。
(あやつめ……)
老師Aである。
「やったぁ!!」
ガッツポーズをとり、更に調子付く河本。老師Aはその日の晩に、スタッフにことの本末をチクった。
「まぁ!!」
スタッフは多少のショックを受けた。そして、河本をすぐに呼びつけた。
「〇×クイズで、不正を働いたみたいですね」
「あれー、そうでしたっけ?」
「おかしいと思えば……。あなただけ全問正解でしたよ? 返せとは言いませんが、そこまでして賞品がほしいんですか?」
「まっ、間違えました」
「何を嘘ついてるの? あなたって本当に卑怯な人間ですね」
「……」
ショックを受けたせいか、河本は黙りこくってしまった。
その日の晩――。
河本は空を見上げていた。これは堪えたのかな? と、老師Aはそれを見つめていた。
数分後、河本は口を開いた。
「まっ、東大行けるし、調理師免許とれるから、いっか!」
「! ! ! !?」
老師Aは逆にショックを受けた。
(テラポジティヴ!)
河本は、どうやら自己肯定感が他人のそれより相当高い様だった。
舞台は移り、とある精神病棟――。
シゲミが隔離室に入れられていた。
そこへ――、
「シゲミさん、今日はクリスマスだね。隔離室だから買い物できないシゲミさんに、特別にお菓子を持ってきたよ」
I.Y.に似た看護師が現れた。
「くぅん」
シゲミは心を打たれ、涙した。
「これだよ」
持ってこられたお菓子は、ポップコーンだった。
「よぃん」
「じゃあ、しっかり食べてね!」
I.Y.に似た看護師はナースステーションに帰って行った。
「バリッ」
シゲミはポップコーンの袋を開け、それを食べ始めた。
が、しかし――、
「ネチョ……」
「!! !?」
安物中の安物だったそのポップコーン。味は悪い上に、必要以上に歯にくっついた。
(!? だまされた!?)
「?」
I.Y.に似た看護師は何か気配を感じた。
が――、
(気のせいか)
対して気に留めなかった。
シゲミや河本には訪れないが、そのほか全ての人々へ――、ハッピークリスマス!




