海外に行けない今こそできること
何年連続で行っていただろうか。もうよく思い出せない。最初の年は二〇一九年、いや違う、二〇〇九年だった。それから指折り数えて十回、十一回。もう行くのが当たり前になっていた、夏の海外遠征。
正直、そのために生きていると言ってもよかったぐらい、全てをそれを中心に生活を回していた。その海外遠征に、全く行けなくなった。心にぽっかり穴が開いた、なんて生易しいものではない。絶望感というか、この、自由を失った感覚。何のために生きているんだろうか、というところまで考えた。それぐらい、海外は自分の生活の中心になっていた。
ただ、パンデミックになってしまった今、どんなにあがいても海外に行けるわけではない。日本にスタックした。閉じ込められた。
正直に言えば、毎年ずっと走り続けてきたからこその疲労感のようなものも、少しあった。飽きたわけではない。けれど、刺激が少なくなっていた感覚が確かにあって、「海外遠征に疲れていた」という言葉も、当てはまるところがあったのだ。
だからこそ、考えた。もうどうせ行けないのなら、今まで海外遠征に充てていたこの期間に、日本にいるからこそできることは何か。
日本にいながらにして、海外レースに匹敵する達成感と、感動と、充実感を味わえる。そんなレースを、そんなコースを、つないでみよう。一六〇キロの線を描こう。
それが、海外に行けない今だからこそできることだ。
そう思い立って走り始めたのが、夏を前にしたある日だった。




