最後の冬
これがラストチャンスかもしれない。そう思い、4年ぶりに思い切って北海道、ルスツリゾートへ。かな子のお腹の中には第一子を授かっていた。
新潟港から荒れ狂う日本海をフェリーで北上。
”バコーン、バコーン”
と船体にあたる波音が轟く。天地がひっくり変えるほどの揺れ。妊娠中のかな子は気持ち悪すぎて動けないと言う。後に振り返り、
”死ぬかと思った”
久々の北海道。3シーズン通った八海山スキー場に比べれば、楽しかった。ただ、妊婦健診で2週間に1度、伊達市に片道約1時間かけて通わなければならない。以前のように自由に滑れる時間が取れない現実。スキーに対する熱意の変化を感じていた。
そんな冬を過ごしていると、THE NORTH FACEから連絡が入る。
”(THE NORTH FACE)チームでUTMBに出場する”
UTMBとは、OSJハコネ50Kの優勝者が招待された、ヨーロッパアルプス最高峰モンブランの周りを1周する、世界一の100マイル(160km)レース。
実は、前年、所属チームTEVAが撤退するということで運よく同じ親会社ゴールドウィンが運営するチームTHE NORTH FACEに籍を移していた。スポンサーにはとことん恵まれている。
チームメイトである鏑木毅選手、横山峰弘選手、間瀬ちがや選手、佐藤浩美選手が出場。
”いつの日か”
密かに夢の舞台として思い描いていた、憧れの場所。その道が突如開いた。離れつつあった心。決め手となった。
”冬のスキーインストラクターはこれで最後にしよう”
転機の冬が過ぎていった。




