エピロローグ そして二人で・・・。
これにて最終話となります。
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城門から出て暫く『人並みの速さで』歩き、平原へと向かおうと街道を外れかけたそのとき、不意に後ろから声をかけられた。
「あんた私を置いてどこへいこうってわけ?!」
「えっ?」
振り向くと、愛刀を腰に挿したアリーナがそこにいた。
旅装を整え、腕を組んで不服げに頬を膨らませて仁王立ちで立っている。
「置いて行くって・・・一緒に来るの?」
聞き返した、マルクに焦ったようにいうアリーナ。
「あ、あったりまえでしょ! アンタみたいにどんくさい奴なんか私とイバハチがいなくちゃすぐやられちゃうんだから! 同じ女神に目をつけられたもの同士のよしみで私が飽きるまで守ってやるわよ! 感謝しなさい!」
「は、はぁ・・・どうも。」
「で?! これからどこへいくのよ?」
「とりあえずエルフの王国にでも行ってみようかなって、この間の事件のことも気になるし。 何かわかるかもしれないでしょ? だからルーデルさんの飛行機で行こうかと思ってたんだけど・・・。」
言った途端、アリーナが目を輝かせる!
「あのマルクがいってた空を飛ぶ魔法機械ね! サイコーじゃない! 早く呼びなさいよっ!」
「いや、でもあの飛行機ルーデルさんと僕二人乗りなんだけど・・・。 いっそ歩いていく?」
愛想笑いを浮かべながらいったユーリアの提案はしかしアリーナの罵声によって一蹴された。
「ハァ? 何言ってんのよアンタ?! そのくらい何とかしなさいよっ! そのルーデルって奴に頼んでみるのよ! ほら早くっ!」
「えぇー。 まぁ一応聞いてみるけど・・・。」
マルクはカードを引き、ルーデルさんを呼び出す。
カードが輝き消えると同時に懐かしい声の念話が響いてきた、
(やぁ、マルク君! 久しいな、無事王を救ったようじゃないか。 われらの盟友、『白い死神』から話は聞いているぞ!)
(えぇ、まぁ僕はいつもどおり大して何もしてませんけどね。ところで、今回はエルフの王国まで行きたいのですが・・・その、もう一人一緒に行きたいという人がいるんですけど・・・)
(ハハハッ! すみにおけんなマルク君も!)
(いや、そういうわけじゃ・・・。)
(安心したまえ、その辺の事情も聞いている。 この間キミを下ろした草原のあたりで待っていてくれ、『手配』を済ませてすぐに向かう! ではな!)
そこで念話は切れた。
そばでは交渉の行方をムズムズしながら待っているアリーナの姿。
「えーと、何とかなるみたい。草原で待っててくれだって。」
マルクがいうと思い切り拳を振り上げて目を輝かせている。
「ほらぁ!私の言ったとおりでしょ! そうと決まればさっさといくわよ!」
「う、うん。 っうぇ! ちょ!ちょっとー!」
「うるさいっ! はやくこいっ!」
そうしてアリーナは、マルクを引きずるように爆速で草原へと向かって駆け出していった。
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数刻後・・・
「なによ! なにもいないじゃない!」
「いやいや、気が早いよ・・・。あれだけ常識外のスピードできたらそりゃあ、ね?」
いきりたつアリーナを宥めていると、遠くの空からからかすかに音が聞こえてくる。
ー【・・・ゴォウンゴォウンゴォウン・・・】ー
ルーデルさんがいつも乗ってくるシュトゥーカと似ているようだが、少し毛色が違う音であるようにマルクには感じられた。
やがて銀翼が雲の切れ間から現れ、シュトゥーカとは明らかに違うシルエットの銀翼が滑り込むように草原へ着陸する。
「凄い! アンタが言ってたのとちょっと違うみたいだけど、これもいいじゃない!」
そう興奮しながら言うアリーナ。
やがて機体の横の扉があき、タラップが降ろされると中からルーデルさんが姿を現した。
「やぁ、待たせてすまなかったね。 マルク君、可愛らしい恋人さん。」
そうタラップを降りながら陽気に言うルーデルさんに顔を真っ赤にしながら食ってかかるアリーナ。
「ななな何言ってんのよっ! 斬るわよっ!」
「はははっ!怖いお嬢さんだ。切るなら右足にしてくれよ? そこなら替えがきくからな!」
カラカラと笑うルーデルさん。 ルーデルさんにとってはアリーナの脅しも「デレ」にしか聞こえなかったようだ。
「何なのコイツ・・・。」
「僕もまだそこまでよく知らないんだけど、異世界では鋼鉄の鳥で凄い数の敵を倒したみたいだよ。っていうかこの世界でもワイバーンの群れとドラゴン倒してるしね。」
「取り敢えずとんでもない変人だってことは理解したわ・・・。」
ルーデルさんを見ながら言うアリーナに理解不能な相手に対する若干の怯えの色が浮かんでいるようだ。
「そう言えばルーデルさん今日はシュトゥーカじゃないんですね?」
「あぁ、今日はJu52タンテ・ユー、わが軍の軍馬だ。年寄りだが、信頼できるいい馬だぞ、コレは。シュトゥーカより客の乗り心地もいいし、お嬢さんをエスコートするには丁度良いだろう。」
言いながら機体を軽く叩く。
「本当はギガントで来てビックリさせようかとも思ったんだが、さすがにこの草原では運用は難しそうだったのでな。さ、そんな事は置いて乗り給え。 今日も機内食を準備しているぞ。」
「やった! 実は僕楽しみにしてたんです。へへへっ♪」
マルクが照れながら正直に告げるとルーデルさんも嬉しそうに言う、
「そうだろう! あれはドイツでも異世界でも味わえん!」
「私の分もあるんでしょうね!」
「もちろんだお嬢さん!では行こう、出発だ!」
2人が乗り込むと搭乗口は閉じられ、再びエンジンは轟音を響かせながら草地を滑り、軽やかに大空へ舞う。
マルクと新たな仲間、アリーナを乗せ、まだ見ぬエルフの国へ向かって・・・。
(完)
(追記)
完結してから急にアクセスやブクマが増えて困惑してます(^^;
それだけ連載を追っていただける作品は実力がいる、と言う事なのでしょうか・・・
あらばかりが目立つ作品ですが皆さんの感想などもいただければ幸いです。
お読みくださりありがとうございました。転生者らしき少年の伏線が回収できないままですが、一旦ここで一区切りとさせて頂きたいと思います。
新たな構想も温めていますが、これからしばらくは
N6649DG
夢は国家公務員!?~異世界なのに転生者に優しくないこの世界~
一つに連載を集中させたいと思います。 引き続き応援頂ければ幸いです。