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晴れ時々曇り、ところによりロボが降るでしょう 1

 

『Hello.起きろ。クソッタレ共。

王だろうが、商人だろうが、冒険者だろうが、乞食だろうが、俺の前では平等にクソッタレなリスナーだっ!

それが嫌ならこのチャットルームから出ていけ。っつー訳で、今日も始めるぜ!

Knights(ナイツ) of(オブ) the() Round(ラウンド) Online(オンライン)系ラジオ。DJカズヤが送る番組。名前? んなのは存在しねぇ! んじゃ、いきなり一曲行くぞ。

朝から景気のいいナンバーだ。曲は――――』


 男のダミ声で朽野は、目を覚ます。

 そして、そのあとから、響くのは大災害(カタストロフィ)前のヒットナンバーだ。

 ゆっくりと目を開けるとそこにあるのは見慣れた天井。コンクリートで出来たその殺風景な天井に、木の根が張っている。

 かつては、小さなオフィスとして使われていたそこは、今は見る影もない。ビルの真横に生えた巨大な木。その根が食い込み、低層部分は根っこが張ってる。

 その為、雨が降ったりすると色々と大変だが、その分、家賃も安い。

 微睡から脱出することが出来ず、布団にもぐろうとし、気づく。そこは普段のベットではなくソファー。掛物も何もない。

 どうして、そうなったか思い出し、のろのろとソファーから起き上がる。


『んじゃ、曲も終わったし、天気予報だ! 今日、神奈川全般で晴れ。だが、町田、てめぇは駄目だ。晴れのち曇り、ところにより雨が降るでしょうってな! ま、傘は忘れるなよってことだ!』

 曲も終わり再び流れ出すだみ声に、朽野は、顔をしかめる。

 昨日帰ってきたのは3時。4時間睡眠の頭ではこのだみ声は少しきつい。もっと若いお姉さんの番組もあるというのに自分も何でこの番組を聞いているのかわからない。

 そんな文句を心の中でつぶやきつつ聞いている朝7時からスタートするこの番組。朽野の目覚まし代わりに使用している。

 ルイ・アームストロングが耳元で歌っているかのような声、味のあるいい声だが、明らかにDJ向きの声ではない。


 ただ、Knights(ナイツ) of(オブ) the() Round(ラウンド) Online(オンライン)系のプレイヤーであれば、あのラジオといえば、通じる人気番組だ。

 このラジオ番組はチャットルームを通じて朽野に届いている。どういう原理か知らないが、VRMMOがそのまま現実に引っ張られた結果、殆どの機能が残ったままとなっている。


 その中でも便利なのが、チャット機能。

 携帯とかと同じで、電波(?)の悪い場所では聞こえず、また、妨害されると何も聞こえなくなるのが欠点だが、携帯とかと違って何かを持つ必要もない。

「オーダー。『メニュー』」

≪オーダー確認。メニュー開きます≫

 視界が切り替わる。視界の隅に、いくつものアイコンが目に入る。

 チャットの項目を見ると『全体チャット』、『パーティーチャット』、『フレンドチャット』、『ギルドチャット』、『チャットルーム』とある。

 現在、チャットルームは数千。制限なく作れるので、現在増殖中。朽野は、そのうちのDJカズヤのチャットルームを選択し入っているのだ。

 部屋の設定は、『部屋のマスター以外話すことが出来ない』というチャットルームしからぬ設定だが、この設定を使って大災害(カタストロフィ)前からラジオ番組もどきをやる人々もおり、今もこうしてこうすることでラジオ番組は成立している。


 ともあれ、ぼんやりしている時間は無い。

 隣の部屋で寝ている彼女――六花(りっか)・由良・ベルクマンから事情を確認しないといけないのだ。

 


 あの戦闘の後が大変だった。

 気絶した彼女を抱え、町田に帰還……は、いいのだが、騒ぎを嗅ぎつけた衛兵やら冒険者やらがわんさか平原に駆け付けたのである。

 そのまま捕まったら、どれだけ拘束されるか分かったものではない。

 なので、『円卓』にチャットで報告し、こっそり帰宅。彼女を抱え、尚且つ、衛兵やモンスターを避けつつ戻るのはかなり至難の技だった。


 まぁ、それは、どうでもいいのだが……

 思い出す。あの戦闘の時の自分の姿を

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 二人の間に入り込んで銃を突き付けたり、何というか中2病なことをほざいたり……

 元々、シリアス向きのキャラではないのだ。

 思い出しただけで顏から火が噴き出る程恥ずかしい。

 


「ま、待て、中2病でも似合っていれば問題ない……はずだ」

 剣と銃を装備し鏡の前に立つ。

 寝間着のまま、恐る恐る、当時のポーズを再現してみる。

 腰を低くし、手をクロス。

 顏を真横に、銃と剣を突きつけるポーズ。


 脳内で当時の状況を再現。

 そう、ここは夜の平原。月光が照らす中、豪理さんがこう言った訳だ。

『ねぇ、あなたの名前は?』

 恐怖に顏を引き攣かせる彼に、自分はこういった。

 涼しげな表情で、多分、格好良く見える斜め45度くらい顏を傾けて

 視線は鏡に向けつつ、呟く。

「朽野 伸也」


「何、しているの?」

 そんな、彼に背後から女性の声が聞こえる。

 ポーズを決めたまま、首を回転させ、背後を見る。

 そこには、金髪碧眼の美女が顔を引き攣らせながらこちらを見ている。

 サッと鏡に振り返る。

 そこに映るのは、がに股で、手をクロスさせ銃と剣を構えるドヤ顔の男の姿。

 映画や漫画でもたまにあるポーズだが、それは相手がいるから格好いい訳であって、周りに誰もいないこの状況だと


 ……ただの変なポーズにしか映らなかった。



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