第一話 能力ランキング22位
第一話 能力ランキング22位
「おかあさん……!!」
黒い炎に包まれる母を前に、レイは立ち尽くしていた。
炎は赤くない。
黒かった。
まるで闇そのものが燃えているように。
その光景を、一人の男が退屈そうに眺めている。
能力ランキング22位。
ブラッド。
レイは何もできなかった。
ただ見ていることしか。
◇
「レイ、この袋開けてくれる?」
「いいよ」
レイは右手を袋に向ける。
細い光が走った。
針ほどの細さしかない光が袋の端を焼き切る。
能力『光線』
右の手の平から1ミリの光線を出すだけの能力だ。
「助かるわ。女同士の生活だとこういう時困るからね」
母が笑う。
レイは少しだけ苦笑した。
この世界には、生まれながらに能力を持つ人間がいる。
強力な能力を持つ者は富と名声を手に入れる。
だがレイの能力は違う。
戦闘にも役立たない。
生活でもほぼ役に立たない。
外れ能力。
そう呼ばれていた。
それでもよかった。
母との暮らしがあったから。
この村の平和な毎日があったから。
「レイ、買い物お願い」
「うん」
レイは家を出た。
だが村の様子がおかしい。
人々の顔が強張っている。
女、子供たちは家へ戻されていた。
レイは村長に近づく。
「どうしたの?」
村長は険しい顔をした。
「レイ、実は近くに能力ランキング22位が来ているらしい」
レイの顔色が変わる。
能力ランキング。
1位~100位まである。
世界のトップ達。
その中で。
22位。
ブラッド。
能力『黒炎』
対象が燃え尽きるまで消えない黒い炎を操る男。
世界で22番目の実力者。
この国では、2番目の怪物。
そして。
殺人も強姦も躊躇なく行う外道。
「なんでそんな人がこの村に?」
「わからん。とにかく女子供は全員隠れるよう伝えている。お前も母親と一緒に家にいなさい」
レイは急いで家へ戻った。
窓から外を覗く。
いた。
全身黒ずくめの男。
長い黒髪。
周囲だけ空気が重く見える。
まるで死神だった。
ブラッドは村長の前で立ち止まる。
「22位様。この村へ何の御用でしょうか?」
村長が頭を下げる。
ブラッドは鼻で笑った。
「なんで俺が来た理由を、てめぇに説明しなきゃならねぇんだ?」
「焼き殺すぞ」
村長の顔が青ざめる。
「失礼いたしました」
慌てて下がる。
ブラッドは退屈そうに周囲を見渡した。
何かを探しているようだった。
その時。
レイと目が合った。
まずい。
慌てて窓から離れる。
だが。
パリン!!
窓ガラスが砕け散った。
レイの体が震える。
重い足音が近づいてくる。
ブラッドが入ってくる。
「目立つなぁ、その黄色の髪」
レイは動けなかった。
恐怖で。
呼吸すら苦しい。
その前に母が立つ。
「何の用ですか、22位様」
ブラッドが笑う。
「随分勇ましい女だな」
「俺が何しに来たか、お前に説明する義理でもあるのか?」
母はレイを庇うように前へ出た。
そして覚悟を決めた顔で言う。
「娘には手を出さないで」
「私はどうなってもいいから」
一瞬の沈黙。
ブラッドは笑った。
「そうか」
そして、
「じゃあ死ね」
母の体が黒く燃え上がった。




