第32話 ヒカリの中二病からの奇跡
夜の静寂が屋敷を包む中、ヒカリはひとり、裏庭で魔法の練習をしていた。
「……我は君を守る盾となり、君を癒す存在になろう。我の魔法をとくと見よ……《シャイニングシールド》! そして、《シャイニングシャワー》!」
両手を大きく広げ、誇らしげに詠唱を唱えるヒカリ
「……うーん、もうちょっと言葉を変えてみようかな」
「しかし俺、中二病みたいだな」
ヒカリが額に手を当てて悩んでいると、不意に背後から声が聞こえた。
「お前は、何をしているんだ、それに中二病とはなんだ……?」
「えっ!?」ヒカリは驚いて振り向いた。そこにはカインが腕を組みながら、呆れたような表情で立っていた。
「ま、まさか……聞こえてた?」
「ああ……最初からな」
「うわー、マジかー!」ヒカリは顔を両手で覆い、穴があったら入りたい気持ちになった。
「……いやー、その、イメージトレーニングは大事かなって……」
「うむ、一理あるな」カインは普通に頷く。
「いや、そこは笑って誤魔化してくれよ!」
「別に変なことじゃないだろう。むしろ、お前の魔法がどうなるのか興味がある」
「えっ?」
「実際に魔力を出して試してみろ」
「え、いや、流石に無理じゃないか? 今までそんな魔法使ったことないし……」
「言い出したのはお前だろ。さあ、やってみてくれ」
「ぐぬぬ……」
「ヒカリ少し待ってくれ」
カインがヒカリの魔法を使うのは止めた。そしてクラリスに向かって言う。
「クラリスちょっとこっちに来てくれ」
自室の窓から見ていたクラリスを呼び寄せた
「何カイン?」
クラリスは呼ばれるままに裏庭に来た。
「今からヒカリがクラリスに魔法を使うからそこに立っててくれ」
クラリスは頷いた。
「ヒカリ準備は出来たぞ」
カインがそう言うとヒカリは渋々、再び魔力を込めることにした。
「……我は君を守る盾となる。《シャイニングシールド》!」
そう唱えながら、クラリスを守る光の盾を強くイメージする。
その瞬間――
「えっ……?」
クラリスの周囲に、眩い光が集まり、純白の輝きを放つ半透明の盾が展開された。
「ええっ!? えええええ!?」クラリスは目を見開いて驚いた。
「……おお」カインは納得したように頷く。
「な、なんだこれ!? 本当に出た!?」
ヒカリは動揺し、光の揺らめきを見つめる。
「どうやら、お前の魔力の操作は間違っていなかったようだな」
カインが分析する。
「えっ、マジで!? 俺、本当に光の盾を作れたのか!?」
「見ての通りだ。クラリス、何か感じるか?」
「えっと……すごく安心感があるような、優しい魔力に包まれている感じがします」
「なるほどな。ヒカリの魔力は防御と治癒に向いているのかもしれん」
「や、やったー! 俺、すごいじゃん!」
ヒカリは飛び跳ねて喜んだ。
「だが、持続時間や耐久力はどうだ?」
カインは冷静に指摘する。
「えっ?」
カインが軽く指を鳴らした瞬間、光の盾はふっと消えた。
「うわっ、早っ!」
「やはり持続時間は短いな。おそらく、魔力の制御がまだ甘いんだろう」
「そ、そっか……でも! 初めてなのに、できたことが奇跡じゃないか?」
「まあ、それは認める」
その様子を見ていた水精霊がオドオドしながら言う。
「ひ、光の精霊ってすごいんだね……」
「ふっふっふ、そうだろう? 俺はすごいんだぞ!」
ヒカリは胸を張って得意げに笑った。
「……まあ、中二病っぽいところはともかく、使える魔法が増えたのは良いことだな」
カインがため息混じりに言う。
「中二病は余計だ!」
こうして、偶然の発見からヒカリの新たな魔法が生まれた。今後の戦いにおいて、この《シャイニングシールド》がどのように役立つのか、誰もが期待せずにはいられなかった。




