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光精霊に転生した俺は悪役令嬢推しでした!  作者: のほほん


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第33話 カインの焦り

クラリスが眠りについた後、夜の静寂の中でカインはじっと考え込んでいた。


ヒカリが魔法を使った。


それがカインにとっては大きな衝撃だった。


精霊の役割は、基本的に契約者へ魔力を供給すること。

精霊自身が魔法を使うことは、通常あり得ない。

契約者が強ければ強いほど、大量の魔力を引き出せるが、ヒカリには契約者がいない。


それなのに――


「ヒカリは、どうやって魔法を使ったんだ……?」


カインは拳を握りしめ、ふと自分の手のひらを見つめた。


「俺に……魔法は使えるのか?」


考えても答えは出ない。

ならば、やるしかない。


カインはヒカリを探し、屋敷の庭に出た。


「ヒカリ!」


「ん? 何、カイン?」


ヒカリは、まだ空に浮かんでフワフワと漂っていた。


「お前、魔法を使うとき何を想像した?」


ヒカリは即答する。


「クラリスをすべてから守る盾をイメージしたよ」


「……イメージか」


ヒカリは楽しげに続けた。

「そそ! 誰にもクラリスを傷つけられない盾をって! まぁ光の盾は出たけど、正直、弱すぎてダメだったな……」


「……なら俺は、クラリスに攻撃しようとする敵を撃つイメージをするか」


カインは目を閉じ、仮想の敵を思い浮かべた。

クラリスに刃を向ける、見えない敵。

それを焼き尽くす力。


その瞬間、カインの手元に赤い炎が集まり、槍の形を成していく。


「《焔の槍》」


カインが投げ放った槍は一直線に飛び、庭の大木に直撃した。

だが――


「……ダメか」


木の皮が少し焦げただけだった。


「俺もヒカリのことは言えないな……」


しかし、ヒカリは興奮していた。

「カイン、すげーな! ちゃんと魔法になってるじゃん!」


カインは腕を組みながら考え込む。


(これは、俺の魔力なのか? それとも……)


すると、水精霊が小さく震えながら言った。

「ひ、火精霊も魔法使えるんだ……」


カインは無言で夜空を見上げた。


もし、精霊が魔法を使えるのならば。

それは、今までの常識を覆すことになる。


焦りにも似た感情が、カインの胸の奥に広がっていった。

ヒカリの魔法を目の当たりにし、自分も魔法を使えたことで、カインの心の中に焦燥感が広がっていく。


「精霊が……魔法を使うなんて、あり得るのか?」


カインは自分の手をじっと見つめた。

今、確かにそこには炎が宿っていた。

しかし、それは本来、精霊が扱えるものではないはずだった。


「ヒカリ、お前……自分で魔法を使えたこと、どう思ってる?」


「んー、普通にすげぇって思った!」


「……そうか」


ヒカリの無邪気な答えに、カインは少し困惑した。

本来ならば、これは喜ぶべきことなのかもしれない。

しかし、精霊という存在のあり方を考えれば、それは不自然なことだった。


「ヒカリは、本当に精霊なのか?」


カインはふと、そんな疑問を抱いた。


契約者なしに存在し、魔法まで使える精霊など、今まで聞いたことがない。

それは、果たして精霊と呼べるのか。


カインの沈黙を察したのか、ヒカリが不思議そうにカインを見た。


「カイン、難しいこと考えてない?」


「……考えない方がおかしいだろ」


「まぁ、でもさ、魔法使えるなら強くなれるってことじゃね?」


「……それは、そうかもしれないが」


「だったら、もっと練習しようぜ!」


ヒカリはあっけらかんと言うが、カインの胸の中の不安は消えなかった。


(俺たちの力は、普通の精霊のものとは違う……)


この違いが、今後クラリスに何か影響を与えるのではないか。

そんな予感が、カインの心をざわつかせた。


しかし、今はまだ答えを出す時ではない。


「……そうだな。まずは、もっと魔法を試してみるか」


カインは再び《焔の槍》を生み出し、放つ。

先ほどよりも、少しだけ威力が増していた。


「おー! ちょっと強くなってるじゃん!」


ヒカリの言葉に、カインは小さく息を吐く。


(とにかく、今は力を磨くことに集中しよう)


焦りを抱えながらも、カインは静かに決意を固めた。

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