従者と襲撃者
お家についてから、寝てしまったトーマととりあえず客間に寝かせる。
結構いい運営をしていたようで、体の汚れはほとんどなく、体を洗わずともベットに放り込まれた
管理人の人に聞いた話、身長こそ私と同じぐらいだが、年齢は私より3つ年上らしい。手話は管理人の内の1人が、教えてあげたそうだ。
従者にするにあたってまずやるべきことは、父への紹介である。これは私が済まさないといけないことだ。
だが、これに関してはすんなりとOKが出た。
未来予知で見た未来を変えるためだと言ったのが良かったのかもしれない。
トーマの居場所は確保されたわけだ
だが、トーマにとって先ずやるべきは、言葉を発することだろう。ルナが付き添って教えるてはずにはなっているものの、ルナは手話を知らないので私が近くにいる必要がある。
私は、トーマが寝てる間に従者にする権利を父からもぎ取ると、トーマの回復を待った。
夕方頃にトーマが目覚める。
知らない空間にいることに混乱していたようだが、私が手話で話しかけると、少し落ち着いたみたいだった。
「(ここは私の家です。あなたは今日から私の従者として、この家で過ごしてもらいます)」
「わぁ……(本当に従者にして貰えるとは思ってなかったから嬉しい、です。今日は何をすればいいですか?)」
「(まずは、普通に喋る練習からしましょう。他の者とコミュニケーションを取るためにも、会話は必要になってきます)」
「(分かりました)……わかい、ました」
「り!わ、か、り、ま、し、た」
「……り……?わかりました」
ルナが、口の中をよく見えるようにして、「り」と発音してみると、何とかわかったようで、トーマはすぐに「り」を言えるようになった
(この調子なら、すぐに喋れるようになるかもしれない。良かった)
名前を覚えてもらう時にルナにお願いしたらちゃんと覚えて貰えたかもとかはもうこのさい放っておこう
「そういえば、襲撃は今夜だっけか……」
前世で集団暗殺が起こったのは、今夜のことである。
気を引き締めると共に、失敗に終わった両親の暗殺がまた行われる可能性も考える必要があるため、両親には十分注意するように言ってある。
(何事もないのが1番なのだけれど……)
今日は寝れない夜になりそうだと、そう思った
襲撃が来る事を伝えた貴族たちはそれぞれ怪しまれない程度に武装を強化し、注意しているらしい。
まあ、その辺は実際に襲撃があるかどうかで大きく変わってくるだろう
問題は、私達の身を守ることだ。
私達が王に会いに行ったことは情報として漏れてる可能性は十分にある。
その結果、王に賛同する者として狙われる可能性が出てきたのだ
と言っても、普段通りに過ごすことは大事だ。
そうしないと襲撃に気づいていることがバレてしまう。
私は、ルナとともにトーマのそばに居ることを選んだ
最初に気づいたのは、トーマだった
「くる」
そう呟いた次の瞬間、屋敷内でドーンという爆発音がした
場所は中庭の辺り。ルナとそちらに向かおうとすると、トーマが着いてくといった
今は押し問答してる暇もない。
ケガだけはしないようにと言って、着いてくるのを許すと、私は足の早いルナに抱っこしてもらって中庭へと向かった。
中庭では、噴水が爆発したようで、夜勤の使用人たちがザワザワと野次馬をしていた
前に向かおうとすると、トーマにとめられた
「嫌な視線」
「……そう、狙われてるのね?」
恐らく偉い人が前に出てきて騒ぎを抑えようとする所を狙おうって寸法のようだった
両親には、屋敷内で何があっても動かないように言っておいたので、ここに来ることは無い。
なので、場を収めるとしたら私の役目だが……
……ここは、メイド長に沈めてもらうとしよう。
ちょうど走ってきたメイド長を見つけて、そう考え、引き返そうとしたその時。
「っ!」
小さな叫び声とともに、トーマに矢が刺さった。
正確に言えば、私を庇ったトーマに矢が刺さったのだ。
矢の方向から矢を射た大まかな場所を推理してそちらを見ると、木の上に誰かいることがわかった
咄嗟に前世で習った束縛魔法を放つと、成功したようで、人影は木から落ちた
ルナがトーマの手当をしてるうちに、人影へと近づくと、ちょうど拘束魔法を解いたところのようで、弓を下ろしナイフを取りだしてきた
私も同時にナイフをとると、急所を狙うようにナイフが振られ、それを私が受け止める
数回そのやり取りをしたと思ったら、
ちょうど月明かりが彼を照らし出す
「ッッッ……アルドッッッ」
私がその名を呼ぶと、相手は一瞬固まったがナイフを振りかざしながら、「なぜ名前を知っている」と、どこか憎たらしそうに、裏切り者は声を発した
本当のことを言う訳にも、言いたい訳でもない私は、だんまりを決め込むと、「まぁいい。」と、諦めたように呟いた
そして、当たりが騒がしくなって来たのを察してか、アルドはそのまま、闇に紛れて逃げ出してしまった。
「アルド……」
実際に目にするとなんだか悲しさが湧いてきた
なんで裏切ったんだ。最初からそうするつもりだったのか?何気ない会話を楽しんだあの時間は嘘だったのか?
私は、頭が混乱するような気がして、首を横に振る。
「っ!トーマ!」
冷静になったところで、トーマのことを思い出して、私はトーマに駆け寄った
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数時間後。両親に事の顛末を話し終えたところだ。
両親は、傷の心配をしてくれたが、私には怪我はない。
トーマが庇ってくれたことを話すと、トーマをちゃんとした従者として育てると約束してくれた。
等のトーマは矢の傷が残るかもしれないそうだが、致命傷では無いそうだ。毒の類もなかったらしい。
私の急所を狙った矢だったが、身長差のおかげで、トーマの急所には当たらなかったようだ。
本当に良かった。
トーマにはきつく叱っておいた。そして、お礼も言った。
ところで、と、噴水の爆発になぜ気づいたのかと問うと、トーマは耳が聞こえない分、鼻が利くそうだ。
火薬のような匂いがしたらしく、「(襲撃が)くる」と、気づいたらしい。
私の動きをとめたのも、嗅いだことの無い匂いがしていたからだと教えてくれた。
……犬かな?と思ったのは内緒だ
……とまあ、襲撃者に逃げられてしまいはしたが、私の一家への襲撃はやり過ごすことが出来たのだった。