偽物
人を1人連れた状態での逃げは、とても難しかった。
敵はどちらかを捕まえれば良いのだから、そりゃ簡単である。
鬼に見つかっては逃げ、見つかっては逃げを繰り返してるうちに、屋敷の全容がわかってきた
「お嬢様、疲れました、休憩させてください……」
「無理よルナ、今は休憩なんてしてる暇はないわ」
逃げ回って2時間ぐらいたったであろうところで、ルナが弱音を吐き始めた。
一緒に鍛えてるはずなのにこれはおかしい。
死を克服せし者でルナを見る。
……すると、ルナでは無い名前が浮き上がってきた。
(偽物!)
やられたと思いながらも、それならルナを放っておいても良いと思いつくが、いきなりそうすると偽物だと気づいたことにバレてしまうかもしれない。
幸い、制限時間ギリギリになったら私を殺すつもりのようなので、しばらく泳がせることにした
そして、60回目。屋敷の全容を見るに、どうも、私が行っていない場所があるようだ。そこに本当の人間がいるに違いない。
時間ギリギリになりそう、と言った所で、わざと1人落とし穴に落ち、下の階に降りると、さも合流したがってるかのように上の階を目指す。
そして、ルナの偽物が居るところを避け、行ったことのない部屋に到達すると、
そこには猿轡をされて両手両足を縛られてる子供が居た。
首元を見るに、どうやら奴隷のようである。
素早く動かなければならないので、奴隷の子供を抱え、部屋を出たところでルナの偽物と遭遇した
「お嬢様?その子供は一体……」
「黙れ偽物お前にお嬢様と呼ばれたくない」
「偽物?なんのことですか?ほら、鬼が来ます、早く逃げましよう、お嬢様」
私が警戒をとかないのに気づいて、なお擦り寄ってくる偽物。
何をしたいのかと思ったら、後ろから気配がする。
どうやら挟み撃ちしようとしてるらしい
私は、子供を抱えたまま、三階から飛び降りた。
「ちっ」
という舌打ちの音がやけに耳に残ったが、そのまま足を回復魔法で回復させて屋敷内をまだ逃げる。
復活地点を回復魔法使った後に設定してから、20回
計80回死んだ所で、ようやく3時間経ったことを知らせる鐘が鳴った。
わたしは、はぁはぁと漏れ出る息を落ち着けながら、指に回復魔法をかけた。
そして、奴隷の子供の猿轡を外してあげる。
「大丈夫?怖かったでしょ?」
「……あ……うん……」
奴隷の子供は、鳥の獣人のようで、背中に羽が生えていた。だが、扱いが酷いのであろう。羽はボロボロだった
回復魔法をしてあげると、羽が生え変わる。綺麗な羽に満足したその時、
「ほんまにクリアしてもうて……化け物かいなあの嬢ちゃんは」
「化け物ではないですよ、スキルのおかげです」
奥方様と鋼牙君が一緒に出てきた
「これで、交渉の場は設けてもらえるんですよね?」
「まぁ、私は人間と違って嘘は言わん。話を聞こうやないか」
そう言って、奥方様が合図をすると、どこからか女の人が出てきて、奴隷の子供を連れていった。
「交渉の席は設けとる。この部屋や。」
部屋に入ると、大勢の鬼の女性が鎮座して居た。
1段上がった場所に奥方様と鋼牙君が行くと、私はそこに向かい合う位置で正座した。
「で、交渉材料はなんなん?交渉内容は門で話してたとおり、戦争を起こさないためやろ?」
「そうですね。」
「勿体ぶらないではよう出しぃ。」
私が、薬をアイテムボックスから出すと、奥方様は目を丸くした
「アイテムボックス……かつての勇者が使ったとされる魔法やな……それに、門で言ってた未来予知の力も本物みたいやし……お前さん何者や?」
「リーシャ・アルマテルグただの貴族です」
「ふん、話したくないならええわ。んて、その液体がなんなんや?」
「これは、人間の男を鬼に変えれる薬です」
私が薬の効果を言うと、周りがざわめいた
「なんやて……?人間風情を鬼に変えるやて……?」
「どうですか?あなたたちの問題にあった薬でしょう?」
「せやけど人間風情を鬼に出来るなんて聞いたことあらへん。嘘やないんやな?」
「嘘など着いておりません」
「ほんまやなかったらお前さんら死刑やで?」
「ええ。どうぞ。」
私が自信満々に言うと、奥方様の一声で、奴隷……では無いらしい人間の男が連れてこられた。
「レオンよ。お前に選択肢を与える。このまま不敬罪で労働奴隷落ちか、鬼となって一生性奴隷となるかの2択や。」
「鬼に……?そんなことが……?」
「返事は」
「……鬼になることができるなら、俺は喜んで鬼になる。」
「せやろなぁ、そういうと思うたわ。」
奥方様が私に視線で促すので、薬をレオンさん?に渡す。
すると、男は躊躇無く薬を飲んだ。
次の瞬間、煙のようなものが体から吹き出し、レオンは苦しみ出した。
咆哮は徐々に収まり、うずくまった顔を上げると、そこには確かに鬼の証である角が生えていた。
「ほんまに鬼にするクスリやったんやな……」
「奥方様……これでようやくあなたに求婚ができる」
「辞めんさい。求婚なら既に散々されとるわ」
「一目惚れだ、俺と結婚してください」
「あぁもう。ほかの女の相手もするんが条件やで?ええんか?」
「あぁ。奥方様の……璃音様のそばに居れるのなら……いくらでも搾り取られてやろう」
「アホゥ。そこは嘘でも好いた女だけや言うとけばいいものを」
……若干取り残されてる状態だが、上手くいったということでいいのだろうか?
「薬の製法を交渉の代価に置きます。お返事の程は?」
「私の完敗や。ええやろう。協力関係を取り付けるわ。」
「知恵さんへの罪も問わないですか?」
「せやな。」
「鋼牙君が旅に出ても大丈夫ですか?」
「大人になったら帰ってくるっちゅうなら……」
「旅に出ても大丈夫ですよね?」
「なんや、男1人つれていくつもりかいな……」
「このお薬があれば男には困らないでしょう?」
「んー……せやなぁ。製法を受け取る代価っちゅうんなら、旅に出てもええ。ただし、本当に製法が正しいとわかってからや。ええな?」
「ありがとうございます」
レオンさんをしっしとあしらいながら奥方様は了承してくれた。
「あともうひとつ……」
「なんや、まだ何かあるんかいな。」
「奴隷の扱いですが、食べ物は大切にした方が美味しくなりますよ」
「……さっき回復させてたんのもその理論か?」
「いいえ、あれは綺麗な羽を見たくなったからです」
「ふんっ。掴めんやつやなぁ」
……と、そこまで会話をすると、地下牢に閉じ込められていた皆が地下牢から出され連れてこられた
「知恵。おまえさんの罪はこのリーシャが完遂した。」
「ありがとうございますリーシャ様」
「鋼牙の仲間だったか。これから鋼牙をよろしく頼んます。」
「当然です大切な私たちの仲間なので」
「当然……」
「当然っ!」
「……で、誰が良い仲なんや?鋼牙」
「奥方様っ、そういうのはやめてください!」
「なんや、私だけ恥さらしにするつもりかいな」
「そうは言いませんけれど!」
なんだかんだ仲良さげな2人のやり取りに、一同ホッとしたのか、和やかな空気になった
「そうや、今日は屋敷に泊まっていきんしゃい。旅立ちの門出祝いやわ!」
「「「「「え?」」」」」
そんなこんなで、その日は奥方様の屋敷に泊まることになった




