侵食される世界
車のメンテナンスを終えた龍二も事務所に集まり、四人は今後の方針について話し合う。バグズはテリトリーを徐々に拡大し、最終的に侵食され尽くした世界は闇の底へ沈む。それを阻止するためにも先ずはバグズのテリトリー拡大を止めなければならない。
「でも、あの数のバグズを相手にするのは無理があるんじゃ……」
アリスが口にした疑問は至極真っ当だった。昨夜のバグズから逃げる際にもおそらく百をゆうに超える数のバグズがいた。バグズの大群に真っ向から立ち向かうのは自殺行為に等しい。
「せやから、ウチらが叩くんはバグズを生み出しとる本体や。テリトリーにおる増産バグズを倒すことが出来ればバグズの無限増殖は防げるし、テリトリーが拡大することもないからな」
「とは言っても、その増産バグズのいる場所が問題なんだけどね」
バグズを生み出し続ける増産バグズはテリトリーの中心部に居座っているらしく、当然周囲にはバグズが無数に蔓延りそれを守っている。近づくことすら困難な上、近づけたとしても無数のバグズを相手にしながら増産バグズを倒さなければならない。
絶望的な状況を理解したアリスは言葉が出なかった。唯一戦える花音でも無限に増殖されるバグズ相手では数で圧倒されてしまう。アリスの心境を察したのか、心配しないでと呟き光の球を六つ背後に出現させた。
「これノーツって言うんだけどね。今までは三つが限界だったんだけど、昨日から……っていうよりアリスと出会ってから妙に調子が良くてさ。確証は無いけど、今なら何でも出来そうな気がしてるんだ」
花音の言うとおり確証は無い。だが、自身に満ち満ちた花音の言葉にアリスは何故だか賭けても良いと思えた。それしか世界を救う術が無い故の諦めなのか、トップアイドルであるが故のカリスマなのか。アリスは力強く頷き花音やお松、龍二と共に戦うことを決心した。
「話はまとまったみてえだな。そんじゃ、善は急げだ! バグズの巣まで行って世界救おうじゃねえの!」
「アンタはまず運転の荒さをどうにかしてよね」
へいへい、と空返事をしながら龍二は立ち上がり花音と共に事務所を後にする。後に続くように立ち上がったアリスを、お松は小さな声で呼び止めた。
「花音はん、一度決めたらなにが何でもやり遂げるっちゅう意志の強さがある分、周りが見えんくなることもあるんや。アリスはん、花音はんのことよろしゅう頼むな」
子を思う母親のような面持ちでお松はそう言うと、デスク上から颯爽と飛び上がりアリスの肩の上に飛び乗った。
分かりましたと力強い返事と共にアリスは龍二と花音の後を追って事務所を後にした。




