表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/286

75話 ワイバーン討伐作戦 3


 カイトのいる救出部隊と討伐部隊が分かれてから数時間後。


「弓部隊怯むな!! 矢を射続けろ!!」

「魔術部隊続けぇ!!」


 そこではまさしく今、ワイバーンと討伐隊の戦闘が始まっていた。

 そのワイバーンは体に無数の魔術や矢を受けているが、怯む事なく部隊のど真ん中へ突っ込む。

 数人が一瞬にして喰われてしまった。


「槍部隊囲め!! かかれぇ!!」


 地へ降りたワイバーンへ、四方八方から槍が突き立てられた。


 しかし……。



 グオオオオオオオオオ!!



 腹部や足に大量の槍が刺さったワイバーンは咆哮し、再び空へ飛び立とうと翼を羽ばたかせ始めた。


「逃すか!」


 1人の男がワイバーンの背へと飛び乗り、頭へ刀を突き刺した。


 コウだ。

 

 彼は暴れるワイバーンの頭へ刀を深くねじ込み、振り落とされぬようそれを両手でがっしりと掴んだ。


「っ、ミフネ! 今だ!」


 彼の視線の先には、魔杖を構えたミフネの姿があった。


「分かってるわよ!」


 魔状を勢いよく空へ掲げると、彼女の周囲に無数の火の玉と風魔術による刃が出現する。それらが怪物の首部の一点へ、まるで機関銃の様に放たれた。


 だが、ワイバーンはなおも暴れ続ける。


「〜っ! いい加減くたばりなさいよこの化け物!!」


 凄まじい音が轟き続け、遂に怪物の首が地へ沈んだ。

 それと同時に歓声が鳴り響く。


 その首の横に横たわるコウの元へミフネが歩み寄った。


「……コウ、生きてる?」

「な、なんとかね……助かったよ、ありがとう」

「……そ。とにかく、魔術耐性の無いワイバーンで助かったわ」


 すると、そこへ1人の兵士が走って来た。


「団長殿! ご報告があります!」


 兵士は敬礼をし、こう告げた。


「ここから徒歩5分ほどの場所で、生存者数名を保護しました。ですが……」

「……なんだい?」

 

 兵士は口ごもり、まるでありえない事をこれから言おうとしているかのようだ。


「それが、ですね……」


 その重い口から告げられた内容に、コウとミフネの顔が一瞬にして険しいものへと変わった。


「なっ……それは本当か!?」

「それ本当なの!?」

「は、はい! 保護した全員の証言が一致しております!」


 同時に2人から問いただされた兵士は、小さく後退りしながらそう答えた。

 兵士の返答を聞かされ、切羽詰まった表情になる。


「……ねぇ、まずくない?」

「……かなりまずいね……連絡兵!」


 彼は連絡兵を呼ぶと、指示を出した。


「今すぐ各部隊に“撤退命令”を出してくれ。あと、王都へ早馬を出して国民の避難と、ライナ国王に周辺国への戦力応援を要請するように伝えて」


 連絡兵への指示が終わるとミフネが焦った様子でが彼に問いかけた。


「ちょっと、救出部隊に早馬は出さないの!?」


 すると、悩む様子を見せながら彼は答えた。


「馬を出したいのは山々だよ……でも、彼らが通る道は馬が通れるような道じゃ無いんだ。ほぼ垂直の岩肌も登るしね」

「じゃあどうするわけ!?」

「……俺が行く」


 コウの回答に、ミフネは一瞬言葉を失った。


「は、はぁ!? あんた死ぬ気なの!?」

「死ぬ気は無いよ。俺ならワイバーンに見つかっても生き残れるかもしれない……もし、“やつ”に見つかっても少しなら抵抗して見せる」


 彼は寂しげな表情でミフネへ歩み寄り、肩へ手を置いた。


「ミフネは王都に戻って、ライナと今後の事を話し合ってくれると嬉しいな。君の無事を祈ってるよ。それじゃ、急がないと行けないから行くね」


 彼はそう言い残し、救出部隊が向かった方角へ走り出した。


「……っ!」


 しかし、ミフネは踵を返しコウへと走り出した。


「ふっざけんじゃないわよ!」

「ミフネ!? なん……」

「あんたみたいなクソ兄貴の言う事を誰がきくのよ!」

「……!」

「別にあんたのためじゃ無いのよ! あたしだけ逃げるだなんて、胸くそが悪いからだからね!」


 すると、コウは少し嬉しそうな様子を見せた。


「そっか……ありがとう、ミフネ」

「……い、いいからさっさとあいつら見つけて、全員で生きて帰るわよ!」

「うん……そうだね!」


 ミフネが少し照れ臭そうに、コウが少し嬉しそうな表情を浮かべた瞬間だった。


 凄まじい爆発音が響き渡った。前方、はるか遠くの空に、とてつもない大きさの光線が一直線に飛んで行く。

 そしてそれが見えた瞬間、とてつもない爆風が2人を襲った。


「うわっ!?」

「きゃっ!?」


 なんとかその場で堪えたが、その爆風に煽られ落石が生じた。

 あまりに突然の事に、ぽかんとその場で立ちすくしていた。


「な、なに……? 今の……あれ……」

「分から……ない」


 光線の発射元は岩に隠れていた故に、何が原因で発生したのか分からなかった。


「と、とにかく……急ごう」

「そ、そうね」


 2人は先程の光線に気を取られたまま、再び走り出した。


 コウとミフネは一体何を見たのでしょうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ