51話 早速つまずく 2
昨日(2019/12/12)に投稿することが出来なかったので、本日2話投稿します。
そんなことがあり、俺はIランク冒険者となったのだ。
早速以来掲示板の元へ向かった。
様々な依頼があり、紙の右上にランクが書いてあった。受けられる最高の依頼は現ランクの1つ上までらしい。
つまり俺はHランクの依頼まで受けられるという事だ。
とりあえず初めてなので、Iランクの薬草摘みの依頼を受けることにした。
この時、隣にあった盗賊討伐の依頼が目に入ったが、Bランクだったので諦めた。
ランクを下げなければ、これを受けていたかもしれない。
薬草摘みの依頼を受けるため受付へ向かう。
しかし、ここで衝撃の事実を知らされた。
「I〜Gランクの冒険者の方は、3人以上のパーティを組む事が義務付けられています」
そういう事で、俺は長椅子に座って頭を抱えている訳だ。
「パーティなんて聞いてないよぉ……」
その義務の理由は簡単。新人冒険者の死亡率を下げるためだ。
ど、どうしよう……パーティなんて組むつもりなかったから、どうしたらいいのか分からない……。
辺りを見渡すと、確かに3人以上のパーティが目立つ。
でも、みんな大人ばかりだ。俺に年の近い人なんて全然いない。仮に俺が入れてくれと言っても聞いてくれないだろう。
……帰る? でも、お母さんとお父さんに呆れられてしまうかもしれない……。
「う……うぅ」
急に心細くなってきた上、自分の情けなさに涙が浮かぶ。
そんな時だった。
「ねぇ。君まだパーティ組んで無いのか?」
突然声かけられ、顔を上げると目の前には青年が立っていた。
先程見た若いパーティの1人だ。
「あ、いや怪しい者じゃ無いよ? さっき、たまたま君を見かけてね。それで、まだパーティを組んで無いなら俺達と組まない?」
「……! ……!」
救われた気分になり、涙目のまま何度も頷いた。
その青年について行くと、先程見た2人の男女が立っていた。
「あ、やっと来たわね」
「ちゃんと勧誘出来たみたいだな」
「ああ、お待たせ」
すると、話しかけてきた青年が振り返り、自己紹介を始めた。
とても雰囲気のいい青年で、とても爽やかだ。
「俺はジーフ。このパーティのリーダーをしている剣士だ。よろしくな」
次に女性。ショートヘアで魔杖を持っている。優しそうな人相だ。
「私はミゼリアよ。あまり強くはないけれど、風魔術を使えるわ。女の子同士よろしくね」
最後にもう1人の青年。腰には剣の他に弓と矢筒が付けられている。
「俺はラング。俺も剣士だけど、一応弓も使える。よろしく」
「よ、よろしくお願いします」
すると変な沈黙が流れた。
な、なんだ? ……俺の紹介待ちか!
「あっ……あっ……えっと……ミウです。ぼ……私も魔術を使えます。声をかけてくれてありがとうございます」
そう言い深々と頭を下げた。
「そんな改まらなくて良いよ。こちらとしてもパーティが増えて有り難いしね」
聞くと、1度依頼を受けて出発したが、入り口ですれ違った俺が気になり引き返したそうだ。
そしたら、俺が長椅子で頭を抱えていたから声をかけたと。
なぜ気になったかと言うと、俺みたいな子供が依頼の紙ではなく、魔杖を手に1人でハンター協会へ入ったからだそうだ。
まぁ……確かに見た目で判断するなら、明らかに低ランクだもんね……俺。
とにかく、俺を気にかけて引き返してくれた事からこの人達が良い人なのが見て取れる。
「……と言っても、俺たちも先週の試験で受かったばかりのIランク冒険者なんだけどね」
「ぼ……私も数日前の試験で受かったばかりの……Iランク冒険者です。同じです」
その後は何気ない会話をした。俺の緊張をほぐすためだろう。本当に良い人達だ。
「それじゃあそろそろ出発しようか」
「そういえば、なんの依頼を受けていたんですか?」
「今日は討伐依頼を受けようって決まってたから、森の大ネズミ討伐依頼を受けたんだ。Hランクだけど、大ネズミは弱いから問題は無いよ」
そうして俺たちは森へ移動を始める。その道中でこんな話をされた。
「そういえばさ、ミウちゃんの髪を見てると、精霊様のお話を思い出すよね」
「……精霊様? なんですかそれ?」
聞いたことないな。昔話か何かな?
するとミゼリアさんが説明してくれた。
「精霊様はね、特別な魔力で体が作られていて、気に入った人間に力を貸してくれる存在なの。力を貸してもらった人は“精霊魔術”っていう特別な魔術を使えるんだよ」
「そうなんですか……でも、なんで私の髪を見て?」
「精霊様は美男美女ばかりで、綺麗な髪の色なんだって。赤とか緑とか、普通じゃない髪が特徴」
なるほど……そんなのがいるのか……。
するとミゼリアさんが俺の顔を覗き込んできた。
「ところで、ミウちゃんの髪って、どうしてそんな綺麗な白色なの?」
「……え」
あ、やばい。理由考えてなかった。『なんとなく白にしたんです』なんて言えないし、どうしよう……。
「う、生まれつきなんです」
「ふーん……そっか。変な事聞いてごめんね」
……なんで俺こんな髪色にしたんだろ。
誰にも聞こえないように小さくため息をついた。
数時間後、目的の森につき大ネズミを発見した。
確かにでかい。70センチくらいあるか? 俺が住んでた森にはいなかったな。
前衛はジーフさんとラングさん、俺とミゼリアさんは魔術で後方支援だ。
「そっちに1匹行った!!」
こちらに大ネズミが1匹走ってくる。もし噛まれればそれなりに怪我をするサイズだ。
「任せて!…ふぅ…“風魔術 風刃”!」
彼女がそう叫ぶと、魔杖から風の刃が飛び出し、大ネズミの足をとらえ、大ネズミはその場で動かなくなってしまった。
なるほど、あれが“詠唱”だな?
『普通の魔術師』を名乗るなら“ちゃんと”詠唱”をしないとね。
するとまた、大ネズミがこちらに走って来た。
「ミウちゃん! お願い!」
俺の出番か。よし……威力を抑えて……抑えて……。
「ほ、“炎魔術 火球“!」
魔杖のあたりから火球が出るように調節して放つ。火球は大ネズミを捕らえた。……が、威力が強すぎたのか、消し炭になってしまった。
しまった……動物に対して魔術を使ったことがあまりないから見誤った。……これじゃあ、討伐証明部位取れないじゃん。
その他の大ネズミは、ほとんど逃げてしまい、狩れたのは4匹だった。
「す、すいません……ネズミ……消し炭に……」
「気にしないでくれ、ミウちゃんは初めてなんだから仕方ないよ」
すると、彼は目を輝かせて俺の手を取った。
「それより、君の炎魔術はすごい威力だね! 驚いたよ!」
「……え?」
あれで“すごい威力”の評価を受けるの?
「ね! 本当に凄いわ。あんな威力の炎魔術初めて見た!」
「ミウちゃん、もしかして宮廷魔術師様から習ってたりする?」
そこまで!?
この世界の魔術って、そんなにレベルが低いのか……?
この時は、とりあえず親が魔術師だったと言ってやり過ごした。
その日の夕方。
木が開けている場所を見つけ、今夜はそこで野宿をする事になった。
「討伐依頼達成にはあと6匹狩らないといけないけど、もう暗くなり始めたから野宿の準備をしよう」
ジーフさんがそう指示して、野宿の準備を始める。
しかし、3人がテキパキと動きすぎて、俺の出る幕がない。
何かする事がないかと、オロオロしているとジーフさんに指示をされる。
「ミウちゃん。君は焚き木を集めてきてくれ」
「わ、分かりました」
初めて外の世界へ飛び出したカイトを助けた3人。一体どんな人物なのでしょうか。




