19 現れたのは兵士たち
すみません、仕事の都合とはいえ長らく開けてしまいました。
ようやく先日帰ってきたので、これで投稿が続けられそうです。
これからも拙作をよろしくお願いします。
よかったら感想や評価、ブクマ等頂けると嬉しいです!
種族:ミニゴーレム
名前:ルティア
年齢:0
性別:
称号:【異世界の住人……もの?】【百獣の王】【殺人者】【砕けない心】【森の破壊者】
Lv:20
HP:109/109
MP:73/73
体力:45
攻撃:37
防御:55
魔力:42
速度:16
幸運:5
スキル:【堅牢 8】【異世界語 1】【念力 7】【流星 5】【念話 1】【浮遊 2】
しばらくレベル上げに勤しんだ結果、このような形になった。
浮遊も頑張ってみたんだけど、結局浮く時間が伸びる程度しか恩恵がなかったのが痛い。浮いてから念力で移動することもできるんだ
けど、MPの消費が半端じゃないことになるので、あまり使えなかったりもする。
なんだろうな、この間違った進路を地で行くような感じ……。
ちょっと俺も不安なったくるぞ。
……いやでも、間違ってるとか間違ってないとかそういうの、わからないし。
比較する対象もないしで、俺のステータスが高いのか低いのかもわからない。たぶん低いんだろう。愛玩用とまで言われてしまうミニ
ゴーレムなのだ、俺は。
そんな俺のステータスが、例えばRPGに定番のゴブリンとかと比べて高かったら困る。
というか、この世界の人の戦闘力を疑う。
(しっかし、ここまで上げても進化しないのか……)
よくある異世界転生ものだと、都合よく鑑定スキルなんかが手に入りそうなものだが、生憎と俺にはそのようなものはない。手探りで
進めるしかないのだ。
(くっそう……相方は相変わらず鬼畜だし、少しは道標みたいなものが欲しいぜ……)
『オウヨ サスガ ウツワ』
褒め称えるようにして、自分の足元に転がる石ころに頭を下げるストームライガー。きっと傍から見れば滑稽な光景なのだろう。
しかしこの野郎、鬼畜にも程がある。
俺のように自在に動けないものに対して、魔物をけし掛けるなんてどうかしている。
そういう思いとか諸々を乗せて、じとっとストームライガーを睨み付けた瞬間だ。
スン、と鼻を鳴らして、ストームライガーは首を巡らせる。
まるでなにかに対して警戒するように、周囲をぐるりと見渡す。そしてその一点で視線が止まる。木々と木の葉の向こうを探るように
鼻をひくひくと動かす。なにかの臭いを探るように。
(どした? ご飯でも見つかったの?)
わかってはいるんだけど、緊張感と言ったものに耐えられない俺は、そう聞いてみた。
しかしストームライガーからは和んだ気配は一切ない。
代わりに起こるのは、警戒と恐れるような雰囲気。
即座にストームライガーは俺を咥えると、地面を蹴った。
(おいおい!? どうしたんだよ!?)
『オウヨ ヒトダ』
(ヒト……人!?)
なんたってこんな所に?
アンナちゃんやエミリアさんくらいしか生きている人間い接していない俺にとって、この世界の人間がどういったものか正しい認識は
ない。けれど会話の内容で、この森は危険な場所として扱われていることくらいはわかる。
(どれくらいいる……?)
『アシオト イッパイ……ジュウ? イッパイ』
どうやらストームライガーは十以上数えられないようだ。いやまあ、野生動物が数なんて数えられたらすぐさまモルモット行きだろう
けど。
しかし……十人以上もの人間がこんな場所に何の用だろうか。
(頼む、奴らの近くに隠れてくれないか?)
『オウノメイナラバ』
やはりストームライガーは嫌がる素振りも見せやしない。
まるで淡々と自分の役割をこなしているみたいだ。
近くの茂みに隠れると、大勢の足音とがやがやという話し声が聞こえてくる。
「……なあ、本当に生きてるのか?」
「生きてるんだろうよ、王が言っているのだから」
「知ってるか? デュオの野郎、死を感知する蟲を飲まされたんだとさ」
「なるほどな、デュオを殺して生き延びたと考える訳だ、我らが王様は」
「だからってなぁ、いい迷惑だよ。放っといたって長くは持たんだろうよ、この森じゃな」
「まぁまぁ、結局ここには来ることになったんだ。予定が早まったと思えばいいさ」
「んん、そうか。確かにな。確かに、これでようやく忌々しい奴隷村も潰せるってもんだ」
「ああ、王の汚点だからな。潰さねばなるまい」
「あのお姫様も災難だな。王の汚点。確かにそうだ。消さねばならない」
「そうだな……アンナ姫も粛清しなければならない」
「消してしまおう」
「王の為に」
「ああ、王の為に」
話しをしながら歩いてくるのは、鎧を着た兵士の部隊だ。少人数……なのだろうか。俺の見た限りでは十五人程度の人数。それぞれが
槍を持ち、腰に剣を佩いて武装している。
量産された鎧に身を包まれながらも、彼らの脚は淀みない。
予定調和の如く、一歩一歩確実に進んでいる。
しかし会話に違和感しか感じない。
まるで狂ったように会話を続けながら、一点を目指しているように思う。
(な、なんなんだよこいつら……なにしに来てんだよ……)
その背後を見送りながら、俺は思わず呟いていた。
『コロスカ?』
(まてまて! お前はなんでそうも物騒な方にいくんだよ!)
しかし待て、アンナ姫だと……?
姫だって?
あの寝間着娘が?
……いやでもメイド連れてたし、そういうこともあるか……?
(って! そうじゃない! 消すってどういうことだよ!?)
もしもそれが文字通りなら。
(くっそ! ストームライガー! 追うぞ! アンナちゃんが危険かもしれない!)
ちらりと目配せして言うと、ストームライガーはこくりと頷いた。
『オウヨ ケッカイ ヌケラレナイ』
もしも手があったら、頭を抱えてのたうち回っていたに違いない。
(ああああああああああんもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!)
ついていくって決めたのに!
名前だってくれたのに!
俺にだってなにかできるかもしれないのに!
どうにかして行くから、無事でいてくれよ!
(それは後で探す! 見つからないように行ってくれ!)
『ワカッタ コロスカモシレナイ』
殺す……元人間としては思わない所がないではないけれど。
それでも。
(わかったよ……ついてくって言ったからな……)
男に二言はない。最悪、逃げるように促すだけでも構わない。それでどれだけ持つのかはわからない。
兵士たちの言葉の意味もわからない。
だがそれでも。
決めたことを覆したくない。
そうして俺は走り出す。
ストームライガーの口に咥えられて。
(締まらねぇな……俺)




