17 レベルアップと森の民
【フォレストウルフを倒したことにより、3260の経験値を取得しました。
ミニゴーレムのLvがあがりました。
ミニゴーレムのLvがあがりました。
ミニゴーレムのLvがあがりました。
…………
ミニゴーレムのLvがあがりました。
スキル【念力 5】が【念力 6】になりました。
スキル【堅牢 6】が【堅牢 7】になりました。
スキル【流星 2】が【流星 3】になりました。
スキル【浮遊 1】を獲得しました。
称号【森の破壊者】を獲得しました】
謎の声による報告が終わった。
俺はその言葉を、へとへとの身体のまま聞いていた。
ようやく、実感が湧いてきた。
(よ、よっしゃああああああああああああああああああああああッ! 勝った! 勝ったぞおい! 俺一人だけで! すげぇぞ俺!!)
一人ではしゃいでいると、少し恥ずかしくなる。
何故って?
どっか生暖かい目をした獅子がいるからだよ。
(こほん)
一つ咳払い。
脳内で行う。
喉がないからね。
ま、能力を確認してみよう。
種族:ミニゴーレム
名前:ルティア
年齢:0
性別:
称号:【異世界の住人……もの?】【百獣の王】【殺人者】【砕けない心】【森の破壊者】
Lv:9
HP:77/77
MP:43/43
体力:28
攻撃:23
防御:40
魔力:32
速度:11
幸運:4
スキル:【堅牢 7】【異世界語 1】【念力 6】【流星 3】【念話 1】【浮遊 1】
ふむ、前回のステータスと比べると、だいぶ強くなったように思える。
この世界での基準がどの程度なのかわからないけど、それでもだいぶ強いんじゃないか? RPGなら序盤を脱したくらいの強さって感じかなぁ?
あいにくと俺は雑魚の魔物なので、人間と戦ったりしたら負けるだろうし。
それにしても、たったこれだけしかレベルがあがらないのか。【ミニゴーレム】になって【丸い石】よりもレベルアップに必要な経験値が増えているようだ。
そりゃ当然か。
しかし、あれだけの死闘を演じるよりも、偶然倒した敵の方が経験値が多いってのもなんかもにょる……。
そしてもう一つ。
注目するのは新たなスキルだ。
その名も【浮遊】らしい。
どうにか受けないかと頑張ったら、スキルとして昇華されたようだ。
さっそく使ってみる。
(あ、すげぇ)
思わず声が漏れる。
ふわりと、俺は宙に浮いていた。
ぷかぷかと宙に浮いている。
浮いているが……。
(あ、これ浮いてるだけだ)
その場に浮遊したまま、前にも後ろにも行けやしない。
その場に浮けるだけのスキル。
(つ、つっかえねぇ……)
いやまあ、さっきみたいに【流星】と組み合わせればなんとかなるかもしれない。
希望的観測かもしれないけど。
……ふむ、まぁ、なんだ。
よかったね、ってことで……。
とりあえずは。
(見てたかストームライガー!? 俺勝ったぞ!? 一人で勝てたぞ!!)
『ミテタゾ オウヨ ナラバ ツギダ』
…………ツギ?
次っていったのか、こいつ?
(次……?)
『ツヨクナル タタカウ テキ オオイ ツヨクナル』
(待て待て待て待て!? おい、待てって!? 見てたろ今の!? 俺ギリギリだったじゃん!? なんでさらに増やすの!?)
『ツヨクナリタイ イッタ オレ テツダウ』
とんだスパルタ野郎だなお前!?
突っ込みながらも、のそりと動き出したストームライガーを見つめることしかできない。その背中から、新たな狼――フォレストウルフの身体が現れるのを見てしまった。
……俺、もつかな……?
「はじめまして、シルルよ。短い間かもしれないけどよろしく……ごめんね、変なの見せて」
「アンナっていうの。こちらこそ、よろしくね」
「エミリアです。その、大変仲がよろしいのですね」
エミリアがいうと、シルルは顔を赤く染める。
小さい子に見えるけど、どこか同年代と話しているみたいに感じる。
男の子と仲がいいなんて、ちょっとうらやましいな。
パーティとかでしか会えないし、そこで会う子も、どうせ結婚することしか考えてないんだから。
だから、素直に、男の子と友達だというのに、憧れる。
これでも女の子なのだから。
「そんなんじゃないわよ! ただ見ててイライラするの! ふらふらふらふらしてて、もうむかつくわ!」
「そうなの?」
「そうよ! いっつも心配ばっかかけさせるんだから!」
ふ、と息を整えて、シルルは思い出したように口を開く。
「そういえば、あんたたち、ここ、初めて?」
「ええ、そうですよ」
「うん……たまたま見つかっちゃったみたい」
「そっか、でもま、大丈夫かな。ミィルのやつ、ああ見えて人を見る目だけはあるのよね……」
うんうん、と腕を組んで頷いて、シルルは小さな手で村を指し示す。
「見ての通り、なんもない村よ。ただちょっと住んでいる人が特殊でね……あのさ、この森がなんて呼ばれてるか知ってる?」
「知らないけど……?」
「『墓場の森』『流刑地』『人捨ての森』なんて名前ばっかよ」
けっ、と憤慨するような感情を込めて、シルルはいった。
……なんというか、黒い。
ブラックな感想しか浮かばない。
まともな森じゃなかっただな……。
「どうしてそんな風に呼ばれてるの?」
「簡単よ、ここ、魔物強いじゃない? 捨てていけば、あとは勝手に後始末してくれるのよ?」
食べられるのだろうか?
「私たちここに暮らしているのはね、捨てられたり、罪人だったりするのよ。だからって私たちに負い目はないし、日々をただ生きてくだけなのよ」
ちなみに私はドワーフで奴隷だったわ。
と、自分を指して笑った。
ドワーフといえば、鍛冶の得意な種族で、特徴として背が低いことがあげられる。
成長したとしても、子供程度の背丈にしかなれないらしい。
「見てよこれ。手の甲に奴隷紋残っちゃってるし」
小さな手の甲を見せてくれる。そこにあるのはどこかの紋章だ。おそらくその時の主人の。
奴隷というのがいることは知っていた。
けど、お父様は見せてくれたりはしなかった。
汚らわしいから、とか、そんな理由だったはずだ。
けど少なくとも彼女は、そんな自分の状況に絶望していなかった。
真っ直ぐで、生きている。
羨ましいな、と思う。
そういう風に生きていけたらって思ってしまう。
「こんな話されてもめんどくさいよね?」
たはは、とシルルは笑う。
そんなこと!
「そんなことない! そんなことない……から!」
私は、思わずそんなことを叫んでいた。
なんでかわからないけど、そうしたかったのだと思う。
知らなかったから、そんなこと。
知りたいって思ったから。
「……そっか……うん、ならさ、この村のこと、ちょっとだけ話したげる。案内も頼まれてるし、歩きながら話そっか?」
複雑な表情で、シルルはいって、笑った。




