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イケメン上司とボク  作者: 夏目 碧央


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美術館デート

 デートと言っても、美術館巡りは俺の日課のようなもので、言ってみれば仕事の延長だ。それに成海をつき合わせてしまうのだ。少し罪悪感がある。

 俺たちは、ミュージアムショップで売られるグッズを発案する仕事をしているので、新しいアート展が始まると通える範囲で足を運び、グッズを視察するのだった。美術館巡りは元々好きだし、休日にはよくやっている事だった。

「成海!」

待ち合わせた上野駅前で、成海を見つけた。相変わらず、スーツ姿とはがらりと印象の変わるやつだ。ガタイの大きさが際立つというのだろうか。半袖のTシャツの下にタンクトップを重ね着して、わざとずらしてタンクトップが見えるようにしているようだ。それは色のコントラストからの推測だが。Tシャツがカーキ色で、タンクトップが白。Tシャツには白い英文字が流れるような筆致で書いてあり、タンクトップもその白い文字に合わせて選んだに違いない。

 いつもは上が白、下がジーンズという服ばかり着る俺だが、今日は白い半そでパーカーの下に水色のTシャツを着て、下はくすんだ黒のデニムだった。ちょっとしゃれてみたつもりだが、俺に似合っているのかどうかは分からん。

「仁さん、今日は一段とオシャレですね。」

成海がそう言って微笑んだ。思わず赤面。

「あ、今日は俺につき合わせて悪いな。」

照れ隠しもあって、そんな風に言って歩き出した。

「とんでもない。俺もこのアート展には行きたかったので。」

成海も一緒に歩き出しながら言った。たとえ仕事の延長でも、成海と一緒に歩けたら楽しい。


 アート展を観終えてミュージアムショップに入ると、俺たちは真剣に品定めを始めた。

「これはステッカーですね!ステッカーってお手頃価格で買いやすいし、スマホケースの中に入れられるし、すごくいいと思うんですけど、意外と売ってるミュージアムショップが少ないんですよね。」

成海が展示されていた絵のステッカー、つまりシールを手に取って言った。

「そうだな、確かにそれほど多くない。絵葉書や付箋は必ずあるのに。」

俺はそう答えながら、物色して歩く。

「お、ネックレスがある。こういうの、俺はいいと思うんだよなー。」

俺が手に取ったのはアート展の作品にちなんだ形のネックレスだった。高価な物ではないが、他にはないオリジナリティーがある。

「ネックレスか。同じようにブレスレットや指輪もあるといいですよね。男性が自分の為に買いやすいようなデザインもあれば、俺買いますよ。」

成海が言った。

「クリアファイルは確かにお手頃価格だけど、もっと大きさが色々あったらいいかもなー。」

成海はそう言って離れて行った。

「成海は低価格商品に興味があるんだね?」

俺がそう言いながら近づくと、

「まあ、俺が貧乏なので。」

と言って笑った。必ずしも裕福な人ばかりがアートを観に来るわけではない。それに、実際低価格帯のグッズの方がたくさん売れるのは間違いない。

「うん、低価格帯のグッズをガンガン考えようぜ。」

俺が言うと、成海は振り返ってニッコリ笑った。


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