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21XX、ダンジョンと冒険者  作者: らる鳥


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 遂にと言うべきか、漸くと言うべきか、ギルドから四神討伐の依頼が来た。

 尤もその四神討伐に参加するA級冒険者達は、皆が事前に情報を入手し、既に準備を整えている。

 仮にもA級になる様な冒険者なら、例え当人が情報に疎くても、周囲には聡い人間が居るのだろう。

 特に俺は随分と以前から準備の為に動いていたから、自然と他のA級冒険者達からの接触があり、幾度かの協議の末に俺が提案した作戦も合意を得た。

 後は依頼が届くのを待つばかりと言う状態だった為、ギルドからのGoサインが出た今、A級冒険者達は一斉に動き出す。


 では改めて、今回の討伐対象である四神がどんな存在かを再確認しよう。

 四神とは四体の超大型ボスであり、A級浸食領域の主にして、ダンジョンの守護者だ。

 このダンジョンの守護者と言うのは比喩表現ではなく、京都タワーと呼ばれた場所にあるダンジョンは、全ての四神が倒されないと開かない。

 また四神は互いに補完し合う関係らしく、全ての四神を倒し切らねば、次の日には復活を遂げる。

 全ての四神が倒された場合、ダンジョンを塞ぐ扉は開き、四神の復活には数週間を要するらしい。

 以前にも、と言っても数十年も前の話だが、全ての四神が倒された時には、討伐を成したA級冒険者達に壊滅的な被害が出た為、危険の予想されるダンジョン探索は行われなかったそうだ。


 今回浸食領域に起きている活性化は、恐らく四神を二体、或いは三体倒せば収まる可能性が高いと言う。

 けれどもより確実に活性化を収めるには、全ての四神が討伐される事が当然ながら望ましい。

 そしてどうせなら、全ての四神を討伐してしまいたいと、参加するA級冒険者の全員が考えている。


 危険がないとは言わないが、前回四神が倒された時の戦闘記録が存在して、事前に対策を練れた事は非常に大きい。

 冒険者と言う存在が生まれたばかりの頃は、アーマードワイヴァーンやキャノンタートルだって難攻不落のモンスターだと考えられてた。

 それを幾多の交戦によって得た情報の積み重ねで、難敵ではあっても倒せる相手にまで引き摺り落としたのだから、ボスである四神が相手だって同じ事は可能な筈だ。



 さて四体の四神はそれぞれが特徴的なボスだ。

 東部を縄張りとする青龍は、自分の周囲のみと言う局所範囲だが、天候を自在に操る。

 主な攻撃手段は落雷や竜巻で、その破壊力は四神の中でも最も高い。

 また厄介な事に泳ぐ様に空を飛ぶ。

 飛行する敵に対しては、近接戦闘を主軸とする冒険者が攻撃に参加出来なくなる為、討伐難易度が極端に上昇する。


 次に南部を縄張りとする朱雀だが、こちらも空を飛ぶ。

 しかもその空戦能力は青龍よりも遥かに高く、青龍を空飛ぶ戦艦と称すれば、朱雀は巨大戦闘機だ。

 攻撃手段は火炎の息を放射する事と、炎を身に纏っての体当たり。

 更にある程度だが再生能力も持つと言う。

 救いなのは、サラマンダーの様に常時炎を身に纏う訳ではなく、身体から炎を発する際には予兆がある為、手が届きさえすれば武器での近接戦闘が可能な事か。


 西部を縄張りにする四神は白虎。

 最速にして最も活動的な四神だ。

 どの位の速度かと言えば、本気で動かれれば目が付いて行かない位には、速かった。

 幸い他の四神と同じ様に白虎も巨体なので、遠間からなら見失いはしないけれど、逆に言えば近ければあの巨体の動きに付いて行けずに翻弄されると言う、常軌を逸した速度で動かれる。

 大きくて速いってだけで、当然ながら非常に強い。

 しかも白虎は爪も牙も鋭く、毛皮の防御力も高いのだ。

 青龍や朱雀の様に空は飛ばないけれども、だからと言って戦い易い相手では決してなかった。


 最後に北部を縄張りにするのは玄武である。

 玄武の動きは四神の中で最も遅く、そもそもの活動も鈍い。

 だがその鈍さは玄武が紛う事なき強者であるが故の物。

 四神の中でも最も大きく、そして最硬の甲羅に身を包む玄武にとって、大抵の出来事は些事に過ぎない。

 だから玄武は動かぬだけで、仮に動き出せば厄介極まりない相手だ。

 巨大で硬い玄武は動く城と呼ぶべき存在で、更に冷気を操り周辺を凍り付かせてしまう。

 冷気を浴びたからと言って即座に死に至る訳ではないけれど、最大最硬の玄武を相手に少しでも攻めあぐねれば、冷気に体力を奪われた挙句、動けなくなって死に至る。



 ……と、まぁ四神は全てこの様に無茶な相手なので、大切なのは討伐メンバーの割り振りだ。

 ギルドが当初予定していた様な、A級冒険者パーティを一つずつ四神にぶつけるなんて論外だった。

 俺の提案した割り振りでは、元々のパーティとは関係なく四神との相性を重視して、二チームを組む。

 現在のA級冒険者の数は、俺と紅・真緒を加えて十五名。

 つまり七人と八人のチームに別れる。

 一チームが、一体ずつ二体の四神を、一日以内に撃破すると言う形を取るのだ。


 割り振りとしては、白虎と玄武を赤塚・祥吾の率いる八人チームが、朱雀と青龍を、俺と真緒も参加する七人チームが担当して討伐する。

 白虎に対しては、近接戦闘を得手とするメンバーが引き付けてる所を、遠間から祥吾が視れば、大きなダメージを与えられるだろう。

 初手で足を一つでも殺せば、その後の展開はずっと楽になる筈。

 最速の白虎は最速だからこそ怖いのであって、その速度を殺してしまえば、A級冒険者が倒せぬ相手じゃない。

 次に玄武だが、こちらは搦め手の通じる相手ではないから、正面切って殺して貰おう。

 その為の祥吾だ。

 相手が最も防御力に長ける四神であるなら、こちらも最も火力に長けた冒険者をぶつけるより他にない。

 干からびる心算で戦って、勝利をもぎ取って来てくれると信じてる。


 一方、朱雀と青龍を担当する俺達だが、空を飛ぶからこそ厄介なこの二体を、地上に引き摺り落とすのは、勿論俺の役割だった。





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