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21XX、ダンジョンと冒険者  作者: らる鳥


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 朱雀の吐く炎を避け、『韋駄天』斗臣・竜馬(とおみ・りょうま)が旧京都の町を駆け抜ける。

 昔は古都と呼ばれた街並みの名残が炎に包まれ、また少し失われた。

 韋駄天と呼ばれる竜馬は、最速のA級冒険者と呼ばれる者の一人だ。

 最速なのに呼ばれる者の一人だって表現はおかしいと思うけれども、実際にそう呼ばれてるから仕方ない。

 因みに俺もその中の一人に含まれるらしい。


 まぁさて置き、竜馬の速度は短い距離においては並ぶ者がなく、まさしく最速だ。

 彼は別に固有のスキルを所持して居る訳ではないけれど、身体強化・壱、身体強化・弐、韋駄天・壱、韋駄天・弐のスキルを徹底的に鍛え、その速度を実現している。

 身体強化の二種は兎も角、韋駄天を二種類とも持つ冒険者は珍しく、スキルを全開に発動させた竜馬には、朱雀の飛行速度も及ばない。

 俺の予想だけれど、多分竜馬は集中力のスキルも所持しているのだろう。

 けれどもその速度故に、竜馬の稼働時間は決して長くない。

 スキルを多用して得られた速度の代わりに、凄まじい勢いで体力を消耗して行くから。

 だからこそ、俺達は彼の稼いでくれる時間を一瞬たりとも無駄には出来ない。


「と言う訳で、やるぞ」

 離れた場所で竜馬が指定ポイントに朱雀を誘導するのを見ながら、俺は言う。

 その言葉に紅・真緒は頷き、けれどももう一人の同行者、大神・香苗は涙目で俺を睨み付けた。

「わ、私は、まだE級なのよ。こんな所に連れて来て、う、恨んでやるんだから!」

 彼女の言葉に、俺は頷く。

 反論の余地は全くないし、我ながら酷い事をしてるとは思ってる。

 遠く離れていたとしても、四神の放つ威圧感は、E級モンスターしか知らない香苗には辛いだろう。

 寧ろそうやって憎まれ口が叩ける事が、彼女の心の強さを示してた。


 しかし残念ながら、香苗を連れ出す件に関しては、ギルドの許可も下りている。

 そしてここから一人で帰れる筈もない以上、彼女は俺に協力するより他にないのだ。

 ……こうして我が身の行いを振り返ると、割と酷い事をしてるとは思う。

「大丈夫だよー。三野は酷い奴だけど、アタシが守ってあげるから。カナちゃんは少しだけ手伝ってね」

 そう言う真緒に背を撫でられ、香苗はこっくりと頷く。

 言い方を変えただけで実際には同じ事をさせられるのに、彼女の将来が心配になる程にちょろい。

 まぁ四神の威圧感やA級浸食領域の雰囲気にあてられて狼狽えてるだけで、元々協力してくれる心算だったのだろう。


 さて、ならば心の準備はOKだ。

 俺はそれ専用に用意したストレージから、巨大な杭を引っ張り出す。

 これが半年以上もかけ、羅刹と夜叉を乱獲して準備した成果、ミスリル製の巨大杭だった。

 と言っても、ミスリル製なのは杭の先端、四神の防御を貫通する必要がある尖った一部分のみで、他は別の金属で出来ている。

 重さが如何程あるのかは、最早考えたくもない。


 このサイズの杭が翼に撃ち込まれたなら、流石の朱雀も自由に空を飛べなくなるだろう。

 因みに今回は五本の杭を用意した。

 但し幾ら俺の引力スキルでも、これ程に重い杭は、早い速度で飛ばせない。

 だからこそ貫通させる速度を得る為に、風魔法を使える真緒や、斥力で物体を押せる香苗の協力が必要なのだ。


 香苗の斥力スキルは、操作精度はさて置き、出力の成長は著しい。

 そもそも発現の時点で比べると、俺の引力スキルに比べて斥力スキルの方が出力が高い傾向にあった。

 恐らくだが、それは香苗の性格や素質と言うよりも、斥力スキル自体が出力は高く、その反面制御が難しいスキルなんだと思う。

 出力が高くて制御が難しいスキルはどうしても危なっかしいが、今回ばかりはその特性も都合が良い。


 顔を真っ赤にして大地と巨大杭を反発させて動かす香苗を、真緒が風魔法でサポートしてる。

 更にその行く先は引っ張る力、俺の引力スキルが空飛ぶ朱雀へと固定してやれば、巨大杭は矢の様に空を飛ぶ。



 高速で飛来した巨大杭に翼を貫かれ、朱雀の身体が地に落ちた。

 落ちた先は大きな道路同士が交わる中央、要するに大きな十字路だ。

 当然ながら竜馬は狙ってその上空に誘導し、俺も狙ってそこに落とした。

 朱雀の身体が地に触れると、真っ白な爆発が幾つも起きる。

 この場には居ないB級冒険者、渡瀬・六太から購入した、触れると凍る液体を広範囲に噴き出すトラップだ。

 

 地に落ちた朱雀の身体は半ばが凍り付き、見るも凄惨な状態となっている。

 勿論、四神の一つである朱雀が、この程度のダメージで息絶える事はない。

 炎を発して氷を溶かし、杭を抜いて翼を再生すれば、再び空に舞い上がるだろう。

 けれども当たり前の話だが、冒険者達がこの好機を黙って見逃す筈はなかった。


 側面のビルを足場に大きく跳んだ冒険者の一人が、振り被った斧を朱雀の頭に叩き付ける。

 強い衝撃と痛みに驚き、斧が突き刺さった頭を振って抵抗する朱雀は、炎の発生を中断した。

 その一人だけじゃない。

 次から次へとA級冒険者の放つ強力な攻撃が、朱雀の身体を捉えて強靭な生命力を削って行く。

 空を舞わぬ朱雀には、もはやA級浸食領域における死の象徴たる力はなく、冒険者に狩られるだけの獲物となり下がった。


 それから然程時を置かずして、朱雀を取り囲んで居た冒険者達から歓声が上がる。

 さぁ彼等の傷を癒して休憩した後は、次は青龍を仕留めなければならない。

 恐らくは、朱雀よりもずっと厄介な戦いになる筈だ。

 だからこそ、先に朱雀から片付けた。

 果たして幾本の杭を重りとして突き刺せば、地に落ちてくれるのか。


 だけどそれでも俺達は勝利を掴むだろう。

 人類は困難を、障害を認識すれば、それを調べて対策を講じ、やがてはそれを克服して来た。

 そうやって文明を大きくして来たのだ。

 例えモンスターやダンジョンが相手でも、一度は滅びかけたとしても、それは何一つ変わらない。

 今日この日より、四神はA級浸食領域に君臨する長から、準備を怠らねば倒せる難敵に成り下がる。



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