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プロローグ

作者の気が向くまま、書いてみました。よろしくお願いします。

 「とうとう見つけたぞ!魔王っ!」


 「私達が来たからには闇の勢力はここで終わりだよ!」


 迫り来るモンスターを退けあるお城の最深部に到達した総勢32名の光の勇者もとい冒険者達が、目前にある玉座に貫禄を見せ付けんとばかりに座るローブ姿の人影に声をかけた。


 「ふふふっ。やっと来たのね始まりの冒険者達。私の可愛い四天王たちを倒し、ここまで来れた力は褒めてあげる。だけど、その程度で私に勝てると思ったら大間違いよ」


 かろうじて見えていた口を歪ませながら魔王と呼ばれた人影は纏っていたローブをバッと脱ぎ捨て答える。


 「なっ!馬鹿な……そんな……うそだろ?」


 「あっ!!」


 「あれは……は、白銀の獣姫……?」


 「そんな○○リさんが……魔王だったの……?」



 冒険者達のうちの数人が魔王の正体を知っていたらしく驚きの表情を浮かべている。

 魔王はそんな彼らの表情を見つめながら周りに花が咲いている様子が幻視できそうなほどの微笑みを浮かべた。


 「ハァウッ!?」


 「くあ……あぁ……」


 「か、体がうごかな……なんで……」


 その魔王の浮かべたその表情は32名全ての冒険者達を一瞬にしてある状態異常に落とした。



 その状態異常とは…… 魅了である。



 魅了とは相手に見惚れてしまい発動者とその仲間に対し敵対意識をもてなくする事で運動能力を激減させる事ができる。


 頭で敵と分かっていてもステータス異常にかかっている為対応が出来ないのだ。厄介な事に魅了を使ってくるモンスターは闇の領域の奥にある限られた場所に極わずかしか出現しない為、耐性スキルを得る修行を行うのも難しい。

 耐性スキルを得る以外に、特定のステータスをあげる事でかかりにくくすることが出来るが、この冒険者たちにはそのステータスが高いメンバーが居なかったようである。



 魔王である彼女は攻撃に関するステータスは歴代の魔王の中で最弱であるものの、別の方向で最強の力を得ている。その一つが純粋に特化ステータスによる付加異常効果なのである。


 魔王にすればウィンク(瞬き)をしたり撫でたり、微笑を浮かべるだけで発動してしまう困ったものであるが今回のように大勢の敵と戦うときには、非常に使い勝手が良い技である。

 以前は使いこなすのが難しかったが、それも少しの練習でコツを掴み無意味に魅了効果を撒き散らすようなことにはならなくなった。


 「ふふっ、せっかく苦労して此処まできてくれたんだからもう少しお話したい所だけど、返事できないよね?

 だから始まりの街に送り返してあげるわね。後その際に少しばかりデスペナくらってもらうけど……許してね?《サモン・【軍勢・獣】》!!」


 魔王がスキルを発動させるとそこに現れたのはランク最弱である1~最強である10までの獣型モンスターがごちゃまぜになった総勢100体程。ここ魔王城の玉座の間ではこれだけ呼ぶのが限界なのである。

 ちなみに現れたモンスターたちの表記はこんな感じ。


 ボア ランク1 LV99

 グレートボア ランク2 LV99

 ナイトボア ランク3 LV99

 グレイトウルフ ランク4 LV99

 ソードウルフ ランク5 LV99

 ナイトブラッドウルフ ランク6 LV95

 フェンリル ランク7 LV88

 ブレイズエレファン ランク8 LV81

 エンシェントリオル ランク9 LV72

 エンシェントグレイプ ランク10 LV63

 その他大勢……


 なお、今ここに居る冒険者達のレベルは50~60台。数字を見る限り倒せるとは到底思えない戦力差だった。


 「な、何だよこのバケモノたちは!なんでランク1モンスターがレベル99に……」


 「くっそー!!次に会ったら詳しく聞かせてもらうからな覚えてろよー!グハァっ」


 「○○リさん。この埋め合わせは次に会った時にしてくださいねー!キャフンッ」


 「何故拙者はこちらの勢力に属してしまったのでござろう……無ね…ヘブッ」


 「この数、勝てるわけが無……プギュウッ」


 「ま、魔王……姫……パネェ……」


 そんな断末魔?の叫びを上げながら32名の冒険者達はあっという間に獣の軍勢に飲み込まれ消えていった。



 32名にも及ぶ冒険者の群れを掃討した獣の軍勢たちは魔王の手が振られると同時に忽然と姿を消していった。

 あとの玉座の間に残っているのは魔王一人……いや、気付けば新しく4つの影が魔王の後ろに立っていた。



 「動けない所に物量による轢きつぶしって相変わらずひどい攻撃ね」


 「さすが魔王って呼ばれるだけの事はあるよねー!」


 「いつもながら手早いですなぁ。さすがやで~」


 「ぐっじょぶ!魔王ねーさん」



 4人の特徴を簡単に説明すると

 1人目は青色の髪をスラリと伸ばしている気が強そうなハイダークエルフ女性。

 2人目は赤い髪をツインテールにしている見た感じ12歳くらいのヘルゴーストの少女。

 3人目はエセ関西弁を操る黒髪をちょんまげにしている魔人族の男性。

 4人目は金髪縦ロールの眼帯つきスプリガン女子で基本は口数が少なく大人しい性格。……あくまでも基本は、だけどね。


 そんな彼らは魔王城の回りを囲むように建つ塔の守護者たちで、四天王とも呼ばれる彼らを倒さないと魔王城に入る事はできない。言ってみれば先ほどまでここに居た冒険者はこの4人を倒した事に他ならないが、死んだはずの彼らが何故生きているのか疑問が残る。


 魔王は振り返り4人を見る。その顔は何かやりきった!と言う達成感に満ち溢れていたが、次の瞬間には口を尖らせ文句を言い出した。



 「もう、皆が負けちゃうから私が出ることになったんだよ?顔バレしちゃったから次から始まりの街に行きづらくなったじゃないのー!」


 「そ、それはうん。いつかバレることなんだから気にしないで……ってアンタ自分でローブ脱ぎ捨ててたじゃないのっ!バレたのは自業自得よ」


 「ふぐぅっ!?そ、その時居なかったはずなのになんで知ってるの……」



 堅苦しい雰囲気から突如、和気藹々とした雰囲気になり会話を始める魔王+四天王たち。その顔には安堵の笑顔が浮かんでいたりもする。



 「えっ?そ、それはほら……あれよ。多機能付き魔王専用追跡カメラで随時隠し撮り……ゲフンゲフン」


 「ち、ちょおっ!?今、聞き捨てなら無い言葉が……!?」


 「そんな些細な事どうでも良いじゃないの。それよりもほら先にやるべき事があるじゃないかしら?」


 「さ、些細なこと……だったかなぁ?」


 「そうそう!だから気にしないで先に戦利品の整理しちゃおう!」



 なんとなく魔王と呼ばれた女性はないがしろにされている気がしたが、四天王の皆に丸め込まれて追求すべき内容を忘れてしまった。そんな抜けた所もまた四天王の皆に慕われてしまう理由になっていたりする。



 「今回の戦利品は冒険者が持っていた幾つかの装備品と消耗品が幾つか……それに所持金の1割ずつだね。そう考えると結構手に入ってるね!」


 「今回私達四天王は負けたけど……既定どおり魔王に5割、四天王に1割ずつ、国庫に1割で良いのかしら?」


 「せやなー。それでもエエと思うねんけど……魔王さん、負けた俺らが報酬を貰っていエエのん?」


 「ん?いいよ?今見る限り装備レベルの制限がある武器防具が多くて私には装備できないものあるし。それに仮に全部私が貰ったとしてもバザー行きになって皆へのボーナスに変わるだけだよ」


 「ボーナスって……四天王の基本給だけでもハイレアクラス装備を買えるだけ貰ってるのに……」


 魔人族の言葉に返事した魔王に対し、ヘルゴーストも何処となく遠慮気味なコメントを出している。


 「ん、私も生産スキルメインなのに四天王としてのお給料を貰って肩身が狭い……」


 上乗せする形でスプリガンもコメントを出すが魔王が思うことは一つ。


 「マー君(魔人族男性の略)も、ヘルちゃん(ヘルゴースト略)にスーちゃん(スプリガン略)も気にしすぎ!特にスーちゃんはこのお城を作るときに大活躍してるからこその実力給なんだから遠慮は無用!

 他の二人も昔、皆で決めた事にいまさら文句言わないっ!文句を言うなら次から来る冒険者たちをみんなで片付けられるようになってくれたらいいんだからね? さあ皆好きなのを選んで!」


 「せやなっ、この武器もらっておけば次はそう簡単には負けへんで!」


 「この素材、光側でしか取れないやつ……ラッキー」


 「私は今回お金でいいかな~」


 「同じくお金で……」


 「もー、皆欲が無いなぁ」



 魔王は四天王の皆に声をかけながら戦利品の分配を行い、こうなった1年前のあの頃を思い出す……。

 あれはそう……降りしきる雪の日……



 「ちょっと魔王!なんか思い出してるみたいだけど、ここ数年雪なんて降ってないからね!」


 ……ハイダークエルフの四天王にツッコまれた魔王は思う。そんな容易く人の心を読まないで欲しい……と。

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