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1話

 「ずっと好きでした!俺と付き合ってください!」


 「気持ちは嬉しいんですけど……私は今そういう事を考えている余裕が無いんです。本当にごめんなさい」



 とある大学の告白スポットで男女が向かい合う形でそう言う話をしていた。男の方は容姿に優れており、街中では10人中10人が顔を赤くしてみてしまうほどの美形である。本人曰くモデル界で活躍しているというのも頷ける。

 でも女にとってはそんなことは些細な事である。


 一方の女の方だが、こちらも負けず劣らず……いや10人いれば15人が振り返るといってもいい程の飛びぬけた容姿をした美人で、もし仮に男と一緒に行動していれば、きっとお似合いのカップルといわれても仕方が無かっただろう。

 だがそれほどまでに整っている容姿をしているにもかかわらず、女には男には言えない……いや人には言えない……違う。誰にも言いたく無い秘密があったのだ。


 (あぁ、早く帰りたいのに、面倒なのに捕まっちゃったなぁ……)



 男は諦めが悪くしつこく食い下がってきたが、振り切りたいところだけど余計な反感を買わないように気をつけつつ、貴方には私なんかよりもふさわしい人が必ずいますから という戯言で押し切った。



 「あ~、もぅひどい目にあった。それは兎も角としてお待ちかねの時間がやってきましたよーっと」


 ようやく大学から帰宅した女はすぐに上着を脱ぎ捨て部屋着もといジャージに着替えベッドへ。

 外ではあれほどきれいに着飾っているのに家の中ではジャージで……季節によっては下着同然でうろついていたりもする。



 ベッドは大きなカプセル型の機械に包まれており、機械の名前は《ナーブアセスメントポット(NAP)》といわれる最新式のゲーム機である。

 なお基本価格は「マジ?」と言いたくなるほどの値段をしており、発売されてからまだ数日と経過していないのに、早くも数十万台売れていて、予約をしたとしてもいつ手に入るか不明なのである。


 当然ながら最新式のゲーム機ではあるからインターネットにも接続可能で、パソコンの検索やらコピー機能なども使用可能である。


 ここまでで分かると思うが女の、人に言えない秘密とはゲームが好きすぎてオタクの域に入っている事。

 好きな種類のゲームは育成系・シュミレーション・RPGといわれるジャンルで、他のジャンルのゲームも差支えが無い程度には嗜んでいる。


 女としてもこう言う趣味を大勢の前で公言するのは流石に恥ずかしかったのでひたすら隠すことに専念している。

 中学時代にクラスで仲の良かったはずの子にそう言った話をした際に、「ゲームなんか・・・してるの?ウケるんですけどー」と言われショックを受けたのだ。それ以来はゲームの話を出すのをやめているいわゆる隠れオタクに専念している。


 だから女がゲーム好きだと言う事を知っているものは少なく、家族を除けば今までプレイしたゲームで知り合ったチャットなどで情報のやり取りだけをしているネット上での友人?のみ。後者に限っては知っていると定義して良いものかどうかは不明だが。



 そんな女がこのNAPとそれに付随されている専用アプリ【Eternal Story】通称エスを手に入れた当時の喜びようといったらそれは酷かった。

 何がひどいかというとまずNAPは倍率10万倍といわれる中で当選通知が来た時に、自室内で狂喜乱舞し同居している母親に「はしたないから大人しくなさい!」と怒られるほどだった。

 付属されているゲームの説明もしたい所だがそれはまた後ほど女がしてくれるだろう。


 実際にNAPが届いた時はそれよりもさらにひどい喜びようで、奇声による周辺住民の苦情が多く母親に自宅から追い出されたのである。その時に母親が言った言葉は


 「贔屓目にしても大人しくしていれば見た目はすごく良いのに、どうして中身がこんなに残念なのかしら……どこで育て方を間違えたのかしら?」


 だったそうな。



 勿論追い出された女はすぐに大学近くのマンションの一室を借りた。勿論奇声を上げてしまっても大丈夫なように防音性能抜群の部屋だ。家賃?そんなもの父親に猫なで声で頼んだら一発でOKが出された。

 その後の条件にアルバイトなりして引き篭もりだけはしないようにと言われていたらしい。


 だが娘に甘い父親だが家賃と学費しか出してくれなかったようだ。生活費やら化粧品代は自分で稼げってことなのだろう。まあ学費と家賃を肩代わりしてくれるだけありがたいものだと女は考え直し、短時間かつ給料の高いアルバイトに応募。その優れた容姿(外面のよさ)から、すぐに採用が決まり当面の生活の目処は立った。


 ゲーム好きという趣味を隠すためにそれなりに気合を入れているお化粧に関して妥協するわけにはいかないからである。しかし女は気付かない。そのせいで自分の容姿が目立ち今日のように引き止められてしまうと言う事に。



 「うん、接続状況よしっ、玄関と窓の戸締り……よしっ、準備完了!今日から私の私による私の為の道【覇道】を歩んでやるわ!」


 女はNAPに入り操作を開始。NAPにインストールされている業界初の育成系シュミレーションMMORPGながっである【Eternal Story】を起動した。


 「ダイブインッ!」




 《ただいまの時間は正式サービスが開始されていません。正式サービス開始まで後62分お待ちください。

 なお、キャラクター作成がまだ出来ていない方はこのインフォメーションの後に表示されるキャラクター作成画面を選択することで、使用するキャラクターを作ることができます。

 既にキャラクター作成を終わらせている皆様は、サービス開始時間までログアウトを選択してお待ちください》



 やる気満々で帰ってきた女だったが、サービス開始時間までは把握していなかったようである。

 少し唖然としていた女だったが、キャラクター作成は終わらせていなかったらしく、表示された選択肢からキャラクター作成を選んでいた。

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