転生者としてローズとして
「無事、承諾を貰えて安心だな。ローズ」
「はい、ブラッドハート様っ」
二人きりの控え室。
なんとかなって、ほっとして笑顔を交わせた。
「これで誰にも邪魔されずに堂々と、そなたを連れ帰れる」
「はいっ、ブラッドハート様……」
ギュッと抱きしめてくれた!
この腕のなかに身を任せていられるのね――
「ありがとうございます、陛下に願ってくださって」
「どうなるかと少し緊張したが、上手くいったな」
緊張してたブラッドハート様も素敵だった。
私のために国王陛下に願ってくれた姿、一生忘れない!
「そなたの身分も保証してもらえてよかった。俺は気にしないが、やはり王家が後ろについているほうが婚約の説得がしやすいからな」
「そうですね……!」
王族の身分と後ろ盾があれば堂々としてられるし!
ブラッドハート様にも心配とか迷惑とかかけずに済みそう――
「本当にありがたいです。良い人達ですよね、国王陛下とフィル王子様……」
あんなに簡単に許してくれて。
私を伝説のオッドアイの娘だから幸運を運ぶと信じてくれて。
なにか、大丈夫か心配になる。
平和主義のお花畑ってやつなんじゃ……?
「こんな見ず知らずの私を、オッドアイというだけで信じてくれて……」
突然現れて会談をブチ壊したりしたんだけど。
結果オーライかもしれないけど。
「王族にまでしていただけて、いいのでしょうか?」
もし、私に両親がいて。
悪い奴らだったらどうするの? 利用されるんじゃ?
「優しすぎて心配になります……」
私がしっかりしなきゃ!
「そう心配はいらないだろう」
ブラッドハート様はあまり気にしてなさそうに笑ってる。
「優しさもあるだろうが、伝説の娘という力ある者をすぐさま王族に加えるとは、なかなか強かではないか。政略や戦略においては当然の行為ともいえるが」
「そうなんですね……」
そういう見方もできるのね。
さすが、ブラッドハート様……見方が戦略的。
「しかし、あの国王と王子なら本当に優しさと平和的な考えだけでそうしたのかもしれないな」
「そうだと思います」
あの優しい笑顔がそうだと言ってた。
「それに、私も政略や戦略に力を使ったりしません。ただ、ブラッドハート様の幸せのためにっ! 幸運を運ぶためだけに使いたいですから!」
絶対、誰がなんと言おうと!
ブラッドハート様のために好きにさせてもらうわ!!
「ローズ……そなたも優しいのだな」
はっ!
大変、ブラッドハート様は優しい女はあまり好みじゃないんだっけ!?
でも、嬉しそうに笑ってくれてる――?
「そなたと居れば幸せは約束されるだろう」
私に身を任せて、信じてくれてる。
「私、本当にそんな凄い力があるかわかりません、でも、この気持ちは本当です! 何よりも強いです!」
せめて、思い切り抱きしめて。
全身全霊で伝えたい――!
「不安になる必要はない、ローズ」
「ブラッドハート様……」
「そなたは、既に、俺に幸運を運んでくれている。そしてこれからも。そう確信している」
信じてくれてる、揺るぎない声から伝わってくる。
「誓います! これからも幸せにすると! 」
「ローズ、そなたもだ」
「私も、幸せになれます! ブラッドハート様が幸せなら!」
「ふふっ、そうなのか?」
「はいっ」
「ふむ……」
ブラッドハート様、体を離して私の姿を見直した。
「そんなに俺の幸せを願い、自分の身にも関わるとはな……神に命じられたのか?」
神!?
幸運のオッドアイとして見てる……
ブラッドハート様の瞳の冷静さが、心の距離になってるのがわかる!
「違います!」
私が幸せにしたいと伝えなきゃ――
私を見て!!
「私はっ、ローズになる前から、事故で死ぬ前からブラッドハート様を知っていました! 噂に聞いたりお忍びで来たのを見たりして……」
そういうことにしとこう!
とにかく!!
「私は自分で幸せにしたいと想っています! それを、神様が叶えて伝説のオッドアイの娘にしてくれたんだと思います……!」
そうとしか言えないし、
「そうか……」
「はい!」
多分そう! 絶対そう!
「そうだな」
ブラッドハート様!
私の目力と前のめりな訴えにたじろいで。
ちょっと押し切られたって感じで笑ってる。
「そなたという一人の娘が俺を幸せにしてくれようと、現れてくれたのだな」
私を見つめる鋭い瞳に熱が戻ってく――
握ってくれた手も力強い、もう離さない。
「神様に命じられなくても、私はブラッドハート様を幸せにすると誓います。たとえ反対されても幸せにします!!」
「ローズ……俺も誓おう。誰に命じられなくとも反対されようとも幸せにすると」
誓いのキス――
これで安心して、ブラッドハート様の婚約者になれる!
ほっとして肩の力を抜いた。
「ええ、でも、まだ問題は残っていますわよ」
「え?」
力が抜けたままの私にシルビアが喝を入れるように言った。
フィル王子とクロスと婚約を祝ってくれた後で、フロンティアと私とシルビアと三人だけになった女子トークで「これで、みんなで幸せになれる」と喜んでたのに。
「どんな問題が残ってるの?」
「ブラッドハート様の父上ですわ。バンダルディア王国の国王陛下にブラッドハート様との婚約を認めて頂かないといけません」
「あっ」
それがあった!
緊張感に体がギクッとなった。
「まぁ、貴女なら見知らぬ国の王を相手にしても大丈夫な気がしますけど」
「そうでしょうか?」
「ええ、貴女の出現と行動は私の、私達の運命を変えたんですから」
悪役令嬢になるはずだったシルビアと、みんなの運命を……
「また、こうして、フロンティアと笑いえるようになるとは思いませんでしたわ」
シルビアとフロンティアが笑顔を交わしてる――
「お礼を言いますわ、ローズ様」
「私も心からお礼を言います、ありがとうございます! ローズ様!」
「シルビア様、フロンティア様……!」
そうだよね、敵同士になるはずだったんだから。
その運命をちゃんと変えられたんだ――
「私、この調子で行ってきます」
勇気が出てきたし覚悟も決まった!
「後は、ブラッドハート様にお任せですわね。ローズ様をとても深く愛しておいでのようですから、何を言われようと何があろうとも大丈夫でしょうけども。上手くいくように祈っていますわ」
シルビアは確信している笑みをみせてくれてる。
「私もそう思います、ローズ様とブラッドハート様なら大丈夫です!」
フロンティアの笑顔も確信してくれてる。
「そうですよね!」
私も力強く応えて笑っていよう。
「 私達、三人とも、愛する人と幸せになりましょう!」
約束して、お互いの幸運と幸せを祈った。




