転生者とフロンティア
ブラッドハートは並ぶ四人の中に一目惚れした娘が居るのを見て、目を見開いた。
その隣で、転生者も同じ娘を見て目を見開いた。
自分が本来入るはずの体だ――確信した!
なぜなら、知っている姿だから。
小説の登場人物としてキャラメイクしていた
理想の自分の姿そのもの!
ネバーローズ王国に伝わる幸運を呼ぶというオッドアイで、ただのモブの町娘で――
目の前の娘はその通りの格好をしてる。
隣に立つシルビア嬢の着ている上等の生地に金の刺繍がされたドレスとは比べられない、白いブラウスに茶色のコルセットワンピースにブーツ、それでも、完璧な格好だった。
驚きと喜びに突き動かされて、理想の自分の前に立つと。
目が合って、しばし、見つめあった。
「お前は、何者だ?」
そんな静寂に、隣の兵士が切り込んできた。
「あなたは……」
「城の兵士で、私の友人のクロスフォードだ」
フィル王子が代わりに答えた。
「そして、フロンティアの大事な男だ」
断言に驚いて、クロスをもう一度見た。
クロスフォード。フィル王子の友人で、フロンティアへの好きという想いを隠して二人のために戦う兵士。
報われない片思いキャラに胸がとてつもなくキュンとなった。
そんなクロスも運命が変わってフロンティアと結ばれた!?
心から安堵して祝福の笑顔になっていると、
「フロンティアとは、君のことではない」
フィル王子が厳しい顔つきでさらに言って、
「この娘が本当のフロンティアだ」
オッドアイの町娘を片手で示した。
「彼女から話は聞いた。さぁ、君からも聞かせてくれ。なにもかも」
「お話します……!」
頷いて、事故に遭ってからのことを、ブラッドハート様に助けてもらいながら全て話した。
「フロンティアに生まれ変わったと思って、一連の行動をした。そういうことか?」
「はい」
フィルの確認にしっかりと頷いた。
「なにも、企んでいなかったのか? ただ、ブラッドハート王子への想いのためと、予知夢で見た両国に起こる戦いを未然に防ぐために行動した?」
「はい」
クロスの確認にも頷いた。
「こんな事態になって、困惑しているのは彼女も同じだ」
ブラッドハート様が肩に手を置いて庇ってくれた!
やっぱり頼もしいけど喜んでる場合じゃない、
「フロンティア様!」
オッドアイの町娘に頭を下げた。
「なんであろうと体を勝手に使ってしまい、申し訳ありませんでした!」
「顔をあげてください。貴女のお気持ち、よくわかります」
優しい声がして、オッドアイの町娘の、本当のフロンティアの微笑みが見えた。
「私も、この体になって真っ先に、貴女と同じことをしましたから」
フロンティアはクロスに微笑みかけた。
「こうなってよかったのです。私が事前に、これから起こる悲劇を知っていたとしても同じ行動はできなかったでしょう。その、思い浮かびませんから」
フロンティアはブラッドハート様から目をそらせた。
そうだよね、フロンティアのままだとフィル王子と婚約破棄してブラッドハート様に告白しようなんて思い浮かばない。だって、
「フロンティア、私を覚えているか? 」
そう、知っているかを会ったことがあるかをブラッドハート様が問いかけた。
「以前、忍んでこの国を視察した時に歌うそなたのそばを通ったのだが」
「いいえ……」
フロンティアは困ったように答えた。
会ったことがある気がするという、私の咄嗟の嘘がバレてしまった……でも、ブラッドハート様とフロンティアはそれより気になることがあるみたいで見つめ合ってる……
「私に対する想いはないんだな?」
ブラッドハート様が確かめるように聞いた。
「はい……お会いしていたとしても、その」
「わかった」
口籠るフロンティアにブラッドハート様は笑いかけた。
安堵したように肩で息をついて、
「これで、俺の用事は済んだ」
ブラッドハート様は私に笑いかけてきた。
とてもあっさり、本当のフロンティアとのことは片がついたみたい……好きとかはないんだ?もういいんだ?
まじまじ見つめていると、ブラッドハート様も伺うように見つめ返してきた。
「他の女に拒絶されたりする男は嫌か?」
「そっ、そんなことはないです! そういう孤高の存在なところが好きなんで!」
上手く言えてるかはわからないけど必死の言い分に、ブラッドハート様はふむと首をかしげた。
「孤高の存在か、そう格好のいいものでもない気がするが」
「いいえ! かっこいいです! 素晴らしいです! 尊いです!」
「わかった、そなたがそう言うならば」
ブラッドハート様は笑って、落ち着かせるようにどうどうと手で押さえる仕草をした。
「仲がよろしいのですね」
ブラッドハート様と私を、フロンティアはまじまじ見つめてる。
「婚約もして、結ばれて……」
「このまま、結ばれるのはまずいだろう」
感動して微笑みかけたフロンティアにクロスが冷静に突っ込むように言った。
「中身を入れ替えないと」
「そうだ、フロンティアは元の体に戻って」
フィル王子も言って、こちらを見た。
「フロンティアの中にいる君は……」
「私は、フロンティア様のいる体に、そのオッドアイの娘に入りたいと思います!」
宣言して、オッドアイの娘をもう一度確認した。
「間違いありません。私が本来入るはずの体です! 森で倒れていた夢を見たんです……」
本当ならそこから気がついて行動開始するはずだったのが、運命のイタズラでこうなった――
「森で倒れていた夢ですか?」
フロンティアの問いかけに頷いた。
「はい、昨日の夜にフロンティア様の部屋で寝ている時に見たんです」
「それは正夢というものではないでしょうか? 私は屋敷で気を失って、気がついたらこの体で森の中に倒れていたのですから」
「やっぱり!? この体にどうにか!」
「どうにかして、入れ替わりましょう!」
二人で両手を合わせてみた。
触れ合う部分が熱くなって、胸が熱く膨らむような鼓動が激しくなる感覚がして――入れ替わるのを感じた。




