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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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後日談2

後日談②

ディランside


夜更けの別邸執務室。


窓の外では、王都の灯りが静かに瞬いていた。

机の上には一通の申請書。


【多人数連携調律試験 実施申請】


内容は、どこまでも形式的だった。


訓練目的:魔力循環および魔力観測

使用制限:監督者立会いのもと限定使用

危険度区分:低

責任者:蒼紋ラピスラズリ伯爵家所属 第三騎士団副団長 セナ

副責任者:双輝アレキサンドライト王国第一王子 ディラン


――問題は、最後の一行だ。


「……ずいぶんと、よく練られている」


俺は小さく息を吐いた。


形式上は完全に合法。

規則違反は一切ない。


だが、内容を理解すればわかる。


これは明らかに――

実戦を想定した対人魔宝剣訓練だった。


「止めることもできるが」


呟くように言う。


だが、同時に思い出す。

あの日の、孤児院でのボランティアのティアナの目。


誰かに守られるだけではなく、

誰かを守る側に立とうとした――あの覚悟。


(……あれを、無かったことにはできない)


俺はペンを取り、書類の端を指で押さえた。


もしここで拒めば、彼女はきっと別の道を探すだろう。

より危うく、より無防備なやり方で。


ならば――


「……俺の目の届く場所でやらせる」


王族の名は、許可であると同時に枷でもある。


責任はすべて、自分が引き受ける。


静かに判を押した。


重い音が、夜の執務室に響いた。


「……まったく」


小さく、苦笑する。


「君は本当に。」


机に肘をつき、独り言のように続けた。


「今度、結果を聞かせてもらわなきゃな」


「……セナも、苦労しているだろうな」


銀髪の騎士の姿が浮かぶ。

誰にともなく呟いて。


その書類は翌朝、

正式な承認印付きの公文書として、騎士団本部へと回された。

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