救世主2
「どうしたのかしら?少し話を聞いても?」
私が近寄ると、3人の第2騎士団員たちは顔を見合わせる。
「俺たちじゃあ、どうしようもないしな……」
「そうだな……」
「聞いていただけますか?ティアナお嬢様」
事情を聞くと、概要はこうだ。
父からマルクに頼んだ仕事で孤児院の場所を借り、炊き出しボランティアを行うこと。
しかし、マルクから提示された金額では、予定よりずっと少ない食事しか配布できないらしい。それを指摘したが、「上手くやれ」と無茶を言われたとのこと。
「中々の無茶振りだねー」
「そ、そうですよねー……はああ」
盛大なため息をつく3人。
「とりあえず、提供する食事メニューを教えてくれる?」
「は、はい!えっと……パンとシチューになりますね」
持っていた資料を見せてもらう。
「パンとシチューでこの金額になりますか?」
セナが後ろから資料をみる。
「市販の高級パンにシチュー。シチューの中身の材料が高いはね、えびやイカ、ホタテ高級食材をいれてる。
それはこの金額になるでしょう。これ考えたのだれ?」
分かってはいたがあえて聞いてみる。
「マルク様です。そこは私どもも引っかかったのですが、普段食べたこともないような高級なものを食べさせて、すごいと思わせてやろう!とおっしゃっていました」
「はあぁあ」
盛大にため息がでる。脳みそが足りてないと毒を吐きたくなる。
「え、アホなんですか?脳みそ入ってます?」
私の心の内をテオが代弁した。
「あの、さすがにそこまではダメですよ。思っても一応ラピスラズリ伯爵家の次期当主様の予定ですから」
コソっとテオに耳打ちする他の団員。
「まずはシチューの内容ね。えびやいか、ホタテは甲殻類アレルギーの人にとっては危険な食材ね。
子供の多い孤児院や不特定多数の方に配るのはやめた方がいい。
中身はじゃがいもやにんじん、玉ねぎとかに変えましょう。
食べ応えがあるように鶏肉も入れると出汁がきいて美味しいと思う」
私の言葉をメモする第2騎士団員。
「それと野菜は食べやすい大きさに。シチューに入れるから見た目が多少悪くても味が良ければいいと思う。
レオは畑もやってるし農家に知り合いがらいるから美味しい野菜を安く売ってもらえないか聞いてみましょう」
「はい!」
大きく返事をする。
「あとはパンね。これは市販のものはやめましょう。手間はかかるけど、小麦粉から作るのはどうかしら?」
「こ、小麦粉からですか……?」
第2騎士団員たちは目を丸くする。
「お嬢様、さすがにそれは手間がかかりすぎますし、人手も足りませんよ」
セナが口を挟む。
「ボランティアを行うのは孤児院よね?
だったら孤児院の子たちにも手伝ってもらえばいいの。
もちろん、料理人のレオにも協力してもらう必要があるけど」
「な、なるほど!」
団員たちは頷き、少し希望の光が見えてきた表情だ。
「そうすれば、この予算内でより多くの人に食事を届けられると思う」
「おおー!」
声を揃えて喜ぶ団員たち。
「計画をもう少し詰めて、準備を進めましょう」
私が指示を出すと、セナも続いて口を開く。
「そうすれば、第3騎士団からもボランティアとして人数を少し出せるようにします」
「協力します!」
近くにいた団員たちも口々に声を上げた。
その瞬間、騎士団全体の士気が自然と高まるのを感じた。
翌日、孤児院へのボランティアに向けての準備が始まった。
私は任務のない第2騎士団と第3騎士団ともに、必要な道具や材料の手配を確認する。
「まずは野菜ね」
レオに指示を出す。
「レオ、畑の知り合いに連絡を取って、新鮮な野菜をできるだけ安くできるか聞いてもらえる?」
「了解です、お嬢さん!
野菜の方は俺が作ってる畑からも出せるし、お嬢さんのお願いって言えば味は変わらず美味しいけど形の悪いやつなら安くしてくれると思います」
「俺も実家の農家で聞いてみます!」
他の団員も手を上げる。
「ありがとう」
それとパンの準備で小麦粉が必要だけど…
「ねぇ、セナ。セナの実家近くのパン屋の奥さん家から小麦粉とか買い取れないかな?」
パン屋の奥さんは宝石事件に巻き込まれ休養している。使っていないものが余っているかもしれない。
収入も激減しているだろうし、少し力になれればいいのだけれど…
その言葉にセナも頷く。
「聞いてみます」
「多少、金額出してもいいから。使っていない小麦粉があったら買い取ってきて」
「かしこまりました。パンは小麦粉から作るので、時間がかかるので焼き上がりのスケジュールも計画しないとですね」
セナが補足する。
他にパンを作る材料の手配を団員達と分担していく。
「あとは…孤児院のキッチンを借りる手配ね。これは私が施設に連絡するから。
みんな一緒に頑張りましょ!」
「はい!」
団員達が元気に返事をする。




