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夜明けが世界を染めるころ、 悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない  作者: 舞響


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22/222

パーティーは波乱2

あっという間にパーティ会場へ到着した。


クラリス夫人に挨拶を交わし、プレゼントを渡したところ大変喜んでいた。さすがユウリ。

下調べが上手で助かる。


一通り挨拶回りを終えたところで、ひとりの令嬢に声をかけられる。


「ご機嫌よう、ティアナ様」


「ご機嫌よう。久しぶりね、ユリア」


10年前の出来事をきっかけに友人となったユリア。

もともとは市民出身だが、両親が事業で成功し、今では植物の品種改良を行っている。仕事柄、関わることも多い。


「相変わらずティアナ様はお美しいですわ。今日のドレス、まるで夜空の下に現れた妖精のようで……本当に素敵ですわ」


――相変わらず、すごい褒め言葉だ。


「ありがとう。ユリアも、そのピンク色のドレス素敵ね。

それに、いつも言っているけれど、呼び捨てでいいのよ」


「いえ、私にとってティアナ様は憧れなんです!!

もうずっと、お慕い申し上げておりますのよ」


言葉に力がこもる。


正直、10年前に彼女を助けたのは、同情もあったが、それ以上に自分の利益になると考えた部分もあった。

私は決してお人好しではない。打算的な人間だ。


だから、私に憧れや尊敬を抱くのは――違う。

あえてそれをいま否定することはしないけれど。


会場がざわめきだし令嬢達の声を耳にする。


「わぁ……素敵だわ!!」


「ディラン殿下よ! なんてお美しいの!」


令嬢たちが、うっとりとした視線を向ける先にいるのは

ディラン・アレキサンドライト殿下。


この前会った時にはよく見えなかったが、今回はその顔立ちがはっきりと分かる。

輝くような金髪は、片側がやや長く、逆側は短めに整えられ耳にかけられたアシンメトリーな髪型。

それが一層、艶やかな雰囲気を引き立てている。


整った顔立ちに、エメラルドの瞳に柔らかな微笑み。

誰もが思わず見惚れてしまうのも無理はない。


――「美しい」という言葉が、これほど似合う人物もそういない。


殿下の周囲に、令嬢たちがこぞって集まっていくのを横目に、

私は用事も済んだことだし、少し食事を取ることにした。


殿下には、婚約者候補が何人もいるらしいが、本命はまだ決まっていないという。

そのため、どの令嬢もここぞとばかりにアピールしているようだった。


(……大変そう)


華やかな笑顔の裏で、内心どう思っているのかは分からない。

けれど、あれだけの視線と期待を一身に浴び続けるのは、さすがに気疲れしそうだ。



「さすが殿下ですね、相変わらずお美しいですが、私は断然ティアナ様派です!」


ユリアが力強く告げる。


「いや、張り合ってないからね」


「ティアナ様 私も少し挨拶周りして来ます。お父様が呼んでいるようなので…」


ぺこっと会釈するユリアに微笑む。


「ええ、またゆっくり。」

ユリアのお父様にも会釈する。




一人になった私はテーブルに並ぶ料理へと意識を向け、軽く皿を取った。


「これ、美味しそう……」


見た目は繊細で、味も上品。

思わず一口、また一口と手が伸びる。


「……ん?」


ふと、背中に視線を感じた気がして、顔を上げる。


令嬢たちに囲まれていたはずの殿下が、

ほんの一瞬だけ、こちらを見ていた――ような気がした。


(気のせい、よね)


視線を逸らした次の瞬間には、また別の令嬢に話しかけられている。

私は小さく首を振り、再び食事に戻った。


(今日は極力、関わらない。それが一番)



会場の隅で食事をしていると、ひとりの子息に声をかけられた。


「こんばんは、ティアナ嬢」


――確か、この人はカイロス。

たまにマルクとつるんでいる、少し品のない人物だ。


「こんばんは。どなたでしたかしら」


興味がないのを隠す気もなく、さらりと名前をぼかす。


「カイロスです。マルク様のご友人ですよ。

ティアナ嬢のことはお屋敷でお見かけすることがあり、美しい方だと思っておりました」


「それはどうも」


「ティアナ嬢も、そろそろ良いお年頃ですよね。

婚約者などはいらっしゃらないのですか?」


――早く切り上げたいのに、ずるずると話しかけてくる。


「ええ。今は考えておりませんの」


なぜ、あなたに心配されなければならないのか。

内心では苛立ちながら、表情だけは笑顔を保つ。


「そうですか。しかし、早めに決めないといけませんよ。

若いうちが花、と申しますからね」


……本当に、余計なお世話だ。


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