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第七章 第十六話 守り抜く意志


side:イース



イース「(今の僕に出来る事……それは……守さんを信じる事だ!!……守さんが来るまでは……何としてでも……ここを守り抜くんだ!!)

 



 僕は紫黒の魔狼ケニーさんと相対し、一時は絶体絶命の所まで来ていたが覚醒し、ケニーさんの攻撃を相殺した。

 しかし今度はケニーさんの変貌により、ケニーさんと僕との力量差はより拡がってしまった。

 打ち勝つ事は困難だと判断した僕は、守さんが来てくれるのを信じ、オーズ村の防衛に専念する事を選択する。




ケニー「我が力……食欲……力欲……そして兄弟愛。

 ……その力を以て貴様に引導を渡してやろう。」


イース「……(来る……!)」


 ケニーさんは再び大地を揺るがす踏み込みを見せ、僕との距離を一瞬で詰めてきた。


イース「はああぁっっ!!(今は……ひたすら耐える!!)」


 僕は両脚にも力を込めながら、両腕によるガードを試みる。


ケニー「ハアアアアァァァッッ!!」


 ドゴオオオオオオオォォォンッッ!!


 僕はケニーさんの怪力を真正面から受ける。

 今度は吹っ飛ばされず、僕はその場に踏み止まった。


イース「……(すぐ後ろはオーズ村の入口だ。何とか踏ん張らないと!)」


ケニー「飛ばされないか……ならば……」


 ケニーさんは拳による重撃でなく、今度は爪による連撃に切り替えてきた。


 ガシュッ!ガシュッ!ガシュッ!


イース「ぐっ……」


ケニー「小さき竜。根を上げるなら今だぞ。そうすれば楽に死ねる。」


 ガシュッガシュッガシュッ!


イース「根は上げません!……貴方の攻撃を耐え切ってみせます!!」


 傷付きはするものの、覚醒した僕の剛体術は自らの身体を堅固に守っている。


ケニー「……ふむ。(より堅固になっているな……)……良いだろう。根比べといこうではないか。」


 何度もケニーさんの攻撃が僕を蝕もうとする。

 何とか耐えてはいたが、僕は必死で守るのに精一杯であるのに対し、ケニーさんは余裕がある様子で、僕や自らの力を試しているかの様に攻撃を繰り出していた。

 速度差がより明確になっている為、ケニーさんがオーズ村を襲おうとしたら対応は困難を極めたが、照準が僕に向いていた事は幸いであった。

 しかし……


ケニー「(粘り強い……ならば速度と力を更に上げるとするか。)……ハアアアアアァァァッッ!!」


イース「……!!」



 ガシュッガシュッガシュッ……

 ガシュガシュザシュザシュザシュザシュッッ!!


イース「くぅっ……!(剛体術が……)」

 

 速度と力をより上げたケニーさんの怒涛の連続攻撃に、僕の身体から徐々に鮮血が舞う様になってしまう。


イース「ぐぅ……(速くて強い!……だけど……)

 ……まだまだぁっ!!」



 ザシュザシュザシュッ……

 ガシュッガシュッガシュッ……


ケニー「……!(何と……またもや固くなり始めたか……)」


 剛体術が一時は弱まってしまったが、僕は気合いを入れ直し、再び剛体術は僕の身体を堅固に守る。



ケニー「……(我の速度に対応出来ず、反撃が出来ないとも取れるが……恐らくは時間稼ぎか。……兄者を葬ったであろう男が来るのを待っているのだな……だがそれは同時に……)

 ……自らの負けを認めた者が考える事だな。愚かだ。」


イース「……!(もしかして考えが読まれてる……!?)」


 表情に出さない様にしていたが、ケニーさんには見透かされていた。


ケニー「何を驚いている。反撃をする様子がない故、否が応でも狙いは分かる。」


 ケニーさんは一旦距離を空けると、攻撃の手を止めた。


ケニー「さぁ……我は手を止めたぞ。……どうした?

 ……かかってこないのか?」


イース「……。(……僕が攻撃した所で返り討ちに遭うだけだ……挑発に乗っちゃダメだ……攻撃するとしたら、守さんと一緒に……)」


 ケニーさんは呆れた顔で溜息をつく。


ケニー「はぁ……先程の力強い打撃は……青銀の息は何だったのだ。……貴様如き、ただの硬い氷岩と同じだ。戦っても何も意味を為さない。我の強さを実感したいと言うのに……貴様じゃ取るに足らん。」


イース「……(挑発には乗らない……僕だけよりも……守さんと一緒に戦う方が……勝つ希望がある!)」


 ケニーさんの挑発を僕は受けず、ガードの態勢を維持しながら、ただケニーさんの方を強く見ていた。




ケニー「……それが貴様の答えという訳だな。……その場に留まり……自らの負けを認めると。

 ……ならば……死ね!!」


イース「……!(来る……!)」


 僕はケニーさんの攻撃に備えて身構えた。

 ……しかし……


ケニー「ハアアアア……」

 

イース「……!?(何を……?)」


 ケニーさんは両手に気力を込めながら、身構える。

 直後両手を僕の方に開き、込めた気力を僕の方へ放出してきた。

 


ケニー「喰らうが良い……

 ……牙狼……風殺破(ガロウフウサツハ)アアアッッ!!!」

 


イース「……!!(しまった……青銀の息は間に合わない……耐え切るしかない!!)」

 


 紫黒色の無数の刃を纏った禍々しい気力が、僕の方へ急進する。対応が遅れた僕は剛体術により、ただ耐える事しか選択肢がなかった。



 ザシュザシュザシュザシュザシュウウウウウウゥゥッッ!!!



イース「ぐっ……!!」



 両腕でガードするが、すぐさま無数の刃が広範囲に広がり、僕の両腕を始め全身に灼熱の激痛が襲う。


イース「ぐうぅっっ!!(でも……耐えなきゃ……耐えるんだぁっ!!)」



 ドオオオオオオオォォォンッッ!!!



 空気爆発を引き起こし、辺りは大煙が立ち込める。

 煙が晴れた場所には……傷だらけであるが、まだ立っている僕がいた。



イース「はぁ……はぁ……まだまだ……」

 


ケニー「……(……粘り強さ、耐久力は認めてやろう。

 ……だが殺し合いにおいては宝の持ち腐れだ。限界もあるだろう。それに速度も戦闘技術もあったものではない。……終いにするか。)

 ……トドメだ。小さき竜よ。」


イース「はぁ……はぁ……(視界が……歪む……それに暗い……)」


 僕は立っているのが精一杯で、最早視界はほぼ無いに等しい状態であった。



 そしてケニーさんは強烈な踏み込みで僕との距離を詰めると、両拳を合わせた直後に右手を僕に突きつけてきた。

 


ケニー「死ね……

 ……牙狼……虐殺拳(ガロウギャクサツケン)!!」


 

イース「…………!!!(こんな気力……受け切れない……)」


 狼型の気力は……「僕を殺す」……そんな心を……殺気をこれまでかと込められていた。……というよりも、その気力が僕を殺そうと、まるで意志を持っているかの様であった。



イース「うぅ……(守さん……ミズキさん……ハンスさん……クレアさん……アレクさん……皆さん……ごめんなさい……僕は……これまでの様です……

 ……守さん……どうかオーズ村の皆さんが襲われる前に……守って下さい……

 ……皆さん……こんな僕を何度も助けて頂き……優しくしてくれて……本当に……有難うございました……)」



 絶大なる殺気を持った気力の前に、今度こそ僕は死を覚悟する。大粒の涙を流し、守さんに希望を託し、守さんを含めた皆さんに思いを馳せて……






 







「うおおおぉぉっっ!!!イースうぅぅぅっっ!!!」




 

 ドゴオオオオオオオオオオオォォォンッッ!!!!





 絶大な殺気を込められた気力は……何かに防がれた。




 煙が晴れた場所には……


 




 


 

 守さんが立っていた。


 

 

 


 両手の前にはとても大きな……堅牢なる光輝く守護壁があった。


 



イース「……守……さんっ……」


 

守「イース!!……凄い大怪我だ……

 ……良く……良く頑張ったな……!!良く……踏ん張ってくれた!!……良くぞオーズ村を守ってくれた……!!お前は……凄いよ!!

 ……後は……俺に任せてくれ!!」


イース「守……さん……」



 バタンッッ!!



 僕は守さんが来た事に安堵し、力無くその場にしゃがみ込む様に崩れ落ちた。

 



ケニー「小さき人間よ……貴様が来たという事は……兄者はやはり……。……いや、もう分かり切っている事だ。

 …………兄者の仇……ここで晴らさせて貰う。

 ……兄者から授かった……この力で。

 ……そして貴様の命は……兄者の手向(たむけ)にするとしよう。」

 


守「(あの人型の魔狼が……ケニーさんなのか……)

 ……ケニーさん。スコットさんは亡くなる直前で俺に……貴方を止めて欲しいと仰っていました。

 ……スコットさんの想いを込めて……貴方を止めます。」

 


ケニー「……戯言を……兄者がそんな事を言う筈がない。……兄者の力が我に託されたのが何よりの証拠。

 ……小さき竜は後だ。まずは貴様から殺してやる。

 ……貴様は楽に死ねると思うなよ。生きていた事を後悔する程の激痛を味合わせ……絶望に落とし入れてから殺してやる。」



 


 今度こそ僕の命が消えようかという直前で……守さんが助けに来てくれた。僕はその場に崩れ落ち、今度は守さんと変貌したスコットさんが相対する。

 そしてこの戦いは更に激しい物となるのであった……



 





 




           

            …… 第七章 第十七話へ続く







 

 

ここまで読んで頂き、有難う御座います。

次回以降は完成次第、順次投稿する予定です。

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