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プロローグ

よくある乙女ゲームのような世界設定のお話です。

 

 御機嫌よう、皆さま。 

 この度女神様の計らいで、わたくし生まれ変わることになりましたの。虐げられる罪なき乙女を救う愛の天使として。



 とっくに目が覚めてはいましたが、わたくしは目を閉じたままじっと横たわっていました。 悪い夢でも見たのか、意識が戻った途端悲しみが押し寄せてきて目を開けるのも億劫だったのです。

 そんなわたくしに優しい声が聞こえました。


「仕方が無い子ね。狸寝入りはもうやめてそろそろ目をお開けなさいな。

 ホラ早く」


 そう言われて渋々目を開けると、そこは豪華な調度の部屋でした。

 わたくしはカウチに横たわっていて、目の前のソファーに座っている美しい女性、いえ、実際は光り輝く何かを呆然と見上げました。


 眩しくて見えないのに何故か美しい女性だと感じるのです。 きっと高貴な方に違いないと気づき、慌てて起き上って居住まいを正しました。


「そんなに固くなることは無いのよ。気楽にして、あなたは戻ったばかりなのだから。 お疲れ様、よく頑張ったわね」


 そんな風に言ってくださって胸が暖かくなりましたが、言われた言葉の意味がよく分かりません。

 首をかしげて俯くと、ついさっきまで普通に動かしていた身体がありません。

 驚いたわたくしは急に怖くなりました。何が起こったのでしょう?



「そうね、ちゃんと説明するわね。 まず、わたくしはあなた方が女神と呼ぶ者よ。

 場所によって色々な名前で呼ばれているけれど、あなた方の住む世界を創ったのはわたくしです」



「そして、あなたは一つの人生を終えて肉体を脱ぎ捨て、今は魂だけの状態なの。 また次に生まれるまでの待機中というところかしらね。

 だから探したって身体はないのよ」


 キョロキョロしたのが分かったのか女神様は可笑しそうに続けた。 


 このお方が女神様、それも創世の女神様ですのね。道理で神々しい光です。




「でね、わたくし待機中の魂の中から、時々、気になった子を呼んで話を聞いているの。はっきり思い出せないと思うけれど、あなたの人生も中々ハードだったしね。

 待っている間、気晴らしをさせてあげたくて呼んだのよ。 本とか遊び道具もたくさん用意したから、好きに過ごしていいのよ。

 ああ、身体が無くてもちゃんと動かせるから大丈夫よ。それとも、美味しいものを食べたり、着せ替えとかしてみる? 」



 そう仰るので自分の事を考えてみると、ぼんやり思い出してきました。


 わたくし名前は忘れてしまったのですが、生前は貴族の娘でしたの。 それも幼いうちからに婚約者がいる高位の家の令嬢でした。

 お相手は王族だったと思います。

 そう、その所為で物心ついてからは、勉強と習い事の日々でした。


 ですから、遊びなどと言われても何も思いつかないのです。 

 そう申し上げたら女神様が気の毒そうなお顔をなさったように感じました。

 お優しい方ですね。


 そして、最近ご自分がハマっているのだと、乙女ゲームなる物を紹介してくださいました。


 不思議な魔道具の中で絵が動いて物語が進むのです。まるで絵の人物がお芝居をしているみたいです。そして、自分の思い通りに話を進められるのです。

 どれも恋物語ですのよ、わたくし夢中になってしまいました。


 いくつかのゲームをするうちに何だか既視感を覚えました。 

 ゲームの主人公はヒロインと呼ばれるのですけれど、彼女が意中の殿方と結ばれるのを邪魔する女性が必ずいるのです。 それは主人公のクラスメイトだったり、殿方の姉妹、婚約者だったり様々です。

 最後には、その女性の妨害を乗り越えてヒロインとお相手は結ばれるのです。


 そして、その邪魔した女性はあまり幸せにはなれないようです。 けれど、その方が婚約者の場合はどうなのでしょうか? お相手の殿方も随分身勝手な話だと眉をしかめて、まるでこの女性はわたくしのようだと思ったのです。


 もしかして周りからは、こんな風に見られていたのでしょうか…… 。


 なんだかモヤモヤした気分になりしょんぼりしていると、女神様が気づいてお声がけくださいました。


「どうしたの? 」


「ああ、そうね。あなたはそういう目にあったのだったわね…… 。そうだわ、だったら、こっちの方が良いかもしれないわ。読むとスッキリするから! 」


 女神様にゲームを元にした小説を進められました。ラノベというのだそうです。

 お菓子の名前のようですわね。


 それを読むと悪役令嬢と呼ばれる妨害役とヒロインには様々なタイプがいることが解りました。

 どうやらヒロインも善良な娘ばかりではないようです。


 悪役令嬢は自ら手を下したり、取り巻きと呼ばれる者を使ったりして、教本を破るだとかドレスを汚す、仲間外れにするなどのヒロイン苛めをします。

 ひどいものになると階段からつき落としたり、暴漢に襲わせるなどという犯罪のような妨害をするのです。


 そうして最後には悪事が露見してお相手に嫌われ、婚約は破棄です。 

 それを「ざまぁ」すると呼ぶのだそうです。


 ですが、中には何も落ち度がないのに、殿方とヒロインが恋に落ち、結ばれるための犠牲になる悪役令嬢もいるのです。

 それはもはや悪役ではないのでは、と首を傾げます。



 その様に何冊もの小説を読んでいるうちに、私の生前の記憶が鮮明によみがえってきました。

 そして、まさに自分も冤罪で婚約を破棄されたのだと思い出したのです。


 確かに、わたくしも自分の婚約者に近づく少女に苦言を呈したことがありました。あの娘は淑女としてのマナーに反していましたもの、当然だと思います。

 ですが女神様に誓ってそれだけです。


 それなのに身に覚えの無い事で断罪されて家からも除籍になり、辺境の修道院に送られてしまったのです。 

 そこは貴族の女性が行くような施設ではなく、罪を犯した者が入れられるような貧しく厳しい暮しを送る場所でした。 そんな所でわたくしのような育ちの者が永らえるはずもなく、三月もしないうちに風邪をこじらせて儚くなりました。



 殿下やあの娘への恨み言をこぼし我が身の境遇を嘆きはしても、命ある間は修道女として女神様には真摯にお仕えしましたので、こうして女神様に目をかけて頂けたのでしょう。


 ラノベの中にはヒロインたちの方が()()()されて、罪のない悪役令嬢?が救われる話もありましたが、そもそも、婚約破棄や()()()されるような事が起きなければ良いのですわ。



 わたくし決心しました。

 こうして全てを思い出したからには、わたくしのように罪なく虐げられる乙女を救おうと。 


 それで女神様に希って眷属にしていただき、愛の天使として働くことになったのです。



 女神様、わたくし愛の天使の名に恥じぬよう頑張りますわ!













これならネタはあると、思い切って短編モドキの連載にしてみたけれど続くのかちょっと不安です。 

小心者なので、エタっても心が痛まないように読み切り形式にしております。


目標、五話の壁突破!



次話投稿はまた今夜22時ころに

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