The incident of music instrument
「お前、楽器な。」
突如現れた男(?)は言った。そいつは全身が蛍光ペンを白シャツの上に置いて洗濯した後みたいに光っていて、目を刺激するぎらぎらとした配色をしている。全身タイツを被ったみたいな肌に、感情の見えない、ぬいぐるみから奪って眼球に付けたような黒く、光のない丸い瞳。異質さを極めたようなその男が見ているのは自分である。
「え?」
俺は、咄嗟に聞き返した。その言葉に敵意を感じさせないように言い直した。
「いや、何ですか?いきなり。」
彼は俺の言葉に対して全く反応を示さない。
はじめから何か小さなものをみているような、もしくは何も気に留めていないような冷ややかで鋭い視線を向けた。
まばたきの回数だけが増えた。
「何か答えてくれませんか?」
......無視。
まるでこちらが何か悪事をして、それに嫉妬と少しばかりの正義感をもってそれを告発するかのような-例えば母親がいない隙にお菓子を盗み出し、盗み食いしているのを見つけた弟のようにした-顔をして俺の近くににじり寄り、無言で顔を覗き込んだ。
「あの......そろそろ行きますね?私もやることがあるので。」
背中を向けてこの異常人物から離れようとした、その次の瞬間であった。
地面が割れ、一瞬で俺は叩き落とされた。
振り向けば、窪んだ大地の縁でそいつは笑っている。
「待てよ。」
そいつは一瞬で俺に近づき、頭を触った。反射的に身震いをして後ずさりする。パチっという破裂音がして、頭頂部のあたりに何かが突き刺さった。
おそるおそる触ってみる。
何もなかった。出血もない。痛みはあったが。
何がしたいのか理解できない。
「デュフフ。」
怪物が気持ち悪い笑い声を発したように感じた。
俺は一刻もはやくこの場を再び離れようとした。しかし、身体が動かない。視界の端に何かが映った。あれは、白い刃物?闘傷法で禁じられてるはずじゃあなかったか?
あれ。
赤い風が吹き抜けた。
「ブフゥンッ!!」
俺が発したのはそんな滑稽な音。
なにかに呼吸を遮られて溜まった空気が気筒から漏れた。
視界がズレる。
奴の身体が斜めになって、黒く、丸い物体が俺から蒸気を吹いて出て行く。
唾液で濡らした舌で舐め上げられているかのようなねっとりとした感じがする。
身体が沸騰するような熱さがこみあげてくるなか、次なる刺激とともに痛みがやって来た。
何だ、なんだよ。
え、俺の人生、ここで終わり?
存在が消失していくのを自覚しながら、目の前の男を睨みつけた。
パステルカラーの男は逃げもせずに立っている。
そして、こう言い放った。
「汚い音だ。」




