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ドラゴンさんのセカンドライフ  作者: いくさや
第二章 街住まいのドラゴン
51/179

50 ドラゴンさん、扉をひらく

 50


 シアンとノクトはギルドから出ると、そのまま隣に向かった。


 隣にあったのは大きな扉だ。

 高い高い石の堀がずっと続く中で、そこだけに金属っぽい感じの板がドーンと埋められていた。

 僕が縦にふたつは並べるぐらい。

 ただの金属とは違った感じがするのは……ああ、トールマンのところで見た武器と防具と同じなんだ。

 魔力を通すと強くなるっぽい。


 そんな扉の前におそろいの鎧と槍を持った人たちがいた。

 じっと立ったまま辺りを見ていて、なんだか像みたいだ。

 あの人たちは何をしてるんだろう?


「あれがダンジョンの入り口ですよ」

『同時にダンジョンからモンスターが出てきた時のための盾でもあるわ』


 ふーん。

 あんな盾だと心細いんじゃないかなあ。

 あ、でも、上層のモンスターなら平気なのかな。


 そんな事を考えている間に、シアンが扉の前にいる人たちにあいさつする。

 真ん中にいた一番体の大きな人。

 この人は強い人なんだな。

 生命力の強さが見ただけでわかる。


「おはようございます。ダンジョンに入れてください」

「では、冒険者ならばギルドカードの提示を……Bランク冒険者? シアン? ああ、この前の時の冒険者だな。そちらの猫は君の使い魔か?」

『使い魔というよりは保護者ね』

「ふむ? まあ、いい。それで、後ろの彼は? ソロの冒険者と聞いているが、パーティメンバーか?」


 おひげの立派な男の人が僕をじろりと見つめてくる。

 僕は笑顔を返した。


「おはよう、レオン・ディーだよ! よろしくね!」

「……彼は、いや、君の連れという事は彼が、例の『裸捨て』の被害者か。しかし、道連れ兎ジョイントラビットを狩れるというなら、あの男と同じ覚醒したパターンの……? だが、そんなケースが何度もあるのか?」


 あいさつを返してくれなくて悲しい。

 何か真剣な顔で考えているからいそがしいみたいだ。

 また、今度ちゃんとあいさつしよう。


 シアンもノクトもぶつぶつ言っている男の人は放っておいて、となりにいた人に何か渡していた。

 あれは、ギルドでマリアからもらっていた紙だ。


「はい、確かに。では、よき冒険を」

「ええ。いってきます」

『あなたも大変ね。強い生きなさいな。そして、偉くなるのよ?』


 男の人は苦笑いをしてから、まだぶつぶつ言っている人の背中を押して横にどかしてくれた。

 すごい。

 あんなにされても気づかないで考えている。


「あの人はいつも通りですねぇ」

『あれでギルドナイトの副隊長なのだから、部下は苦労するでしょうね』


 言いながら歩くシアンとノクト。

 ギルドナイト。

 この人たちはそういうお仕事をしているんだ。

 それで、さっきの大きな人が二番目にえらい人でいいのかな?

 じゃあ、次に会ったら副隊長さんって呼ぼう。


 シアンが大きな扉の前に立ったところで振り返ってきた。


「さて、ここから冒険が始まりますよ」

『といっても、最初は緩やかで長い階段が続いているだけね。シアンにとって最初にして最強の難所よ』


 長い階段。

 それは大変だ。

 シアンがまた倒れてしまったらどうしよう。


「だ、大丈夫ですよ! 何度も通っているじゃないですか! 確かに最初の数回は、途中で引き返したりもしましたが……」

『ダンジョンに入れもしなかった冒険者なんて、あなたが最初で最後でしょうね』

「ふふ。そんな軟弱なわたしはすでにいません! それを今日も証明してあげましょう! さあ、門を開けてください!」


 シアンはやる気だ。

 なら、応援しないと。


 僕はシアンの隣に立って、大扉に手を当てて、そのまま扉を押して開けた。


 大きな扉だけあって重いけど、ただ重いだけ。

 魔力を通していないから簡単に動かせる。


「わあ……」


 扉の向こう側はノクトの言った通り、階段があった。

 一段一段がとても広くて、低くなっている。

 見える限りずっと続いているそれは、やがて暗い闇に落ちていく。

 まるで地面の底に続く下り坂みたいだ。


「うん。ダンジョンのにおいがする」


 吹く風にのるマナが濃い。

 それを胸いっぱいに吸い込んで、いつでも生命力と魔力にできるようにしたところで気づいた。

 なんだか、まわりがうるさくなっているけど、どうしたんだろう?

 えっと、ギルドナイトの人たちが驚いてる?


「れ、レオン? あの、これは最終防衛拠点でしてね? 守護聖壁なんて呼ばれたりする代物なんですが……」

『……いきなりやらかしてくれたわね。早く行きましょう。ここに残っていたら面倒が増えるわ。先延ばしするだけでしょうけど』


 驚いて立ったままのシアンの足をノクトが肉球でたたく。


「え、ええ。そうですね。そうしますか」

『レオン、行くわよ』

「うん。がんばるよ!」

『ほどほどにお願いするわ。本当に、切実にね』


 よくわからないけど、がんばればなんとかなるよね?


 そうして、僕たちはダンジョンへと続く階段を進み始めた。

 しばらくは何もないただの階段で、右と左の壁がだんだんと広くなっていくのと同じぐらいで地上が見えなくなった。

 それからも進んでいくと、どんどん薄暗くなっていって、壁にときどき魔導具の光がつけられていた。


「モンスターいないね」

『上層のモンスターは冒険者が狩るもの。特に入り口付近はね。それを抜けたモンスターがいたとしても、ここをもう少し進んだ先に、本当のダンジョンの入り口があって、そこにいるギルドナイトが倒すようになっているわ』


 本当の入り口?


『この大地の亀裂の底はあなたが五百年前に刻んだものでしょう? つまり、ここはまだダンジョンではないのよ』


 それもそっか。

 ダンジョンにつながっている谷みたいな感じなんだ。


「ギルドの人がいるんだね」

『ギルドナイトだけじゃないわ。一部の冒険者もいるわね。それと、商人の連中。あとは農場とか牧場の連中も』


 うん?

 ギルドナイトはいい。

 冒険者もわかる。

 商人も……いい、のかな?

 うん。

 ギルドナイトや冒険者の人がほしい物を買いたい時、この長い階段を上がって戻るのは大変だから、商人もいいかもしれない。


 だけど、農場と牧場ってなに?

 ううん、意味は知っている。

 この前、シアンとノクトから教えてもらった。


「農場とか牧場って、たしか、ご飯の元を作る所だよね?」

『まあ、そうね』


 えっと、ダンジョンで食べるご飯をダンジョンの近くで作っている、でいいのかな?


『違うわ。ダンジョン産の食材なんて高級品、余程の高ランク冒険者でもなければ手を出せないもの』

「高級品?」

『どこかの偉い学者が言うには、『芳醇なマナを含んだ食材は美味であり、健康長寿に効果が高い』のだとか。眉唾物の学説だけどね。信じる愚か者がいるのよ』


 よくわからない。

 でも、おいしいというのは大切だ。


「ちょっと見ていってもいい?」

『通る時に嫌でも目に付くわよ。それより、この辺りで一度休憩ね。シアンが限界よ』


 そういえば、シアンは僕たちの後ろをずっと黙ったまま歩いていた。

 振り帰ると、ちょうどシアンが座り込んでしまうところだった。


「シアン、だいじょうぶ?」

「ふ、ふふ、いい、でしょう。今回は、これぐらいで、ゆるしてあげます」

『ダンジョンが遠いわね……』


 ぜえぜえと荒い息をしているシアンの背中をなでながら、僕はこの先にあるおいしい食べ物が気になって仕方なかった。

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