49 ドラゴンさん、二度目のギルド
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「おい。また、来いよ。絶対に来いよ。いいな? 絶対だかんな」
何度も言ってくるトールマン。
そのベルトをつかんだ妹天使ちゃんが手を振るのに返しながら、僕はうなずいた。
『まったく。あなたの規格外さを読み間違えたわ』
絶対に頭の上から下りようとしないノクトがため息をついている。
僕は腰に吊るしてもらった剣の鞘を見下ろした。
「ごめんね。どれがいいかはわかったんだけど……」
武器はダメだった。
ううん。
どの武器がいい武器なのかはわかった。
剣とか槍とか斧とかハンマーとか弓矢とかいろんな中に、いくつか違うのが入っていたのはわかったんだけどね。
「全部、折れちゃったね……」
「いやあ、試し斬りに剣が耐えられないとは思いませんでしたよ」
しみじみとつぶやくシアン。
そう、振ったら折れちゃったんだよね。
剣も、人形も、いっしょに。
『初心者のレオンがちゃんと剣を使えるとは思わなかったけど、それも生命力の力づくでなんとかできると思ったのよ』
「剣がダメでもハンマーなら大丈夫だと考えていた時期がわたしにもありました」
当たりの武器は全部試した。
けど、全部結果も同じ。
折れた。
ぽっきりと。
トールマンが絶対に折れるはずがないって言ってくれたのも。
それがトールマンはガマンできなかったらしい。
今テントにある中で一番頑丈な剣を売ってくれて、次に僕が来るまでにもっと頑丈なのを用意してくれるって約束してくれた。
「危なかったですねえ。弁償しろなんて言われるんじゃないかと思ったら、わたしもう」
『試し切りを提案したのがトールマンで助かったわ。まあ、レオンは銀貨を置いていったわけだけど、十枚もね』
たしたしと前足でおでこを叩かれる。
トールマンは壊しちゃった武器のお金はいいって言ったけど、あのままじゃ困ってしまうみたいだから、ノクトに頼んで出してもらった。
最後までトールマンにいらないって断られたけど、シアンが次の武器の代金って言ったら受け取ってくれたから安心だ。
『その剣は折らないように気をつけなさいな』
「うん。気を付ける」
力加減を覚えてみようと思う。
思いっきり殴るのよりずっと難しそうだけど、練習すればきっとできる。
「大丈夫ですよ。今回はわたしが全て倒してしまいますからね! レオンは近づくモンスターを牽制してくれれば十分です!」
シアンが杖を持ち上げて自信たっぷりに笑っている。
そうだった。
今日はシアンを守るのが一番で、モンスターを倒すのは僕じゃない。
「うん。シアンは僕が守るよ」
「ええ、頼りにしていますよ、レオン」
嬉しいな。
誰かを守るっていうのは五百年前と同じなのに、それが友達だっていうのも嬉しいし、僕を頼ってくれるのも嬉しい。
嬉しすぎて生命力と魔力があふれてしまいそうだ。
『はりきりすぎてダンジョンを踏破しそうな勢いね』
「レオンの場合はそれが冗談にならないのが怖いところですね」
気合を入れなおしている間にギルドについていた。
この前より早い時間だから、冒険者の人が出たり入ったりしていそがしそうだ。
開けたままの扉から奥を見ると、受付のカウンターと依頼ボードの辺りには人がたくさんで、素材の買い取り窓口とか食堂はさびしそう。
「あらー、おはようー。シアンさんもう起きれるようになったのねー」
「マリア、おはようございます。わたしは成長期ですからね! 生命力もどんどん強くなっていますから、以前のわたしとは違いますよ?」
「そうねー。確かに以前は一日で筋肉痛になっていたけどー、今回は三日で筋肉痛だからねー。回復も半日ぐらい早いんじゃないかなー?」
「わかっていますね、マリア。その通りです!」
前はもっと弱かったんだ、シアン。
僕と会う前まで無事でいてくれて本当によかった。
「シアン、絶対に、絶対に僕から離れちゃいやだよ」
「も、もう、レオンは心配性ですね。安心してください。わたしがみんなやっつけてあげますからね!」
やっつけるより身を守ってほしいんだけど、守るのは僕が頑張ればいいんだね。
さっきよりも気合が入る。
こういうのを使命感、って言うのかもしれない。
「相変わらずねー。あー、本当に私も恋人ほしいなー」
『本音がダダ漏れね。それより、ダンジョンに入るわ。手続きをお願いできるかしら?』
「早いですねー。ではー、あちらでー」
淡々と話を進めていくノクトに、マリアはカウンターの方に僕たちを案内してくれた。
歩いていると、いろんな人が僕たちを見てくるのがわかったけど、どうかしたんだろうか?
僕とシアンとノクト。
同じぐらい注目されて、ちょっとてれてしまう。
「今回、探索の目的はありますかー?」
『シアンのリハビリと、レオンとのチームワークの確認よ。そうそう。レオン、冒険者の仕事をすることになったから、そちらの手続きも頼むわ』
驚いたマリアが僕を見てくるからうなずいた。
何度も冒険者になろうと誘ってくれたマリアだから、僕が急に決めたからびっくりしたみたいだ。
「私は嬉しいけどー、いいのー? レオン君ってギルマス嫌いでしょー?」
「うん。あの人はやだ」
説明はできないけど、なんか嫌だ。
でも、冒険者をしながらいろいろと勉強して、お金を貯めて、人間の生活をするってもう決めた。
嫌なのをガマンするのは慣れているから平気だ。
「でも、がんばるよ」
「そっかー。じゃあー、ダンジョンに入る方の手続きをするからー、その間にこの書類に……シアンさんの代筆でいいー?」
文字は習い始めているけど、まだ自分の名前しか書けない。
テーブルに出された紙にはいろいろと書くところがあるみたいで、名前だけじゃないみたいだった。
ちょっと残念に思っていると、シアンがペンと紙を渡してくれた。
「そうですね。では、レオン。ここに名前だけ書いてみましょう。そう、そうです。ゆっくりでいいですよ。あせらないで、しっかり書けばいいんです。ふふ、上手ですね」
なんとか書ききって、シアンを見るとほめてくれた。
自分の名前があって、それを声に出したり、文字で書いたりするのは楽しい。
後の部分もシアンはひとつひとつ説明しながら書いていってくれた。
年齢とか、生まれた場所とか、得意な事とかを聞かれているみたいだけど、僕だとなんて書いたらいいかもわからない。
「こんなところですかね。マリアさん、どうですか?」
「ばっちりよー。ギルドカードは帰ってくるまでに作っておくわねー。それとー、レオン君の依頼の途中経過もー」
紙を二回見直して、マリアは新しい紙をシアンの前に出してきた。
「じゃあ、こっちはシアンさんのダンジョン探索申請ねー。予定は日帰りでー、上層の浅いところでいいかしらー?」
『いいわ。何か依頼はある?』
「上層の浅い位置だと少ないですねー。あってもー、そういう簡単な依頼は初心者に回してほしいですー。ただ、今は命石も魔石も五等級とか四等級みたいな低ランクは沢山ですからー、素材に気を使うといいかもしれませんねー。それも食肉部位じゃなくてー、霊薬とか魔導具に使えると完璧ですー」
ちらりと見られたから小さく手を振り返した。
マリアは困ったみたいに笑っているけど、何か失敗してしまっただろうか?
「わかってませんねー」
『わかるわけないわね。ともあれ、情報は感謝するわ。シアン、倒し方に気をつけなさいな』
「ええ。それぐらい天才のわたしにはちょうどいい訓練ですからね」
僕だけわかっていないみたいでさびしい。
肩を落としていると椅子から下りたシアンが背中を叩いてくる。
「ほら、レオン。行きますよ。わたしたちの初めてのダンジョン探索、しっかり成功させましょう!」
「うん! 頑張るよ!」
落ち込んでいる場合じゃない。
さあ、ダンジョンに入り口から入るのは初めてだ。




