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ドラゴンさんのセカンドライフ  作者: いくさや
第四章 ドラゴンをやめるドラゴン
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117 ドラゴンさん、新生活を話し合う

 117


 みんなの部屋も決まって、女将さんのくれたご飯も食べて、僕たちは広いお部屋に集まっていた。

 まんなかにテーブルとソファーがあって、いろいろとキラキラした物がいっぱいある。

 僕たちだけだと広すぎるけど、他の部屋も同じだからどこでもいっしょっぽい。


「さて、これからの話をしましょうか」


 そう言って、シアンがみんなを見回した。

 僕とシアン、トントロとピートロがソファーに向かい合って座って、テーブルの上にノクトが乗っている。


「僕は……お散歩かなあ」

「オイラ、新しい魔導装備、作るっす!」

「あの、わたくしも使った霊薬を補充したいです。それにグラマン様から頂いたレシピの試作も……」

「いえ、話したいのは今日の予定ではなくてですね? あ、でも、わたしもお散歩の気分ではありますから、レオンがお願いするなら一緒に行ってあげてもいいですよ?」


 一人より二人の方がきっと楽しい。


「うん。シアン、お願い。僕といっしょにお出かけしよ?」

「く、くふ、え、ええ! お願いされたら仕方ありませんね! わたしは優しいですから、レオンのお願いを叶えてあげましょう!」

『おバカさんが揃うと、もう……』


 ペシンとノクトがしっぽでテーブルを叩く。

 それだけでみんなが静かになった。


『おバカは程々になさいな。これからの話はダンジョン攻略の予定と、ここで生活するにあたっての確認よ。特にレオンとトントロ。あなたたちはルールをしっかり覚えなさい』


 僕とトントロはこくこくとうなずく。

 そういえば、アルトに会ってしまったのも僕が買い物に行った時だった。

 次にお出かけした時に失敗しないようにしないと。

 そんなふうに考えていると、シアンが話し始めた。


「まず、ダンジョン攻略ですが、基本的に十日を基準にしようと思います。この十日間はダンジョンの隠れ家から中層の攻略に集中しましょう」

『中層の攻略に掛かる一般的な時間が五日と言われているのだから妥当でしょうね。まあ、うちの場合だと戦力過多だからもっと短縮できかもしれないけど』


 ノクトが僕を見るから手を振った。

 どうしてため息をつくんだろう?


「五日……それだと中層で野営になるのでしょうか?」

「そうですね。川、滝、雪の部屋と来ましたが、日帰りで行けるのはここが限度でしょうから。次の部屋に入ればもう引き返したところで時刻的には夜になってしまいます」

『どの道、中層の攻略に野営は必須よ。最短ルートが見つかれば話は別かもしれないけど』


 下層に行く道かあ。

 うーんと、あれかな?


「たぶん、わかるよ?」

「はい?」

『レオン……あなたはまた急に何を』


 言ったら、おどろかれて、あきれられてしまった。


「わかるって、下層への道がですよね? どうしてですか?」

「ほら、この前。トントロを探した時に調べたから。ドラゴンっぽくして」


 探知。

 ドラゴンの形をした魔力で中層を探した。

 最初の方はドラゴンブレスでできた穴を通っただけだったけど、途中からは壊れなかった扉を使ったんだ。

 だから、その時に見たのを覚えている。


「ドラゴンっぽく……探した……え!? あのドラゴンって探知魔導だったんですか!?」

『ドラゴンが飛んでいったと思ったらいきなり異空間渡りしたものね。そう。あれは探知の魔導……いえ、魔法だったのね』


 シアンとノクトはすぐにわかってくれた。

 さすが頭がいい。

 わかってもらえてうれしくて、僕は続ける。


「全部はわからないけど、通った場所はわかるよ。たぶん。中層のボス部屋もわかる」

「そういえば、アルト様が雪の部屋は中層の奥にも繋がっているとおっしゃっていましたね。そう考えると、途中でアニキ様が見つけていてもおかしくないのかもしれません」


 そうそう。

 あの時はトントロを見つけるのが一番だったから雪の部屋だけを探していたけど、そこからちょっと扉を通った先にボス部屋があったんだ。

 その扉は変な場所に会ったけど。


「なんだか、わたしの探知魔導が虚しくなってきたのですが……」

『張り合うだけ無駄よ。人間は人間らしくできる事で努力なさい』


 あれ、急にシアンの元気がなくなっちゃった。

 心配で手をにぎると、シアンはびっくりして、それから力が抜けた感じで笑ってくれた。


「ですね。嫉妬しても仕方ありません。わたしにできる事があってレオンにできる事があるし、その逆もある。それだけですね」

『前向きにいなさい。それがあなたの美徳よ。さて、いきなり攻略の目途が立ったわけだけど、どの道あなたたちの目的は強くなる事なのだから、やる事は変わらないわ。中層で戦闘しながら攻略。ボス部屋はそれからよ』

「でしたら、最短ルートとは言わずに遠回りでもいいかもしれませんね」

「うっす! オイラ、たたかうっす!」


 みんな、強くなりたいって気持ちがいっぱいだ。

 次に『峻厳』さんに会うのが楽しみだ。


「では、ダンジョン攻略は三日後の予定で。破壊された中層が元に戻っていれば探索開始です。それまでに各人で支度を。パーティ全体の物資はわたしとノクトで揃えておきます」

『ふふ。まずは冒険者ギルドから資金を頂くとしましょうか』

「ええ。もちろん、余った資金はパーティで流用で。ふふ。節約の腕が鳴ります」


 うん。

 シアンとノクトもやる気だ。

 もしかしたら、強くなるのよりもやる気かもしれない。

 なんだか、とっても強そう。


「支度。わたくしはやっぱり霊薬ですね」

「ええ。ピートロの霊薬があると助かります。体力面での心配がないのはありがたいですね」


 ピートロの霊薬を一番使うのがシアンだ。

 あんなによわよわだったシアンだけど、今はもうそんなにつかれて歩けなくなったりしなくなったもんね。


「アネゴ様……はい! わたくし、頑張ります! グラマン様のレシピには魔力回復促進効果があるみたいですから、期待してください!」

「ええ。楽しみにしていますね。時間があるなら魔導の特訓もしましょうか」

「はい! 是非!」


 シアンとピートロが楽しそうだ。

 どっちも魔導を使うからそっちのお話もできて、仲良しなんだね。

 ……あれ?

 シアンがアルトとなかよししていたら、胸がムカムカしたんだけどなあ。

 ピートロとなかよししてもへいきみたいだ。


 ふしぎに思っていると、トントロがテーブルに乗り出してきた。


「オイラは魔導装備を作るっす! アニキ! アニキの服を作るっす! 今度は失敗しないっす!」

「うん。お願い」


『峻厳』さんとの戦いで服はボロボロになっちゃった。

 無事だったのは魔導装備だったドラゴンシャフトとコートだけ。

 コートも破けたりしたんだけど、いつの間にか穴がなくなっちゃったんだよなあ。

 かってに治るなんてすごいね。


「すごいの作るっす!」


 トントロはやる気だ。


 最初の服はぎゅーってなって大変だった。

 トントロの初めての魔導装備だからあれはまだ持っているけど、着るのはダメなんだよね。

 でも、すごいがんじょうだったから、あれがあればもう破けないと思う。


『やる気なのはいい事だけど、あなたたちルールを忘れないのよ。街に出る時はエルグラド家の目が届かない場所だけ。それと顔を隠す事。特にトントロとピートロは目立つのだから、その辺りは気を使いなさい』

「ですね。エルグラド家に直接見つからなくても、冒険者でも信用できない方の目に着くのは危険ですからね。わたしは帽子と眼鏡でもつければ気づかれないですかねえ」


 そっか。

 弓聖さんたちに見つからないようにするんだっけ。

 僕はコートの後ろの方にある布をかぶればいいかな。

 そうしたら顔が見えないし。

 トントロとピートロは……ちょっとどうだろう?


『変装では隠し切れないかもしれないわね』


 初めて街に出た時も二匹は『迷宮の狭間亭』でずっとお留守番だった。

 外に出れないのはかわいそうだ。


「オイラ、出れないっす?」

「仕方ない、ですね……。霊薬の素材を自分で見たかったのですが……」


 二匹とも残念そうだ。

 どうにかしてあげたい。

 けど、僕にはいい考えが浮かばない。


 そうしていたら、ドンドンドンとお家の扉がたたかれる音が聞こえた。

 シアンが耳をピンと立てて、それからすぐにぺたりと寝かせる。


『お客様のようね。レオン、入れてあげなさいな』

「うん。行ってくる」


 この感じ、知っている。

 僕が扉を開けると、そこにはガルズのおじさんたちがいた。


「よう! 引っ越し祝い、持ってきたぜ!」

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