107 ドラゴンさん、マネをする
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思い出した。
なんで、忘れちゃったんだ。
僕は元ドラゴンの人間。
レオン・ディーだ。
シアンがつけてくれた名前がある。
「ちっ、余計な真似を。オレの試練から逃げ出してきたか?」
苦い顔の『峻厳』さん。
その枯れ枝の翼がシアンたちに向けられる。
シアンたちはすっかりつかれてしまっていた。
とっても大変だったのがわかる。
今のままだとちっちゃな爆発でも殺されてしまう。
「させない」
「ちっ」
翼の前に飛ぶ。
もっと苦い顔になると、今度はパッと行こうとするけどそれもダメだ。
ドラゴンの左腕で魔力の流れを切り裂く。
そうすれば、もうパッとはいけないはず。
やりたいことができなかったせいで『峻厳』さんがにらんできた。
「貴様、瞬間移動まで止めるか!」
「シアンたちは僕が守る」
トントロがいないのも気になる。
ピートロが泣いて、助けてって言っていた。
早く助けに行ってあげないと。
そのために『峻厳』さんを倒さないといけない。
僕はマナを集めて、生命力と魔力に転換する。
だいぶドラゴンになりかけているから、力がとってもいっぱいだ。
けど、ちょっと頭がぼーってなるなあ。
そんな僕を見て『峻厳』さんはうれしそうに笑い始めた。
「まあ、いい。どの道、貴様がオレを倒したければドラゴンに戻るしかないんだ」
そっか。
ドラゴンっぽくなると、人間の事を忘れちゃうんだ。
それはこまる。
でも、ドラゴンにならないと『峻厳』さんは倒せないから……やっぱり、こまってしまう。
……本当にそうかな?
「うん。そうじゃない。ドラゴンじゃなくてもいいんだ」
「何を言っている? 貴様の埒外の力をドラゴンでなくしてどう使うと言う」
なんか言われているけど、知らない。
今は考える時間だ。
『峻厳』さんが攻撃してくるのを、左手と翼で払いながら考える。
大切なのは僕が僕のままで力を使う事。
ドラゴンにならなくても、強い力を使えれば何も心配ない。
問題は僕の中にある力だ。
なんだかよくわからないけど、昔の僕よりもいっぱい力を持っている感じがする。
そのせいで人間のままだとうまくいかない。
体の方がダメになってしまう。
だから、耐えられるにはドラゴンになればいいんだけど、そうすると人間じゃなくなってしまう。
でも、『峻厳』さんみたいに強い人を倒すにはこの力がいるよね?
どうする?
どうしたら、この力を使える?
「うん。できる」
そんなの、かんたんだ。
こまったら、できる人のマネをすればいい。
剣をガルドのおじさんから教えてもらったみたいに。
体の動かし方をマリアから教えてもらったみたいに。
ちょうど、できる人がすぐそこにいるんだから、それをマネしてしまえばいい。
『峻厳』さんの枯れ枝の翼。
えっと、なんて言っていたっけ?
たしか……。
「そうだ。【拒絶】・【残酷】・【貪欲】?」
そんな名前だった。
デミセフィラとか言っていたけど、あれは『峻厳』さんの中にある力が形になっているんだと思う。
この力、僕のとはちがう。
ちがっているけど、感じが近いっぽい。
これはなんて呼ぶんだろう?
「うーんと、えーっと」
「おい、まさか……嘘だろう?」
おどろいている『峻厳』さん。
びっくりして、それからいっぱい攻撃してくる。
ジャマされても考えるのはやめない。
そうやって攻撃されながら考えていると、なんとなく頭に浮かんでくる言葉があった。
「……【知恵】・【慈悲】・【勝利】」
右側。
そっちにみっつ。
葉っぱの生えた枝ができる。
前にあるとジャマだなあ。
翼にくっつければ……からみついてジャマ。
なら、もう翼にならべて、枝じゃなくて……ドラゴンシャフトみたいな感じでいいや。
うん。できた。
木のような、石のような、金属のような、ふしぎな棒――というか、剣?
三本のそれはふんわりと空に浮かんでいて、ドラゴンの翼に合わせていっしょに動く。
「セフィラを直感だけで具現化して、支配するだと? 名前すら知らないだろうに……出鱈目にも、限度があるだろ」
びっくりの『峻厳』さんは攻撃をやめてくれた。
今の間にのこりのもやってしまっちゃえ。
「【理解】・【峻厳】・【栄光】」
一度やったから、二回目はもっとかんたん。
左側の翼にも三本の剣ができて、同じように動く。
なんだか、とってもいい感じだ。
ドラゴンっぽくなくなっても力が使えそう。
しっぽとか、角とか、腕とか足とか。
翼以外をなくしてから、ドラゴンシャフトに魔力を流してみる。
魔闘法――竜人撃:始光竜『辿り着く星の光』
ほら、できた。
まっしろに光る魔力の剣ができあがる。
人間のままだったらまた血を吐いたりしちゃっていたけど、今はへいき。
それどころか、とてもかんたんにやりたい事ができるし、今までよりも強い感じになっている。
「魂魄破壊――いや、最早これは消滅、か。 は、はは! 容赦がないな、ドラゴン」
「レオンだよ」
まちがえちゃダメだ。
ドラゴンじゃない。
僕はもうレオンだ。
『峻厳』さんに近づく。
あ、これもマネしちゃおう。
ええっと、魔力を先に流して、あっちとこっちをつなげ――られない。
なんだか、とっても厚い壁みたいなのがある。
むう。
なら、こわしちゃえ。
翼を、セフィラを羽ばたかせる
魔闘法――竜人撃:砕嵐竜『異空を超える翼』
バキンと空がこわれる音がした。
景色にヒビができて、こわれて、あっちとこっちがいっしょになる。
そこに飛び込めば、もう『峻厳』さんは目の前だ。
「異空間渡りか!」
びっくりしても『峻厳』さんは炎を出してきた。
まわり全部を燃やそうとする炎。
炎の後には爆発がくるのもわかる。
あと、その間にパッと行こうとしていて、はなれてから炎の槍を飛ばすつもりなんだね。
何をしようとしているのかわかるよ。
魔力の準備を見ればいいんだね。
「だから、こうだ」
魔闘法――竜人撃:圧海竜『底なしの黒い箱』
炎も爆発もさせない。
小さく、小さく、小さくつぶしてしまえ。
数が多いし、広い場所だけどへいきだ。
翼を広げたら、黒い箱がいっぱいできたから。
まとめて圧し潰す。
「消え――」
「てい」
炎も爆発もなくなっておどろいたところに、光の剣を落とした。
枯れ枝の翼がジャマをしてくる。
前はあれに止められて、胸に穴を空けられちゃったっけ。
でも、もうだいじょうぶ。
ストン、と剣が通った。
枯れ枝の翼がまとめてみっつ、切れて落ちる。
『峻厳』さんは逃げた。
おどろきながら、パッと飛んだんだ。
「ぐっ、あぁ!?」
頭の上から『峻厳』さんの悲鳴。
見上げると、炎の槍を持った『峻厳』さんだ。
その腕や足やおなかにセフィラの剣が刺さっている。
「先読み、まで!」
そこに行くのはわかっていたからもう攻撃していた。
翼から六本のセフィラの剣を飛ばしておいたのが、ちゃんと『峻厳』さんに当たったみたいだ。
翼を振れば、それだけで剣は戻ってくる。
「これで、終わりだよ」
いっしょに落ちてくる『峻厳』さん。
その目の前から消える。
前にもやってみた自然との一体化だ。
ここはもうただの箱みたいな部屋になっちゃったから、まぎれさせるのが少なくてやりやすい。
そうやってから、今度はそっと翼を振るう。
魔闘法――竜人撃:砕嵐竜『異空を超える翼』
さっきよりもいい感じに壁をこわして、パッと飛んでみる。
飛んだ先は落ちている『峻厳』さんの上。
こっちにぜんぜん気づいていない。
「えい」
「――ここまでか」
もう一度、光の剣を落とす。
光の剣が枯れ枝の翼を根元から切り落として、『峻厳』さんの肩に入ったところで――急に消えてしまった。
僕が消したんじゃない。
『峻厳』さんが飛んだんだ。
地面に下りて、まわりを見てみる。
魔力の流れとか、生命力の気配とか、そんなのを探してみるけど、どこにも『峻厳』さんはいない。
「……逃げた?」
みたいだ。
でも、それならそれでいい。
もっと大切な事がある。
僕はシアンたちの所へパッと飛んでいく。
「アニキ様!」
「トントロはどこ!?」
トントロを助けに行くんだ。




