準備
今、生徒会は忙しい。それもこれも今度開催される体育大会の準備のためだ。
俺も生徒会の一員と言うことで色々と仕事をしている。ちなみに俺は今、各クラスから集められた出場選手が記入されたシートを間違いが無いことを確認してから出場種目別に仕分けしている。単純作業だが数が多く、乱雑に集められているので面倒臭い事この上ない。
他の人は大会で使う道具や会場の確認に向かっていたり、パソコンでカタカタと何かを入力している。
「ふぅ、みんな一旦止めて休憩にしよう」
生徒会長が声を掛けて休憩を促す。
俺もその声を聞き、一旦作業を中断して腕を休める。さすがに数が多く肩が疲れてきたのでぐるぐると肩を回してほぐしていると、俺の前に紅茶が置かれる。見ると書記をやっている先輩が入れてくれたようだ。
「ありがとうございます」
俺がお礼を言うと、先輩は気にしないでみんなの分も入れてるからと言い、少し雑談した後自分の席に戻っていった。入れて貰った紅茶を飲んでいると、生徒会長が声を掛けてきた。
「久しぶりに忙しい生徒会だが、大丈夫かい?」
「あっ、全然大丈夫です。仕分けしているだけですし……」
「うん、面倒臭い仕事だけどね」
それは間違いない……。
「まぁ、当日の運営は教師陣に任せる事になるからその辺は楽だけどね。その為には前準備をしっかりとしないとね」
「そうですね。でもこれの体育大会って学年事でやる日が違うんですよね?」
「そうだね、各学年三日間ずつ日程が組まれてる。さすがにグラウンドや体育館が多くあるからと言っても全学年で一斉にやるのは無理だから」
「でも、コレってポイントで順位が決まるんですよね? どういう風に決めるんですか?」
「ん? ルールは聞いてないのか?」
「あー、女子はかなり盛り上がってますけど、男子は順位なんか関係ありませんから詳しく知らないんですよ」
「ああ、なるほど……」
生徒会長は”確かに男子は余り関係がないな”と呟いていた。
「まぁ、男子の事は今後要改善だな。えーと、順位の決め方だったな? 各種目はトーナメント制になっていてその順位で決まると言う簡単な物だ」
トーナメントかさすがに総当たりじゃ時間が掛かりすぎるからな……。
「当然男子の順位は関係しない。元々女子の人数は上位クラスと下位のクラスで違うから、下位のクラスはその分多くエントリーできるからチャンスも広がるようにできている」
「おおっ、下位のクラスは頑張りそうだ……、……んっ? でもトーナメントだと最初の方で負けたチームは暇になりません?」
「なる。だがその場合は他の試合を観戦するか、または大講義室で特別補講が開かれるからそれを受講するかのどちらかだな」
「補講……、それって受ける人いるんですか?」
「ああ、毎年大人気だぞ。みんな成績をあげて上のクラスに行こうと努力してるからな」
……ああ、なるほどいい男を手に入れる為にする努力は欠かさないという事か。
その姿勢は素晴らしいと讃えたい、動力源は欲望だけど!
「そう言えば、秦野君は何に出場するんだ? 男子は順位は関係ないが参加はしないといけないだろ?」
「え? ああ、俺はバレーボールですね」
「バレーボールか、秦野君の出る時は観戦者が多そうだな……」
あっ、やっぱり多そうですか? 恥をかかないように頑張ろう……。
そんな生徒会での一時から数日たったある日、俺が登校すると教室の前がなんだか騒がしい。
教室の前に大勢の生徒が集まり人垣ができていた。その人垣の中心では誰かが言い争いをしているみたいだ。朝っぱらから元気なことである。何にせよ教室に入らないといけないので生徒が集まっている場所に近づいて行く。そうすると当然の事ながら集まっている生徒達が言い争う声が聞こえてくる。
「早く自分の教室に帰らないと、授業に遅れるよ」
聞こえてきた声はよく知っている詩乃さんの声だった。
詩乃さんが人と言い争うなんて珍しいなと思いながら、人垣の間から中心を見てみるとそこには詩乃さんを中心とした一組と、……なんかでっかい、と言って良いのか……、身長が百八十ぐらいありそうな人達がいる集団がお互いに見合っていた。そして集団の一番前にいる人が少女が詩乃さんの声に答える。
「まだ、時間があるから大丈夫だよ。そんなに邪険にしなくても良いじゃないか? 私たちはただ一週間ばかりお世話になる教室を見に来ただけなんだから」
ん、一週間お世話になる……?
「もう優勝した気でいるのかな? それは気が早いと思うよ」
「心配してくれなくても大丈夫だよ。ちゃんと優勝するから……」
詩乃さんとその少女が睨み合う。
ああ、なるほど。この人達はスポーツ特待生のクラスの子達か……、さながら宣戦布告をしに来たのかな?
しかし予想以上に盛り上がる行事らしい、生徒達のやる気がものすごい。
「へぇ~、自信満々みたいだけど油断してると足下救われるよ」
「別に油断なんかしてないけど? ただ頭でっかちには負けるつもりは無いだけだから」
「……脳筋」
「……ガリ勉」
「大胸筋!」
「脂肪過多!」
「過多じゃないし! バランス良いし!?」
「こっちだってちゃんと柔らかいわよ!!」
……なんて醜い争いだろうか。
しばらくこんな言い争いをした後、スポーツ特待生の一団は悠然と去っていった。
「……う~~~」
うん? なにやら詩乃さんが呻いている。
「う~~むかつく~! もう勝った気でいるなんて目に物みせてやる! みんな! あいつらやっつけてギャフンと言わせよう!」
一組の女子はその言葉を聞き闘志を漲らせ、みんなでエイエイオーと声を挙げていた。
今日もみんなは元気一杯だ。




