脱出
どうやら家のメイドさんはちょっと凄いっぽい。
……気配ってそんなハッキリとわかるもんなのか? バトル漫画出身だったりするのか。
しかしどうしするか……、幸いこっちに来る様子は今のところなさそうだけど……。
俺はチラリと舞澄さんを見てみる。
……なんか悟りきった顔をしているんだが?
「琥珀さん」
「な、何かな?」
「今日のことは冥途の土産として絶対に忘れませんから……」
「死ぬ覚悟決めないでくれます?」
「だってだって見つかったら確実にあの変な人に殺られます!」
家のメイドさんはそこまでの危険人物じゃないよ! ……多分。
「……今から取る選択肢は四つある」
俺は舞澄さんにこれからどう言う行動をとるのか選択を提示しする。
「一つは俺が残って大人達の気を引いている間に舞澄さんがここを出る」
俺の言葉に舞澄さんは静かに頷く。
「二つ目、舞澄さんが残り俺が大人達にばれないようにここを出る。舞澄さんは大人達に合流してもしなくても良いししなくても良い。でも合流した後は俺と居たと言うことはばれてはいけない」
俺は続けて三つ目を提示する。
「三つ目は大人達が出るまで出くわさないように静かにここに居る」
そして最後にと前置きをして四つ目を言う。
「四つ目は二人でばれないようにここを出る」
そして俺はどうする? と舞澄さんに聞く。舞澄さんは緊張した面持ちでどうするかを考えているようだ。
……しかしなんで風呂から出るだけでこんな緊迫感を出しているんだろうか俺たちは。
まるで監禁されている場所からの脱出を考えている様な気分になってくる。……景色の良い温泉に入っているだけなのに。
舞澄さんは目を閉じて考え込んでいる。そして少ししてから目を開けてこちらを見つめてきた。
どうやら考えが固まったらしいとても強い意志を感じる……。
「決まった?」
「うん、四つ目で……」
四つ目二人で脱出するか……。
「理由を聞いても良い?」
舞澄さんはこくりと頷き理由を話し出す。
「一つ目は琥珀さんが残る場合はあの人が一緒に居た人を探し出しそう……、そして私を見つけそう……、なんとなくだけど……」
……確かにマリアなら見つけるかも知れない。あの人ちょっとアレだからな。
「二つ目は私だけ残ったら絶対にばれると思うから無し。三つ目はそろそろ逆上せそうだし、それこそ見つかったらその時点でTHEEND」
舞澄さんを一人にしたら速攻でばれそうな気がする。……いや、理由は無いけど。
それにマリアは気配で二人が至近距離で居ることがわかってるから、一人だけ離れたら気にするかも知れないしな。
「だから四つ目、私は二人で生きてここから出たい」
舞澄さんは意志の籠もった瞳で俺を見る。何度も言うが風呂から出るだけである。
「じゃ、じゃあ二人で出ようか?」
「うん、無事に出れたらフルーツジュースで乾杯しようね!」
でもいくら視界に入らないようにしても気配で察知されてるから出ることはばれているんだけど、でもだからことマリアは視線を向けてこないと思う。無地に脱出するにはおかしな行動を取らない事と他の大人達に気づかれないようにする事だけである。
俺はこの事を舞澄さんに伝えると彼女はわかったと言い頷いた。
……でもこの人大丈夫かな? ここぞと言うときに何かしでかしそうな気がする人だからな……。
心の中でそう思いつつも、ここは行動を起こさないといけない場面である。俺と舞澄さんは大人達が入口の方と逆を向いていることを確認して静かに、それでいて素早く移動を開始した。
俺の心配は余所に移動は順調だった。大人達は入口の方を向くこと無くゆったりとお湯に浸かっている。しかし入口のドアへたどり着いた時にそれは起こった。
ドアへ着いたことで安心したのか舞澄さんが足を滑らしたのだ。
ここでもし大きな音をたてたら大人達は絶対にこちらを向いてしまう。
俺は咄嗟に舞澄さんの腰を抱き、引き寄せる! その勢いで舞澄さんの身体を覆っていたタオルは外れ、身体と身体がピトリとくっつく。
顔は今にもキスしそうな位に近づき、俺の眼と舞澄さんの眼が見つめ会う。舞澄さんの身体からうるさい位に心臓の音が聞こえてくる。そして舞澄さんの瞼が下がり静かに唇を出してくる。
「んっ……」
俺はそんな舞澄さんの顔に手を添え、静かに……
アイアンクローをした。
こいつばれたら不味いのは自分だって忘れてんじゃないか?
どうやら今の状況を忘れてはいなかったらしく、舞澄さんは俺のアイアンクローをどうにか声を出さずに耐えていた。
俺はそのまま舞澄さんを連れて行き、どうにかばれずに浴場を脱出する事ができた。脱衣場に着きようやく舞澄さんをアイアンクローから解き放った。
ようやく解放された舞澄さんは崩れ落ち、さめざめと泣いていた。
「うぅ、ひどい……」
「ひどいのは舞澄さんの頭の中だよ。何であそこでああ言う反応が来るかな? ばれたらヤバイのに」
「だってだって……」
「まぁ良いや、早く服着てフルーツジュース飲も」
「フルーツジュース……、うん……」
フルーツジュースと言う言葉で何とか立ち直った舞澄さんは、トタトタと自分の浴衣が置いてある場所に向かう。……ちょろい。
俺はそれを見届け、ふぅと一つ息を吐き自分も浴衣を置いてある場所に向かう。
……何でだろう風呂入っただけなのに疲れた。
その後、二人でフルーツジュースを飲みながら舞澄さんと談笑し、その後戻って来た大人達と一緒に朝食を食べ宿を後にした。
こうして俺の旅行は終わった。改めて振り替えると肌色率は高かったがそれ以上に他のインパクトが強かった様な……、そんな旅行だった。




