部活見学
全ての授業が終わり、その後に連絡事項を住田先生が伝えてから教室を出て行く。
俺はそれを見届けると、腕を伸ばし身体をほぐしていく。う~ん、今日の授業も終わった~。
しかし、今日の放課後は部活動を見学に行こうと思っているので、まだ帰るつもりは無い。
さて行くか、と思いながら教室を出る準備をしていると、詩乃さんと柚香さんの貴族コンビから声を掛けられる。
「琥珀君、送っていくから一緒に帰らないかな?」
どうやら、帰りのお誘いらしい、でも今日はこの後も部活見学と言う用事が残っているのでゴメンナサイだ。
「ごめん、今日はこれから部活を見に行こうと思ってるんだ」
「ああ、部活か~、私たちも放課後忙しくなかったら、一緒の部活入れたかも知れないのに……」
詩乃さんはがっくりと肩を落として悔しがっている。柚香さんは落ち込んでいる詩乃さんを見て苦笑しながら慰めている。
「それはしょうがないよ、私たちも色々と将来に向けて覚える事があるんだから」
どうやら、帝王学的ななにかを学んでいるのかも知れない……、大変そうだ……。
二人は、じゃあまた明日と言い帰って行った。俺もそろそろ行くかと教室を出ようとしたら、背中に視線を感じた。何だろうと振り返って教室の中を確認してみるが特に変わった様子は見受けられない。気のせいかと思いながら俺は教室を後にする。
先ずは何処から行くかと思い、部活紹介で貰ったプリントを見てみる。そこには数多くの部活の名前が記載されている。改めて見るとやっぱり多いな……、これだけあると何処を見るか絞るのも大変である。しかし一番最初に見に行く部活だけは決めている。やはり、人気スポーツでありこの学校でも一番の規模を誇るスーパーアーツ部であろう。入部はするつもりは無いが興味はすごくある。……たしかみのりさんが入部しているんだよな。もしかしたら戦っている所を見ることが出来るかも知れない。
俺はそんなことを思いながら、スーパーアーツ部が活動を行っている場所へ足を向ける。
すると、後ろの方から音がしたので振り返ってみてみるが、特に変わった様子は無い。空耳か……、と思い改めて向かう。
しばらく歩き、ようやく着いた。ここまで歩いて、改めてこの学校が広いと言うことを感じる。しかし、ここに来るまでに他の部活を歩きながら、見れたのは良かったかも知れない。……テニス部なんか楽しそうだった。
スーパーアーツ部が活動をしていると言う場所を見る。そこは二ヶ所に別れており、一つは専用の機材を置いてあり、本格的な事が出来る施設で闘技場と呼ばれている場所、もう一つは基礎の格闘技を磨く為の活動場所である第一武道場である。機材を置いてある方は見学が出来ないらしいので、第一武道場の方を覗いてみる。
でも、普通に行っても、おそらく男子の俺が見学していたら、活動している人達の気が散るであろう事は想像が出来るので、そーっと覗いてみる事にする。幸い換気のためかドアが開け放たれているので見るだけなら問題ない。
俺は扉に近づき、気づかれないように静かに中を見てみる。武道場の中はショックを吸収する為のマットが敷き詰められており、その場所で大勢の人達が組み手を行っていた。
「うわ、普通の組み手でもこんなに居たら、凄い迫力だな……」
そんなことを呟きながら見学していると、ドアの近くに居る人達の声が聞こえてきた。
「おい、あそこ見てみろよ」
「何よ、ってあの子か……」
「ああ、瞬殺鬼だ」
「あの子、今のところ全勝なのよね?」
「それどころか、全部秒殺だよ……」
「A級入りするわね……」
「……だろうな」
「うらやましい、A級入りしたら、普段から闘技場の機材を使用できるのよね~」
「くっそ! 負けてられるか!」
……聞こえてきた話しを分析するに、この部はクラス分けをしているらしい。それで世紀末に出てきそうな感じなあだ名を持っている人が強いと言う事みたいだ。その二人が見ている先を確認すると、そこには清楚な美人と、髪の短い人が組み手を始める所だった。
うん、みのりさんだった……。話からすると、この二人のどちらかが、物騒なあだ名の持ち主らしいが、おそらくと言うか、十中八九みのりさんだと思う。……何となくだが。
おっ始まった。
最初に動いたのは、短髪の人だ素早い動きから左のジャブを放った! が、みのりさんはその腕を掴み、引っ張る! そして相手が体勢を崩した所に下から掌底で顎を打ち抜き、そしてそのまま相手の喉を掴みながらマットへと勢いよく叩き付ける。
………………流れる様なコンボに絶句する。……え? あれ大丈夫なんですか? 時間にして数秒だが思わず見入ってしまった、がそんなことよりもあの短髪な人が無事か気になる。俺は扉の近くに居た人に思わず聞いてしまった。
「すいません、あの人大丈夫なんですか?」
いきなり話しかけられて二人は驚いていた。
「え、ええっ男の子? 何でこんな所に?」
「あっ、ごめんなさい。扉が開いていたから、少し見学をさせて貰ってたんです。それであの人は大丈夫なんですか?」
俺の登場にうろたえていたが、なんとか質問には答えてくれた。
「ああ、この腕に巻かれた機械が衝撃を和らげてくれるんだ、だから見た目ほどダメージはないから問題ないよ」
一人がそう言って腕に巻かれている、黒い帯の様な物を見せてくれると、話をしていたもう片方の人が、ホラと指を差して教えてくれる。指の先には先ほど倒された短髪の人が、みのりさんに手を差し伸べられ起き上がる光景があった。
俺はその光景に胸をなで下ろした。そしてテレビで見るのと直に見るのとではやはり迫力が違うと心から思った、それに加えて専用の機材を用いて試合をすると、さらに迫力がますのだ! このインパクトなら人気になるのも頷けると感心した。
「えっと見学するなら椅子とか用意するけど?」
先ほどまで話していた一人が、俺に気を遣ってくれたのかそんな提案をしてくれる。
「ああ、いえもう十分見学させて頂いたので、この辺で失礼させていただきます」
俺は二人にお礼を言って、武道場を後にする。
……そして思う。みのりさんは怒らせないようにしようと。




