絢爛高校生徒会(入学式前)
絢爛高校のある一室、その部屋は木製の重厚なドアが付いており、気軽には立ち入れない空気が感じられる。ドアにはプレートが掛かっており、そこには生徒会の文字がある。
そう、ここは、絢爛高校の中枢である生徒会の部屋である。
絢爛高校の生徒会は学校側から、結構な権限を任されている。その為絢爛高校は、進学校にもかかわらずそれ程、校則が厳しくないが、その代わり、大きな問題を犯した生徒には厳しい処罰が下される事が多い。そして、大きな権限を任される生徒会に選ばれる者と言うのも優秀な者が多く、生徒からの支持も厚い。絢爛高校の生徒会役員というのは能力もあり、人気もあるそんな生徒達である。
そんな生徒会役員が日夜、仕事をしている生徒会室は大きく、そして豪華である。初めて訪れる生徒はその豪華さに驚く事が多い、しかしそれは生徒会の費用を使って揃えているのでは無く、過去の生徒会役員であった人達が、自分たち用に使用する家具や、諸々の道具などを持ってきて勝手に設置していったからである、絢爛には裕福な家の生徒が多いので、質が良い道具が多く持ち込まれ、しかしながら持ち込んだ人が持って帰る事をせず、そのまま置いたままにして卒業してしまうので、一つ一つを見ていくと豪華でセンスの良い物なのだが、全体的に見ると雑多な印象がある部屋になっている。
そんな部屋でこの部屋の主、生徒会長を務めている女性は紅茶を飲みながら資料の確認をしている。
この資料は、数日後に行われる新入生の入学式で読む事になっている歓迎の挨拶を考えた物である。
生徒会会長であるから、もう何度も大勢の生徒達の前で話をしているのだが、未だに緊張はするのでこういった、準備は怠ることが出来ない、と生徒会長をしている少女、真田 理彩は考える。
理彩は一年の後半から、その明晰な頭脳と、人当たりの良い性格で生徒会長をしており、前年も新入生を迎え入れた。入学式は新しい男子生徒も入学してくるので、他の在校生よりも一足早く確認できるので、密かに役得だと思っている。
……別に早く見る事ができたからと言って、接点が出来る訳では無いのだが。しかし初々しい新入生を見ていると、女子も男子もせっかく絢爛と言う学校に入学したのだから、高校生活を楽しんで欲しいと思ってしまう。そして、その楽しい送って貰う為にも自分が頑張って仕事をこなし、良い学校を作っていこう! そう思うのだ。
今、生徒会室にいるのは、理彩だけである、他の役員は今日はお休みである。まだ春休み中であるし、入学式の準備も予定通り進んで、ほぼ完了している。理彩もわざわざ学校に来なくても、家で覚えれば良いのだが、家には誘惑が多く学校でやる方が集中で出来ると考え、休みの中、学校に来てやっているのである。理彩は紅茶と資料を机に置くと静かに目を閉じる。
春休み中の校舎の中は、静かで非常に集中できるし、何よりも……、理彩は座っている椅子の背もたれに身体を預ける。そして、スイッチを入れる。椅子は理彩の身体を優しく受け止め、そしてゆっくり動いていく。その動きは優しい様で、的確に凝った理彩の身体を優しくほぐしていく。
「おっ! ふ……、はふぅ……」
思わず理彩の口から声が漏れ出てしまう。それほど迄に気持ちが良いのである。理彩はこの椅子、おそらく高級品だと思われるマッサージチェア。これを残してくれたであろう過去の生徒会役員を密かに神様だと思っている。言うまでもないがこの椅子もわざわざ学校で仕事をする一因ではある。一応、マッサージチェアをあからさまに置いておくのもアレなので、椅子の前には机が設置されているが、その机は仕事のために使用される事はほとんど無い。
理彩の身体を、マッサージチェアに付いているもみ玉が、まるで熟練のマッサージ師のように的確に揉みほぐしていく。理彩はボタンを押し、今度は全身揉みほぐしコースを選ぶ。すると動きが変わり、足裏からふくらはぎ、太もも、腕に腰、肩と全身を揉みほぐしてくれる。油断していたら眠りに落ちてしましそうなその中で、確かに理彩は幸せを感じていた。
「おおっ、おふぅ……」
他の役員が休みの中、理彩がマッサージチェアを独占的に使用していると、何だか廊下の方が騒がしい、それも段々と生徒会の部屋に向かってきている様に気がする。
理彩がそう思っていると、バンッ! と乱暴にドアが開けられる。理彩がドアの方へ目を向けると、そこには見知った相手、生徒会の仲間であり、生徒会副会長である桂川 千香が息を切らしながら立っていた。
廊下は走ってはいけないのだが……、それに加え休みの日に迄学校に来てどうしたんだろう、と理彩がマッサージチェアに揉まれながら見ていると、千香は理彩が居ることを確認すると、理彩に向けて大きな声で言った。
「大変なの!」
……どうやら大変らしい。
理彩はマッサージチェアに全身を揉まれながらそう思った。




