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皆の肝試し

 桜さんという悲しき幽霊が無事成仏したあと、俺たちは決められたルートを踏破し、キチンと肝試しを終えた。幸いなことに、桜さん以降、オカルト的な現象はなく、スムーズに進んだと言えるだろう。


 しかし、普通肝試しと言うのはワーワーキャーキャー言って男女が臆面もなく、くっつくことを想定しているのでは無かっただろうか? まったくそんな要素は全くなく、ガチの地縛霊を成仏させた今回の肝試しは、本来の目的での意味なら成功だと思うが、一夏の思い出的な意味なら落第点も良いところだろう。


 そんな肝試しから戻ってきて、今は東華院家別荘のリビングにてグッタリとしている。そんな俺たちに対してメイドさんがお茶と軽いお菓子を持ってきてくれる。疲れた体に美味しい紅茶が染みわたる。


 しかし、俺と詩乃さん、三島さんがグッタリしているのはわかる。幽霊に会い、その成仏を手伝ったのだ。悪霊ではなかったとはいえ、精神的に負担は掛かったことだろう。

 ……まぁその大部分は一緒にきたジョゼフィーヌとフランソワーズの影響が大きいと思う。今さらだがなんで人形が喋って動くんだろう?


「ねぇ……なんでみんなそんなに疲れてるの?」


 やはり詩乃さんもそこが気になったのかそんな質問をみんなにした。


「……そう言う詩乃ちゃんこそ」

「そうだよ詩乃だってぐったりしているじゃない」

「私たちは実際に幽霊にあったんだよ……」


 しかも成仏までさせてきたんだよ。と詩乃さんは机に突っ伏しながら言った。


「……詩乃も?」

「えっ詩乃ちゃんも?」


 それは分かれた三組、それぞれから挙がった声だった。


「もしかしてみんなも幽霊にあったの?」


 怪訝そうな顔で詩乃さんは言った。確かに幽霊なんて存在にそうそう会うことなんて無いだろう。

 しかしそんな俺の考えなど浅はかだと言わんばかりに、他の人が全員頷いた。

 それを見た、詩乃さんは頭に指を添え、考えるように言った。


「うーん。取り敢えずみんな落ち着こう。先ずは淹れてもらったお茶をみんな飲もう」


 みんな素直にそれに従い紅茶を飲む。とても美味しい。皆も同じように思ったのかホゥ……とした顔を浮かべていた。


「よし。落ち着いた。じゃあ先ずは状況整理ということで私たちの組(くみ)で起こったことを話すわね」


 詩乃さんはそう言って、地縛霊である桜さんの話をした。


「なるほど、それは余程の無念だったろうね」

「でも最後は成仏できてよかったですね」

「……私は思うの、桜さんの話は決して彼女だけのものではない。私たちにとっても身近な出来事かもしれないと……」

「そうだね……」


 三島さんがシットリと悲しそうに俺を見ながらそう言った。そしてそれに続くように他の人も俺を見つめてくる。

 ……それの視線は俺が自然消滅を狙う男だと言ってるのだろうか? そこんとこどうなんだ? しかし答えが怖いので決して追求はしない。


 ……みんなしんみりした雰囲気を出しているが、要約するとフラれて地縛霊と化してしまった話だ。悲しいことに、もし話すべき場所を間違うと、バカにされてしまう類いでもある。具体的に言うとネットとか。


「じゃあ柚香のところはどんな幽霊が出たの?」

「……私のところは幽霊というか……」


 柚香さんは思い出すように目を閉じた。そしてポツリと言った。


「なにかよくわからない大きい昆虫みたいなものだった」


 柚香さんと一緒のグループだったみのりさんと八千草さんも同意するようにウンウンと頷いた。


「……それはただの昆虫だったのでは?」


 取り敢えずみんなが思っていることを俺が代弁してみた。柚香さんは否定すると思ったが、そうかも、と同意した。しかし柚香さんは、でもと言葉を続けた。


「少なくても四メートルぐらいの大きさの昆虫は現代では見つかってないと思うの」

「なにそれ超怖い……」


 古生代じゃないんだから。現代にそんな昆虫出てくるなよ。


「私も虫はちょっと……」

「美羽は気を失いそうになりました。アレはトラウマになります!」


 一緒に行ったみのりさんも、八千草さんも体を震わせている。よっぽど怖かったんだろう。


「そ、その昆虫? はどうなったの?」


 三島さんがおそるおそる聞く。


「一緒に行ってくれた霊能力者さんが、お札をだしたら……」

「出したら?」

「なんか肉の塊に口だけついた生き物に変わって、凄い音をさせながら食べてた」


 ……壮絶すぎないだろうか? 絶対夢に出るぞ。


「よし! じゃあ舞澄さんと雅さんのところはどうだったの?」


 気分を変えるように詩乃さんは話を変えた。


「……いやほんとアレ何なんだろう?」


 何を見たのかわからないが、舞澄さんの口調が素に戻っているぐらい変なものを見たことだけはわかった。それの補足をするように南方院さんが言葉を続ける。


「まぁこっちも柚香ちゃんのところと同じ様に得体の知れないものだったよ」

「簡単に言えば……言えば……。なんだろう丸い毛むくじゃらの物体に人の手足がついた生き物? と言えば良いのかな?」


 舞澄さんの言葉に同意するように南方院さんが頷いた。……そりゃあもう幽霊じゃなくて妖怪だろうよ!


「そっちはどうやって対処したの?」

「こっちも柚香ちゃんのところと同じだよ。霊能力者さんがキョンシーを使ってボコボコにしてた。それで最後には『良い材料が手に入ったわ』って言ってた」


 俺は会ったのが桜さんで良かったと心底思った。

 というかあの山どうなってるんだよ! 幽霊が出るなんてもんじゃないぞ! 魑魅魍魎が跳梁跋扈してるじゃないか。


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