浜辺での一時
「なんて素敵な笑顔……」
三島さんは、晴れやかな笑顔を浮かべている詩乃さんとみのりさんを見て、ポツリと呟いた。確かに三島さんが言うように、二人はやりきった、と言わんばかりのキラキラとしたにこやかな表情を浮かべている。
「いや……まぁ普通に生活してたら、年頃の男子の肌を直接触るなんて、そうそうないからね」
「……雅さんは付き合う人がいたのに、その機会もなかったですしね」
「柚香ちゃん、いくら私でも泣くことはあるんだよ……」
そしてオイルを塗られた俺は、砂浜にて舞澄さんと八千草さんと共に砂のお城を作っている。
やはり、サンドアートは海に来てやっておく事の一つだろう。一緒にやっている二人の技術が凄いため日本のお城の様な物が出来上がっている。
「ふぅ……完成しましたね!」
「ええ、さすが私達ですわね! これほど迄に美しいお城が出きるとは」
「……いや本当に」
俺は出来上がったお城を見て、しみじみと呟く。
「じゃあじゃあ写真撮るのでー、二人ともポーズしてくださーい」
八千草さんは自分のスマホで三人と砂のお城が写る様に、写真を撮った。
「えーと……美少年と海で旅行っと……」
そして恐ろしい早さでSNSにあげていた。そしてニンマリと笑う。
「あはー。皆さんの嫉妬の声が聞こえてきます。なんでしょう? この優越感、今、美羽は確実に青春をしているって気がします!」
なんてゲスい青春の感じ方だろう、もう少しマトモな感性を磨いて欲しい。
「でもそろそろお腹が空きましたわね」
「あー確かに……結構な時間お城作ってたからね」
「夜はバーベキューしますけど、お昼は何を食べたらいいんでしょうねー」
ここは東華院のプライベートビーチである。くそ不味いラーメンを出す海の家などは出ていない。
「ご安心下さい。お昼に関しましてはお屋敷の料理人特製のお弁当をご用意しております。只今準備をしておりますので少々お待ち下さい」
メイドの結さんが八千草さんの疑問に答える。結さんが示した方向ではパラソルやテーブルがテキパキと東華院のメイドさんによって準備がされていた。
至れり尽くせりである。
「なんでしたら、海の家の不味いラーメンもご用意できますが?」
要りますか? と視線で問うてくる結さんだが、雰囲気だけの物に一流の料理人の技を奮って貰いたくはない。何が悲しくて、わざわざ不味い物を作る必要があるのか?
「みんなーお昼の用意ができましたよー!」
「「わーい!」」
柚香さんの呼び声に、喜んで走って行く舞澄さん達、あの二人を見たら、純粋って言葉を思い出す。
それに引き換え……
「えーと、二人とも、もうお昼だから、そろそろ妄想の世界から帰っておいで……」
「三島さん、彼女達は今、心からの幸福を噛み締めているんだ、ソッとしておいてあげよう」
「ええっ……もう結構な時間にやけた顔をしてますけど……」
「フッ、これを見て私達は反面教師にするんだよ。欲望に負けたらこんな風に情けない姿を晒すってね」
三島さんさんは南方院さんの言葉に納得した様に頷くと言った。
「でも自分が反対の立場だったら……」
その呟きに南方院さんは爽やかな笑顔を浮かべて言った。
「超嬉しい」
「……ですよね」
……ここに男がいると言うのに欲望全快である。いや、まぁ俺は幻滅とかしないけど、他の男だったらゴミを見るような目で見られる事は覚悟して欲しい。
その後、我に返った詩乃さん達と一緒に、お弁当に舌鼓を打ちながら話をする。
「えっとねー。デザートにはスイカを用意してあるから、スイカ割りして食べようね!」
「私、割るのは得意ですよ」
「夏っぽいですー!」
「フフフッ夏の定番は全て網羅する!」
「ヒューヒュー!」
得意気に言う詩乃さんに合いの手を入れる舞澄さん。凄くノリが良い。
「あっ、夏の定番って事で明日の夜は肝試しをします」
「へー肝試し」
「ちなみに本当にお化けが出るらしいけど、気にしないでね!」
ニッコリと告げる詩乃さんの言葉に、えっ? と何を言っているんだとばかりの声をあげるみのりさん達。
しかし、本当に出るんならやめたら良いのでは? そう思い、声に出す。
「じゃあ別にしなくても良いんじゃない?」
「いや、夏だから」
……夏だからって別にしなくても。
「それに安心して。取り敢えず終了後には霊能者を読んでお祓いはキチンとして貰うから!」
「なら安心……かな?」
「そうですねー。まぁ夏に肝試しは定番ですしー」
お祓いをすると聞いたら、何故か他の人も肝試しに乗り気になった。いや、おかしいだろ。何故そこまでして肝試しをしたいのか?




