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食堂

 あの、色々と衝撃的な自己紹介が終わり、その後学校の施設を見学し、今はお昼の時間になった。オリエンテーションの一環なので、少し早い時間で、俺達のクラスだけしかいない。おそらく時間をずらして他のクラスも来るのだろう。


 絢爛の食堂は券売制だった。広大なフロアにいくつもの、お店がありそこの近くに券売機が置かれ、そこで食券を買い、料理を受け取って席で食事をする。例えるなら巨大ショッピングモールのフードコートの様だった。


 しかし、学食とは思えない程、お店の数は多く、料理に関しても庶民的な料理から、高級料理まで幅広く扱っていた。

 値段も比較的安く設定されており、学費が高い分こういう所では、あまりお金を取らないようにしているのかも知れない。


 ここまで学校を見学をしてきて、一つ思ったことがある。

 それは、舞澄さんの事だ。強烈なキャラだったので少し観察をしていたのだが……、


 あの人、キャラ作ってんじゃねぇ?……


 と言うことだった。


 絢爛が誇る施設を見る度に、ファー、とかスゴーイ、とか小さく呟いていたのを聞いた。

 考えてみれば、彼女のお父さんが経営している会社は、ここ数年で急拡大しているが、少し前までは名前を聞いたことさえ無かった会社だ。雑誌か何かで、社長が載っているのは見た事があったが、ほんの少し前までは、普通の暮らしをしていた、と書いていたのを覚えている。


 言い方は悪いが成金である。そんな家の子が、あんなにいかにもなお嬢さまと言うのも、おかしな話であるし、どちらかと言えばキャラを作っていると言われた方がしっくり来る。


 今、彼女を見ると、牛フィレのステーキ定食の食品サンプルを口を開けて見ている。

 しばらくサンプルを見ていると思ったら、突然ハッとなり、


「ど、どうやら、私(わたくし)の口に合いそうな物も、置いて有るみたいですわね。オホホ……」


 と独り言を言い、券売機で食券を買い、お店のカウンターに向かい料理を頼んでいた。

 ……とてもスムーズな動きである。


 ちなみに、今日の昼食は、オリエンテーションの一環なので無料である。

 その後彼女は料理を受け取ると、嬉しそうな顔をしながら空いているテーブルに向かっていった。


 由緒正しい貴族の詩乃さんと柚香さんは、食券と言う物を知らなかったみたいで周りの人に教えて貰っていた。その後、料理を受け取る前にテーブルに向かってしまったので注意をされていた。



 この違い!



「どうかしたんですか~?」


 対照的な彼女たちの行動を見ていたら、声を掛けられた。

 声の主を見ると、あのぶりっ子が居た。


「あの~」


 彼女は小さい背を利用して、こちらを上目遣いで見つめていた、……実にあざとい。


 ……が! 嫌いじゃない!


 なんと言うか、とてもかわいらしい……


「あ、あの~」


 いつまでも返事を返さない俺の事を不安に思ったのか、少し震えた声を出す。


「ああ、ごめん。何を食べようか迷ってたんだよ」


 俺が返事を返すと、途端に笑顔を浮かべる。


「よかった~、何か美羽が気に障ること言ったのかと思っちゃいましたよ~、エへへ」


 ……実にあざとい。が、この仕草は俺の勉強しておいた方がいいかもしれない。

 こっちの世界の女性には受けるかも知れないからな。


「あの~、良かったら美羽と一緒に食べませんか~?」

「え、ああ良いよ。一緒に食べようか」

「ふぇ、……いいんですか! やったー!」


 八千草さんはちいさな身体を使って目一杯喜びを表していた。

 その様子に気づいたクラスメイトは、一緒にランチ! 声を出し驚いた顔をしていた。


「ランチを一緒にして貰えるとは思ってませんでした!」


 八千草さんはそう言い腕に抱きついてきた。

 それを見たクラスメイトから悲鳴が上がる。

 俺はそれをやんわりと離し、じゃあ買いに行こうかと話しかける。


 おさわり厳禁ですよ!


 すこし残念そうな顔をしたが、すぐに笑顔になって、返事を返してくる。


「何を食べますか? 一杯あって目移りしちゃいますね?」

「そうだね、俺は牛フィレのステーキ定食にしようかな」


 実は舞澄さんが注文したのを見て食べたくなったのだ。


「じゃあ、美羽も同じのにします」

「そう? じゃあ貰いに行こうか」

「はい、行きましょう!」


 二人で食券を買い、料理を貰う。


「おいしそ~」


 八千草さんは貰った料理を見て、声を出していた。

 本当においしそうである、焼けたお肉から良い匂いがしてきて、食欲を刺激する。

 空いている席に座り食べ始める。


「これ、すごく柔らかくておいしいです~」


 さっとく食べた八千草さんがそう言い、肉を一切れ箸で摘み、こちらに差し出してくる。


「あ~ん」

「いや、大丈夫だよ……」

「ぶぅ、乗ってくれても~」


 同じもん食ってんじゃねぇか! 俺のあ~んはそんなに安くないんだよ!


「でも、一緒にランチできて嬉しいです」


 八千草さんは、ほにゃッとした笑顔でそう言った。その八千草さんを見て、思わず手を伸ばしてしまい頭を撫でてしまった。


 いやだって、可愛かったし……。


 その時、近くから、バキッ! っと音が鳴った。音がした方を見ると、三枝さんが箸を折った姿があった。

 顔を見ると、いつもの清楚な三枝さんだったが、その身体からは身震いするような気配が漏れていた。

 事実、近くにいた人は小さく震えていた。


 その様子に気づいたのか、気づいていないのか分からないが、八千草さんは美味しそうにランチを食べていた。


 こうして小さな騒動はあったものの、ランチの時間は過ぎていった。




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