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偵察

「あやーやる気満々ですねー」


 二日目は他のチームも動くとの予測から、情報収集の為、偵察に出ていた八千草美羽は適当なコテージに張り込んでいた。そこが優勝候補の一人、大空寺のコテージだったのは幸運だと美羽は思った。その大空寺がコテージから出るのを見とどけると、美羽は静かにその後をつけていった。美羽の目から見ても大空寺は戦意旺盛で周りの女子達もそれに触発されてか士気も高そうだった。離れていてもその実力の高さがわかり、美羽は自分たちが戦う時は大変そうだと感じた。


(でも武器とかは持ってないみたいですねー)


 これから戦いにでると言うのに大空寺はもちろん、グループの女子達も美羽が見る限り武装している様には見えない。自分たちとのグループとの差異はそこだろう。なにせ自分たちのグループは虎挟みから始まり、煙幕にスタンロッド、果ては刀まで持ってきている程だ。美羽は同じグループだが普通の女子高生が持ってくる武装では無いと思っている。美羽は自身が軍隊系文化部と呼ばれている部活に所属している身ではあるが極々普通の高校生であると思っている。だから特に武器の類いは持ってきていなかったのだが、もしかしたら自分がおかしかったのか? と内心で心配していたのだが、どうやらおかしいのは自分たちのグループみたいで有る。


 先を行く彼らに気づかれない様に、距離をとり静かに付いていく。基本的に整備されている道沿いに行けば隣接する他グループのコテージに着く。大空寺達はその道を逸れる事無く歩いている事から、奇襲をするつもりは無いようである。恐らく、男子王決定戦始まって以来、初めての正面衝突となるだろう。既に二つの勝利を手に入れている自分たちのグループだが、一つは奇襲で勝利した物であり、もう一つに至ってはどのようにもぎ取って来たのかすらわからない勝利である。


 琥珀の話では、少しのいざこざが有ったが最終的に話し合いの末手に入れたらしい、恐らく琥珀の類い希なるカリスマに自身の敗北を悟った相手が自発的に宝石を差し出したのだと美羽は思っている。


(……やはり秦野さんは最高です)


 争わず勝利を手に入るカリスマは、やはり王の称号が相応しいと美羽は思う。だから自分もその為に頑張り、そして褒めて貰うと気合いを入れる。最終的にはお嫁さんが目標である。


(そろそろ相手のコテージが見えてきますねー)


 そして大空寺達が相手のコテージに着いた。しかし相手も敵が来ている事には気がついており、大空寺達が到着する前にコテージの外で陣取っていた。そしてその相手は……


「……まったく、この僕相手に仕掛けて来るなんて不遜な男だね。僕の相手に相応しいのは勝ち上がってきた者……、一人だけなんだけどね」


 仮面の男、こと貝塚であった。貝塚はその極々平凡な顔を嫌悪に歪ませて大空寺を見る。しかし大空寺はそんな貝塚の言葉を気にしないで笑みを返した。


「ヌハハ! そう連れない事を言うな……俺は好きな物から食うタイプなんだよ! まぁさすがにこれは偶然だったがな! ホレ見てみろこの状況に俺の筋肉が喜んでるぞ」


 大空寺はまるで見せつける様に上腕二頭筋を盛り上げる。見事に盛り上がった力コブに敵味方問わず女子達は見入っていた。しかしその筋肉も貝塚には不評だったらしく彼は侮蔑の表情で大空寺を見た。


「不愉快だな、悪いが僕は筋肉には興味が無いんだよ」

「フーム、ツレない男だな。ノリが悪いぞ。……しかし何だな、お前雰囲気が収録の時と大分違うな?」

「……別にそんな事はない」

「いやいや、あの時には感じなかった自信が今は感じる。これは潰しがいがあるなぁ!」

「僕は手に入れた……本当の自分と言う物を……」


 二人の会話に触発されてか彼らのメンバー達も戦闘態勢に入っていく。それを離れた所から見ている美羽も感じる程である。


(これは見物(みもの)ですねー。優勝候補同士の争いです。もっと見やすい場所に移動しましょう!)


 美羽は辺りを見回し、全体を見れる木に検討を付けると、スルスルとその木に登っていく。そうして落ち着いて両者の戦いを見ようと太い枝に腰掛けようとした瞬間、隣に人が現れた。


「……」

「……」


 美羽の横に現れた人物はメイドだった、いや正確にはメイドの姿をした少女と言うべきだろうか? ここに居るからにはこのメイドさんも高校生で誰かのメンバーなのだろうから。美羽の頭に一瞬、戦闘の文字が浮かぶが直ぐに思い直した。恐らく彼女も自分と同じ情報収集が目的だと思った為だ。ここで戦うよりも今から始まる戦闘の情報を持ち帰る方が有益だと判断した。それはメイドも同じらしく、二人は話すこと無くお互いにしばらく見つめあい、そして静かに頷いた。そして二人は眼前で行われようとしている大空寺と貝塚の戦闘に意識を向けた。


「蹴散らせ!」

「迎え撃て!」


 二人の男子が声を上げ戦闘が始まった。


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