準備万端
奇襲です。バトルロイヤルの華と言われる奇襲をしたいと思います。少年漫画等では主人公側がすると称賛され、敵側がすると卑怯者と蔑まれるアレです。しかも現在の時刻はもうすぐ午前二時、丑三つ時で夜襲するには良い時間帯です。
そんな夜襲だが準備をしているメンバーは実に楽しそうである。キャッキャッウフフと皆笑顔である。準備中のリビングには詩乃さんと柚香さんが持ち込んで来た道具が並べられどれを持って行くか女子皆で吟味している。
そこらに放り出されている物を見るだけでもガスマスクや警棒の様な物や手榴弾の様な物が確認できる。俺が言うのもなんなのだが、この娘達は一体何と戦う積もりでいるんだろうか? とは言えこれは俺の戦いなので、このまま何もしない訳には行かない。俺は恐る恐る散らばっている物の一つである警棒の様な物を手に取ってみる。
「あっ、それは取り敢えず人数分持ってきたんだ!」
「そ、そうなんだ。一応聞くけどこれは何?」
「もちろん高電圧スタンロッドだよ! 普通のスタンガンよりもリーチ取れるから使い易いよね?」
……もちろんの意味もわからないし、使った事が無いので同意を求められてもわからない。
「……なるほど。じゃあこっちの手榴弾みたいのは?」
「それは煙幕だね。流石に本物は持ってこれないよ」
アハハと詩乃さんだが今の会話に笑う要素がどこか有っただろうか? こうして俺はハラハラしながらも口をださず彼女達の準備を静かに見守った。
◆◆◆◆
「あー夜の番って暇ですねー」
短髪の少女がリビングに置いてあるソファーに身を投げ出し、だらしない体勢で、共に夜の番をしている仲間に話し掛ける。
「まーそう言うても夜の警備を疎かにするわけにもいかんしのー」
短髪の少女の言葉に答えた少女はジュース手に取りコップに注ぐ。
「それはそうなんですけどねー。……あっどうも。初日から夜に襲ってくる好戦的な男の子いますかね?」
短髪の少女はそう言うと渡されたジュースを一口飲んだ。
「どうじゃろなー。ほとんどの男の子は寝る時間が十時って、この間テレビでやってたがのー、実際はどうかわからんし」
「えっ? 本当ですかそれ!? 確かにうちの王様も早々にお寝むしてましたが……」
「さあのー。所詮テレビの言うことじゃし」
短髪の少女はその言葉に少し困った様に頬をポリポリと掻いた。その様子をもう一人の少女は首を傾げながら不思議そうに見た。
「どうかした?」
「あー、いや、日向さん今私達テレビに出演るって覚えてます?」
短髪の少女は横目でこちらを撮影しているカメラマンを恐る恐るみる。もう一人の少女、日向と呼ばれた女子もその視線に釣られカメラマンを見て口を開く。
「まーあれは違う局の番組じゃったから、裏付けなんてしてないんじゃろ? この局とは番組に対する真剣さが違うと思うがの」
「それはそれでヤバい発言の様な……? ま、まぁ良いです。それよりも日向さんはこの戦い、どう見ますか?」
「どうとは?」
「誰がヤバいかって事ですよ。私達は自分達の王様を勝たせないといけないですからね! 敵の分析は必要です!」
短髪の少女は正論ぶって話をするが、聞いてくる顔を好奇心満載なのがすぐわかる。日向も短髪の少女が単なる世間話で聞いているのがわかったが、夜の警備で装置の前から動けない現状、ずっと神経を張りつめる訳にもいかないので、その雑談に乗ることにした。
「……ほーじゃのー」
日向は顔を上に向けて男子王に出場してるメンバーを一人一人思い出して行く。そうして口元に指を当て、んー、と少し考え言葉を返す。
「やっぱり四人が抜けとる気がするのー」
「四人! 誰ですか誰ですか!?」
ズズイっと短髪の少女が日向の至近まで近寄る。
「近い近い、離れんさい」
「あっ、すいません。コホン、改めまして誰ですか?」
その話題にはカメラマンも興味を持ったのか日向を映し始めた。
「と言うても、下馬評通りじゃな」
「えー、でも下馬評だったら五人じゃ無いですか?」
「うーん。船で見た印象になるんやが、仮面の男……貝塚君はどうにも他の四人に比べると薄い気がしてのー」
「薄いですか……なんかめちゃめちゃ自信満々でしたけど……」
「王座君や大空寺君、日比谷君はなんちゅうか……其処におるだけで場を自分の物にする印象を受けた」
正直、自分所の男子ではちょっと及ばないと日向は思ったが、そこを何とかするのが自分達の役目だと日向は思っている。王自身が劣っていても周りがフォローすれば良いだけなのだから。
「あれ? 天使は? 私の天使の印象は?」
「……まぁ、そのアダ名はともかく秦野くんかぁ」
日向は船で見た琥珀の印象を口にだす……その瞬間コテージの入り口から凄まじい音が響いた。




