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決着

 さて、こっくりさんも終盤戦、残りは二卓である。


「なんて対称的な戦いだ」


 観戦していた男子が緊張した様子で呟いた。確かにその男子が言うように残りの二卓は対称的と言える。詩乃さんがいる卓は鬼気迫ると言うか、闘志で空間が揺らいでいる様に感じる程の熱意が感じられる。一方の委員長達がいる卓は、全員が頬を膨らませて頑張っているので、なんと言うか微笑ましい印象を受ける。


「アハッ! もうそろそろ決着を着けようよ東華院ちゃん!」

「工藤さん……確かに力では工藤さんの方が上、その事は認める……でも! それと勝利は別の話だよ!」


 二人の闘志が周囲に満ちる。……その熱戦に今何をやっているのかわからなくなりそうだが。この場で行われているのはこっくりさんである。こっくりさんを呼んでもいないが建前としてはこっくりさんである。


 ……もう最初から腕相撲とかにしとけば話が早かったのに。そんな俺の思いとは裏腹に勝負を見守っている男子は勝負の行方を真剣に見守っている。


「わ、私達も居ることを忘れて貰っちゃあ困る!」

「そうだよ」

「ごめん……でも悪いけど力不足だよ!」


 工藤さんはそう言うとコインを勢いよく動かす。詩乃さんも意図が理解している為かその動きの邪魔をしない。


「わっ!」

「なんで!」

「うそぉ……」


 ……結果その動きについて行けず他の三人はコインから指を離してしまう。工藤さんの言葉の通り彼女達は力に負けてしまった。……そろそろ誰かに突っ込んで欲しい。


「なかなかの力だね」

「確かに、でも勝敗は別の所……ですよ」


 柚香さんとみのりさんが訳知り顔で解説しているが、そもそも力で振り払うってどうなのか? と言う素朴な疑問は抱かない物か……。


 ……いやここまで来たら後は静かに見守るのみだ。


「東華院ちゃん、腕力だけで私に勝つのは無理だよ」

「うん、今までの勝負で腕力では勝てないってわかった……だから悪いけど、ここからは技も使わせてもらうよ!」


 詩乃さんは今まで以上に闘志を漲らせる。


「うんそれは当然だね。私は子供の頃から腕力に重点をおいて鍛えてきたから」


 詩乃さんの闘志を間近で受けながら工藤さんは世間話をするように話し続ける。


「だって腕力の強い女子はモテるって本に書いてあったし……」

「そう!」

「でも! 私は今までモテたこと無い!」

「……そ、そうなんだ」

「その上この前見た雑誌には太くて硬い女子はモテないって書いてたんだ!」


 そう言うと工藤さんはおもむろに右の袖をあげたした。


「見てよコレ! 太くて硬いよ!」


 そう叫ぶ工藤さんの腕は見事な筋肉に覆われ、非常に逞しく硬そうだ。


「今更どうしろってのさ!」


 工藤さんの魂の咆哮を受け、詩乃さんが悲痛な表情を浮かべる。いや、詩乃さんだけじゃ無く、試合が終わり観戦に回っていた女子達も悲しげな顔をしている。加えてみのりさんを筆頭に運動部所属の女子は青い顔をして自分の体をペタペタ触っている。


 だが安心して欲しい。腕から感じるみのりさんの体は胸以外、しっかりと筋肉の厚みが感じられるから。


「そうだよなぁ……あれだけ硬そうだったらちょっと引くな」

「俺も俺も……」

「ゴリラかよって感じだよな!」


 観戦している男子達が袖を捲った工藤さんの腕を見て、好き勝手感想を言っている。その声が聞こえているのか工藤さんの気迫が目に見えて無くなって来ている。しかもその眼は涙ぐんでいる様にも見える。……しかしそんな彼女にも救いがあった。


「俺は結構イケるな……」


 一人の男子がポツリとそんな事を言った。その瞬間工藤さんの闘志が漲る。


「はぁっ!? 趣味悪すぎじゃねぇ!」

「いや俺もアリ思う。あの逞しい腕でギュッと抱きしめられたい」

「べ、別になんとも思わないけど……あんな腕で壁ドンされたら結構来るかも……」


 いやいや無いだろ? いやアリだろ? と男子達は己の性癖を争わせる。男子達のある意味暴露大会に女子達は耳を大きくして聞いている。興味があるのはわかったが、取り敢えず今は勝負の行方を気にしてあげて欲しい。


「と、とにかく私は鍛えあげたこの腕で秦野君の危機を助けて、なんやかんやでいい感じになるの!」


 行動の指針がアヤフヤ過ぎる! それは対戦空いての詩乃さんも思ったらしい。


「そんな曖昧な思いで琥珀君を手に入れようなんてチャンチャラ可笑しいよ!」

「何ぃ!」

「私はもう琥珀君との新婚生活まで思い描いてるよ!」


 ……それは只の妄想って言うんじゃ無いかな? しかも本人の前でそれを言うのはどうなんだ? 俺が普通の男だったらドン引くぞ。


「「勝負!」」


 工藤さんの腕が今まで以上に盛り上がり力ではコインを引き寄せる。その力の為かコインは何の抵抗も感じさせない様に工藤さんの名前へ向かう。しかし、あと少しで名前に到達すると言う所でコインは工藤さんの名前を避ける様な動きをした。それを見た男子達が驚きの声をあげる。


「これは……!」

「まさか!」

「いや、そのまさかだろう……」

「ああ」


 お互いの顔を見合せ、考えを確かめる様に口を開く。


『こっくりさんの意志だ!!』


 そんな訳あるか! 一体コイツらの頭の中はどうなっているんだ。こっくりさん呼ばれて無いって知ってるだろ!


「詩乃は力を向きを変えたのね。工藤さんの力に逆らわず、いえ、少し勢いをつける形で力を加えその上で力を外に誘導した……」

「下手をするとそのまま押しきられる事をあったと思いますが、東華院さんは力の扱いが巧みでしたね」


 解説の柚香さんとみのりさんが説明を聞いて、成る程と皆が感心している。勝負の結果はコインが自分の名前を避けた事に一瞬、呆然となった隙をつき、詩乃さんの勝利となったが、お互い納得した勝負が出来たのか両者は笑顔で握手しあっている。


 ちなみにもう一方の卓は全員が力尽き、後程くじ引きで決定することになった。


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