バスケット決勝
決勝戦が行われる日である。なんとなくバスケと野球は決勝迄進むだろうなと思っていたが、本当にその通りになってしまった。因みに決勝まで駒を進めたのはバスケと野球の二つである。テニスと卓球は残念ながら途中で敗退してしまった。時間的には二つの試合は時間がずれているので両方とも見る事ができる。
ともあれ、バスケと野球この二つの決勝戦の相手は当然と言っても良いかも知れないが特待生のチームだ。特待と言う名は伊達ではないと言うことであろう。
時間的に早く試合が行われるのはバスケの方なので、俺は試合が行われる体育館へと向かい、試合が良く見える位置を確保する。
すると俺の周りに段々と女子が集まって来た。……来たのだが、何故か俺の周囲一メートル以内にはいない。もしかして近寄り過ぎると嫌われると思っているのかも知れない。しかし、まだ試合が始まっていないからか周りの女子達はコートでは無く俺を見ている。……ガン見である。
……何だろう、とても気まずいので取り敢えず気付いて無い振りをしているが、もう少し抑えてくれないだろうか……。
そんな事を考えていると、コートに選手達が入って来た。
一組の詩乃さんを先頭に皆やる気に満ちた表情を浮かべている。
そして、体育館を見渡して俺の姿を見つけると手を振って来た。
……試合前なのに余裕だな。
俺は詩乃さん達の肝の太さに感心しながら、手を振り返すと詩乃さん達、バスケのチームメンバーはとても良い笑顔を浮かべた。
しかし、その瞬間体育館の中にいる観客から一斉にブーイングが起こった。……恐らく、恐らくだが試合前にも関わらず異性とイチャイチャしているのが勘にさわったのだろう。
俺だって試合前に相手が女とイチャイチャしているのを見せつけられたら頭にくるからな! その証拠に俺の周りにいる女子達……、心なしかさっきよりも近くにいる気がするが。その子達も詩乃さん達に呪詛の念を送っている。
「負けろ負けろ負けろ一組負けろ」
「あいつらばっかり幸せなのは許せない! 堕ちろ堕ちろ……」
「一組の子達はいいなー」
「もう少し近づけば恋人と観戦気分を味わえる……」
「神様、お願いします。一組の子達に絶望を与えてください。
与えてくれたら、今日の私のおやつをお供えします」
神様っておやつで動くのか? 何故か少しずつ近寄ってくる周囲の女子達の言葉に疑問を抱いていると、詩乃さん達の相手チーム、特待生達が入場してくる。俺は特待生のチームを見るのは、初めてなので楽しみに入場を見ていた。そしてコートに入って来た。
……ってデカっ!
予想以上に皆大きい、目算だけど180センチを越えている選手が三人はいる。他の二人も170台半ばはあると思う。
大人げねー! これは普通の女子高生が勝てるとは思わない。
八千草さんが言っていた足が速いとかセンスが良いとかも事実なのだろう。正直一組のチームと比べると一層大きく見える。
この相手に自信満々な詩乃さん達はどこかおかしいな……。
俺が特待生のチームをまじまじと見ていると、その視線に気付いたのか、チームの一人が俺の方へと顔を向け、驚いた表情を浮かべる。そして他のメンバーに何かしら言っている。その言葉を聞いたのか、他のメンバーも俺の方へと顔を向けてくる。
……あまりにじっと見てくるので俺は居心地が悪くなってきたので、取り敢えず先程詩乃さん達にしたように手を振っておく。
それに気付き大きく手を振り返してくると、その後円陣を組み気合を入れていた。
「一組をギッタンギッタンに倒す」
『ギッタンギッタンに倒す!』
一人の選手の後に続いて他のメンバーが続いて声を出す。
「男子をこの手に!」
『この手に!』
「絶体に勝って楽園を手に入れるぞ!」
その声の後オー! と大きな声で叫ぶと特待生達の顔付きが変わり臨戦体勢になる。
それを見ていた詩乃さん達も円陣組み、気合を入れ直していた。
そして詩乃さんが静かに、しかし良く通る声で話し出す。
「私達が負けると一組の男子は、あの特待組に蹂躙されるわ」
想像してみて……。と言葉を続ける詩乃さん。
少し間が空き、その事を想像したのか全員の顔色が悪くなっていく。
「奴らの事だから、当然琥珀君もその毒牙に掛かるわ……」
その言葉を聞き、より一層みんなの顔色が悪くなっていく。
「わかったかな? 私達には勝つしか道は無いって事が!」
『オウッ!』
こうして一組のチームも臨戦体勢に移行した。
しかし、言わせて貰うなら一組は楽園じゃないよ! だって一組の男子は別に女子に優しい訳じゃないし! むしろプライドが高いだけ扱いが難しいと思う。取り扱い要注意だよ! その辺はどうなのだろうか? 詩乃さんも……蹂躙て、ここは世紀末じゃ無いんだから……。一体彼女達は何を想像して顔色が悪くなったのか?
二チームの円陣を見たのか、俺の周りの女子達も話題にしてる。
……なんだかさっきよりも距離が詰まっている気がするが、まぁ良い。
「両方とも気合が入ってるね」
「うん。これは見ごたえあるね」
やっぱり皆良い試合が見たいんだな。と素直に思ったのだが次の言葉でそれが間違いだった事を知る。
『負けた時の落胆振りが!』
「あー、早く見たいなー」
「流石に祝えないからね!」
スポーツ観戦の楽しみかたじゃねぇ!




