試合開始
試合開始の時間になり、両チームがコートの中央に集まってくる。お互いに向き合うように並んび挨拶をした後、試合が始まる。……並べて見ると身長差が凄いあるのが良くわかる。俺が知ってる中で特待生のチームと互角に戦えそうなのは、とんでも戦闘力を持っているみのりさんだけなのだが……。
八千草さんは演劇部所属のロリっ娘だし、詩乃さんは帰宅部だ。他の二人のメンバーの部活は知らないけど……。
どうなんだろうか? と俺が一組の戦力分析をしている内に、ジャンプボールをする選手が出てきた。特待生からは一番大きな選手が、一組からは、……あれはえーと杉浦さんだったかな? が出てきた。ボールが審判の手から放たれ、とうとう試合が開始された。
先ずボールを取ったのは特待生のチームである。ジャンプボールで弾かれたボールを拾い、そのまま一人でゴールに突っ込んで行く。
「先ずは先制ゴール!」
ゴールに向かった選手はそう叫びジャンプした。……しかし、その選手の言うように先制とは行かなかった。
「それは、流石に舐めすぎでしょう!」
レイアップで決めようとし、その手からボールが離れた瞬間そのボールが弾き飛ばされた。ブロックしたのは三枝みのり、この学校でも有数の戦闘力を持つと俺が心の中で思っている人である。……ただ、いくら戦闘力が高いからと言っても、ブロックした時のジャンプ力は高すぎだろうよ。一体どれくらい飛んだんだ? 他の観客も”オオッ!”とどよめいている
おっと、弾かれたボールを取ったのは一組だ。素早くラインを割る前に素早くボールを確保したのは八千草さんである。小さい身体でバスケットボールを持つ姿はどことなく微笑ましさを感じさせる。
……って、ええっ! 八千草さんはボールを持つとそのままドリブルをして相手ゴールに向かって行った。
やたらと速く、上手いドリブルで相手コートに切り込んでいくが相手もさすが特待生と言うべきかボールが敵チームに渡ったとわかった瞬間に素早く自陣ゴールに戻っている。さすがに突っ込んでは行かないだろうなと相手の体格と身体の小さい八千草さんを比較してそう思っていたが……、八千草さんは体格差など関係ないと言わんばかりに突っ込んでいった。……欠片も微笑ましく無かった。
「今度はそっちが舐めすぎだ!」
八千草さんはドリブルの勢いのままレイアップに行った。しかし小柄な八千草さんの前には体格の良い特待生の選手がしっかりとブロックにおり、どう考えても防がれる未来しか見えない。
「舐めるなんて真似してないよ」
しかしそんな俺の予想は現実とはならなかった。八千草さんは上げていたボールを下げてそのまま後ろへとノールックでパスを出した。
「ナイスパス!」
「なっ!」
パスを受け取ったのは詩乃さんである、パスを受け取った詩乃さんはフリーであり既にシュートモーションに入っている。しかもスリーポイントラインからのシュートである。普通ならバスケ部員でも無ければ決まらないはずなのだが詩乃さんから放たれたボールは綺麗なループを描き、リングにぶつかることなくゴールに吸い込まれていった。
ゴールが決まった瞬間体育館が沸き立った。それもそうだろう、おそらく見ている観客も特待生が勝つだろうと思っていたはずだ。それが一組が特待生のシュートをブロックした挙げ句、逆に先制点を入れたのだから驚くのも無理はない。俺だって驚いているみのりさんのブロックにも、八千草さんのノールックパスにも、詩乃さんのスリーポイントにも。そして何よりもこの三人の内運動部員が一名しかいないのだ、ちょっとおかしく無いだろうか? 他の二人は今のところ目立っていないけど秘密兵器だと言われてももう驚かない。
そして特待生のボールで再開である。
「慌てなくて良い。まだまだ時間があるし直ぐに取り返せるから」
そう言ってボールを持っている特待生チームの選手がみんなに声を掛けパスを回している。先程の展開と違って今度はゆっくりと攻めてきている。実際その選手が言うように身長差があるので一組の選手の上をパスが簡単に通っていく。そして声を掛けた選手にボールが戻ってくると素早くシュートを放ち綺麗にゴールに入った。派手さは無いが堅実なプレーで得点を返してきた。恐らく一組のレベルの高さに浮き足だちそうだったメンバーを落ち着ける意味も有ったのだろう。
その後、一組は詩乃さんを中心に、特待生チームは先程の彼女を中心に得点を重ね12-9と特待生リードで第一クォーターが終了した。
良い試合をしているのでは無いだろうか? おそらくだがバスケの特待生は得点を決めていた彼女一人で他の選手は違う競技の選手なのだろう、やはり競技が違うと勝手も違うのでやりづらいのかもしれない。
まぁその事を抜きにしても一組チームのレベルの高さはちょっとおかしいけどな!
……しかし、男子の試合と女子の試合でこんなにも違う物なのだろうか? 少し悲しくなってきた。




