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XXXX.真っ黒な世界のルシアン・レクメリア 前編

「……おもしろくない」


 生まれた時から、白黒な世界に住んでいた。よくある台詞かもしれないが、本当にその言葉が適切だろう。

 嘘をつくのが得意だった。そして、嘘を見破るのも得意だった。嘘をつくときの状況、仕草、感情を自分に当てはめることができる。



 私は第三皇子、ルシアン・レクメリア。誰からも期待されぬ微妙な立場だ。みな、双子の第一皇子──兄上と第二皇女──姉上ばかり。皇族で双子というのはかなり珍しいらしい。


 第一皇子は将来の皇太子だ。そして、第二皇女は少し身体が弱かった。


(二人にかかりきりになるのも、仕方がないんだ)


 とは言っても、一応皇族なので最低限の教育は受けられた。だが、私には簡単すぎた。


 そんな日々を過ごしていたある日、フェリシアン・レーヴという同い年の少年が私の生活に入ってきた。

 初めこそ、皇族として扱ってくれていたものの、仲良くなると友達のように接してくれるようになった。愛称で呼んでくれるようになった。彼の出自に纏わる秘密を教えてくれた。


「ルアン」


 そう呼んでくれるのは、フェリシアン──リアンだけ。

 周りは、上っ面だけだ。私は信頼も信用もできる気がしないような人たち。彼だけが、私にとって美しく見えるものだった。





「お初にお目にかかります、殿下」


 そして、また一人。私の生活に、デューク・メラルティンが入ってきた。彼は私のことを誰よりも尊重して、自慢にはなるが敬愛されている、とも思う。他のとは違うのだ。第三皇子ではなく、ルシアンを守りたいと思ってくれている。

 私の中には、彼らを中心に、鮮やかな色へと変化していった。





 貴族学院に入学すると、私にも公務が課せられるようになった。父──陛下は私に皇帝補佐になることを望んでいる。

 二年生になると、第四皇子である弟が入学した。そして、弟にも少しではあるが、公務が課せられる。


「……ルシアン殿下、アレン殿下より……こちらが」


 デュークからその手紙を受け取り、私は封を開けた。デュークは第四皇子、アレンの側近から無理やり持たされたらしく、彼は中身を知らない。


「……」


(馬鹿なのかな、アレンは)


 私は首を傾げる。


 手紙の内容はアレンの公務をルシアンに、一部やらせるというものだった。アレンはこの国一と言われる美丈夫だ。そのため、周りから持て囃され、少し態度が大きいところがある。皇族という立場上、両親は子供たちの教育に付きっきりになることはできない。両親も頭を悩ませる問題だ。


 ──今回もそれなのだろう。



「殿下、どのようなご用件だったので?」


「……アレンが私に公務を頼みたいんだって。建前では忙しくて難しい……って書いているけれど、どうせ行きたくなかったんだろうね」

「その公務というのは……?」

「平民街の偵察さ。華やかさを求めるあの子では、絶対に嫌がるとは思ったけれど」


 平民街、もっと言うと孤児院だ。

 それなりに洗われている、とはいえ孤児は孤児──というのがアレンの意見なのだろう。


「ハァ、断ってもいいけれど……どうしようかな」

「殿下! 弟君にも毅然とした態度で参りましょう。今すぐこれを突き返して──」

「いいよ、デューク。ここで突き返しても、『冗談だった』とアレンが言えば、あの子を反省させる材料がなくなってしまうからね。……父上たちが叱ったところで、あの子が更生するのは難しいだろうけれど」


 私の言葉に、デュークは頷いた。




 そうして、私は護衛を引き連れて、平民街にやって来た。その日は祭りでもあるのか、大通りには人がごった返しになっていた。


 貴族であり、そういうものには慣れていない私たちはその中に入ってしまい、身動きがとれなくなってしまう。貴族はこんな風に人混みにやって来ることはないので、私たちはどうすればいいかも分からず、立ち往生していた。


「……ルシアン様!」

「……ぁ」


 小さく言葉にならぬ声を発し、私は護衛に向かって手を伸ばす。

 だが、届かなかった。どんどん護衛たちの姿は離れていく。




 何とか、人混みから抜け出すことには成功。だが、護衛たちは今だに見つかっていない。


(……はぐれたら孤児院に集合とは言っているけれど)


 私自身は孤児院に向かったことがない。去年も同じように平民街の偵察に行ったが、孤児院には赴いていないのだ。


「……どうしようか」






「何やってんだ?」

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