XXX.〈魔王〉復活までの準備
それから数時間。アダたちほ未だに待機していた。
結界が不安定になっているので、致し方ないのだが。
ついでに、〈光明の英雄〉は皇帝に呼び出されたため不在で、代わりにトイフェルが戻ってきた。
魔術具の納品に行っていたらしい。
今はルネティアとトイフェルで、結界を観察している。
「……」
「只今戻りました」
トイフェルとルネティアが戻ってきた。
「……結界に破壊される様子は今のところ見られない。ただ、油断は禁物だ。一ヶ月ほどは気をつけた方がいいだろう」
(良かった……けど、いろいろ気をつけなきゃなんねぇな)
ということで、アダとフェリシアンは貴族学院に帰宅した。
◇◆◇
「アダ!」
「アダ様っ」
寮の自室に戻れば、エルネスタと侍女のオティーリエが待っていた。
「おかえりなさいませ。ホルツ――いえ、ベアトリスからお話を聞いたときは血の気が引きましたわ」
「アダ様、何があったのです?」
オティーリエが首を傾げた。
「……〈魔王〉が復活しかけたんだよ。何とか師匠が封じ込めたんだけど」
「……アダには何もないですか? 怪我してないですか?」
「あぁ、ただ集合命令が掛けられただけだ。大丈夫」
アダはエルネスタを安心させるようにそう言うと、エルネスタはホッとした顔を見せた。
◇◆◇
「……急に出ていくから、驚いたわ。何があったの」
次の日の授業で、ベアトリスはアダに問う。
「あー……誰にも言わねぇって約束するか?」
アダはコソッと耳打ちをした。
一応、〈魔王〉復活の件に関しては〈英雄〉の一族と皇家の機密事項なのだ。ルネティアには、信用できる人物には教えてもいいとは言われているので、エルネスタ、レミリア、オティーリエには事情を話していた。
「……えぇ」
少しあった間が気になるところだが、アダは〈魔王〉復活の件について、ベアトリスに話した。
「……なるほど。聞いたことはあるわね。〈魔王〉の悲劇についても。……それに、ホルツヴァード侯爵家もよく〈魔王信教〉には誘われていたわ。今や、〈英雄〉反対派の貴族のほとんどは〈魔王〉信徒だもの」
ベアトリスはため息をつきつつ、そう言った。
(……そんなに〈魔王〉信徒って多いのかよ)
「…………ねぇ、アダ。今度、お父様に会ってもらえない?」
「え、は? なんで? お前の父君は――」
「えぇ、〈英雄〉反対派よ。でも、やりたいことがあるの。協力して。あと、約束を破ることになるかも。それでもいいかしら?」
それを非常に真剣な顔で言われて、アダは断ることができなかった。
(……〈光明の英雄〉様たちを悪く言われるの、結構嫌なんだけどな)
「やぁ、来てくれて嬉しいよ、〈青嵐の英雄〉殿」
ニコニコと、作り笑顔を浮かべた顔が目の前にある。白髪があるほど老けているわけではないが、貫禄のある男だ。
彼が、ベアトリスの父、ホルツヴァード侯爵である。
「いえ、こちらこそ、ご招待どうも」
アダも苦手な作り笑顔を少しだけ浮かべた。いつものことながら、普通の貴族のような作り笑顔では、かなり気持ち悪い顔になってしまうのである。
「お二人共、無駄な探り合いはなしにしてくださいませ。今からするのは、大事なお話ですので」
ベアトリスがそう言って仲介する。
「〈魔王〉復活の件について、お話いたしましょう? お父様、アダ」
◇◆◇
「クソッ! また失敗かッ。邪魔な〈英雄〉共め……!」
「まぁ、あなた。そんなに怒らないで? 非常に五月蝿いわ」
小さな執務室に、父の怒号が響き渡る。そして、母の甘ったるい声も共に響いた。
(あぁ、面倒だわ。お父様は自分の思い通りにならないと、機嫌が悪くなるのよね)
そう思って、レミリア・ノイマンはため息をついた。
アダたちが〈魔王〉復活の予兆により招集された次の日。急に父に呼び出されたかと思えば、愚痴の捌け口にされるらしい。
「レミリア、お前だ。お前の番なんだよッ……!」
もうすぐ伏線回収がたくさん来そうなので楽しみです、ふふ




