閑詩 勇天出立 —帰還と新たな任務—
時間は少し戻り、アスハ達が旧校舎地下の探索を始めた頃、地上にて。
浅金の髪色の少年が学園本校舎の一階を誰かを探しているのか、それとも目的地があるのかゆっくりと歩いていた。
すると、浅金の少年の目線の先で乳白色の髪色の少女が羽を揺らしながら、軽やかな足取りで近づいてくる。
「アーくんだー。やっほー」
呼ばれた少年はアルト・リンデ・ディ・アルマスフィル。
アルマスフィル皇国第一皇子にして勇者協会B級勇者の資格を与えられている。
アスハ達が視察初日に警戒した内の一人だ。
そんなアルトに声を掛けたのは——。
「やぁイリアさん。ちょうどいい所に」
自称天族イリア。彼女はアスハたちと遭遇した時と変わらず、気が抜けるようなぽわぽわした喋り方でアルトに聞く。
「なになにー?」
アルトは顎に手を置き少し考える。
「……学園内が物悲しいというか、少々騒がしいような。なにかあったんですか?」
アルトの問いにイリアは首を傾げる。
「よく分かんないけどー、行方不明者が出た?らしいよー」
イリアの返答にアルトは神妙な面持ちで再度問いかける。
「行方不明者、ですか。ちなみに人数とかは分かりますか?」
「40人くらい?って噂してたよー」
「結構多いですね……」
アルトは再度顎に手を置き考える。
「……これは調査した方がいいかもしれませんね」
アルトのつぶやきにイリアがドヤ顔で答える。
「それなら心配ごむよー。神獣天人さまが来てたよー」
「神獣天人様が?行方不明者の調査にですか?」
「わかんないけどーやってくれてるんじゃないかなー?」
イリアのどこか確信めいた言い方にどこか納得のいかないアルト。
「そうですか……」
イリアから視線を外し空中を見つめる。
「……一度学長に聞きに行ってもいいかもしれませんね」
アルトは再度イリアの方へと向く。
「イリアさんも行きますか?」
問われたイリアは軽く羽を動かし、そっぽを向く。
「いかなーい」
普段から面倒臭がりのイリアの性格を知っているアルトは納得する。
「わかりました」
アルトは学舎の方へと向いていた足をはたっと止める。
「……行けませんね、忘れるところでした。
近いうちに帝都へと行きますよ」
黄昏色に染まりかけた街へ出かけようとしていたイリアは声をかけられ振り返る。
「帝都ー?なんでー?」
「協会の帝都支部から調査依頼が来るそうです。僕たち四人宛ですね。正式な依頼が出されるまで学業に励んでいろ。との事です」
「わかったー。ばいばーい」
──
数日後、アルトは霊脈船発着上に来ていた。
同行していたイリアは何かを見つけたのか、手を振る。
「おーい六席さまー」
霊脈船の小窓からクルミが軽く手を振ってくれていた。
「クルミ様ですね。アスハ様はいないようですね」
「そうみたいだねー。あったことあるんだー?」
「先日、少々ありまして」
「さあ、僕たちは次の便ですね。近くに行って待っていましょう」
「おー」
そこでなにかに気づくイリア。
「ていうか、あれー?」
「どうかしましたか?」
「ルーちゃんとネーちゃんはー?」
「お二人は異変解決で尽力してくれたようですので、今回はお休みです」
「二人でだいじょうぶー?」
「主目的は調査なので大丈夫ですよ」
「そっかー」
イリアはバサッと羽を一度羽ばたかせる。まるで周りの視線など気にしていないかのように。




