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Seventh Øne  作者: 駿
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理想を懸けし者達 ③

 左手で胸に付いてるコアを触れて、手を綺麗な虹色に輝かせた。

 僕は、その左手を力一杯に握り締め、理気力を全身に行き渡らせる。

「ふふ……ふふふふ…………!」

 全身が虹色に光るこの一瞬は、いつだってたまらない。

 僕は強く、特別な人間なのだと実感させてくれるから。

 この状態になった僕を無敵だ、どんな奴にも負けない。

 向かって来たイレイノムもこの力があれば楽勝だった、アイツにだって勝てる!

 諦めろだと?見下しやがって、何度も僕に熱いのを浴びせやがって。

 今にその態度を崩して、ぐちゃぐちゃの醜い泣きっ面にしてやる!

 僕は右手をロボットへ突き出す。

「…………」

 駄目か!

 僕は地面に、両の掌を叩きつけ――。

 

 前方に広がる一帯の地面を、扇状に鋼鉄の針の筵へと変えた。


「ちっ……!!」

 ロボットは、地面が鋭く隆起し出す直前に翼で飛び上がって、無数の針による串刺し刑を躱していた。

 まぁアイツなら避けるかもと思ったよ。

 でも、これはどうかな?

 僕は右手を横に払い、聳え立つ巨大な針の根本を一斉に切断し、切り離された針を全て虹色に輝かせ――。

 追尾するミサイルに作り直し、奴に目掛け発射する。

 強化された僕の力は、直接手に触れなくても、ある程度の距離までなら自在に変化出来る。


 …………最初にアイツの憎たらしい機械の鎧をぐにょぐにょにしようとしたけど、それは効かなかった。

 アンサラー相手に発動するならもっと近づくか、触れないといけないのかもしれない。


 ミサイルは狙い通り、列を成してロボットを追い掛けていた。

 ふふ、精々格好悪く逃げ回りなよ。

 今の内に――。

「ッ!」

 ロボットが、翼から出る火の勢いを強め、ある程度離れた所で左腕のガトリングをミサイルに放って起爆した。

 隣接していたミサイルから始まる誘爆の連鎖も引き起こして、ミサイルの群れを退ける。

 対処が早いんだよ、もう……!

 でも、注意は僕から離れた。

 僕は落ちていた小石を左手で掴めるだけ拾って、ジャンプする。

 地面を、僕が想像する限りの超超超高反発のトランポリンに変えて着地。

 その反動で奴の所へと一直線に跳び上がり、右腕を伸ばした。

 僕と奴との距離が、あっという間に縮まる。

「これで終わりだぁッ!!」

 力の範囲内にまで、この右手が奴に届けばおしまい。

 僕の、勝ち――!

「ッ、チィッ……!」

 鎧の右足の表面にヒビが入った所で、また距離を離された。

 ――まだだ!

 左手で掴んでいる小石の1つを、跳んでいく先へ投げる。

 石は僕のイメージ通り、ホバーボードに変わって僕の身体を受け止め、すぐに奴への追跡を開始した。

 強い向かい風に煽られながら僕はホバーボードの上に立ち、推力を最大まで上げて、逃げる奴へ右手を伸ばす。

 今度こそ、これで――!

「ッ⁉」

 範囲内へ届く前に、ロボットは左方向へ直角に軌道を変えて僕の右手から離れた!

 全く、往生際が悪いんだよ。

 このボードは、アンタよりも速く飛べることを念頭に作ったんだ。

 いくら逃げ回ったって、追いつけ――。

「ッ!?ッ……!ッ――⁉」

 何だよこいつ、ちょこまかと!

 ボードを曲がった先に向けたら、またすぐに逃げやがって。

 ――畜生!

 速度が勝っているだけのボードじゃ、奴の小回りに対応出来ない。

 視界に捉えられなかったら、無力化のしようが――!

「ッ⁉アァッ!!」

 僕の背中に、下斜めから一直線に掛けて熱いものが走った。

 でもこれはビームによる熱じゃない、熱が一瞬で冷めて痺れる痛みがずっと残っている。

 血も、大量に垂れて身体を濡らしている。

 まさか、斬られた⁉触れたら負けと知っていながら、態々⁉

「ッ……!!」

 舐めた真似を――!

 どこにいるロボット!アンタは今どこにいる!?

 もう一度掛かって来い、次はとっ捕まえてや――!

「うぁッ!!」

 真下⁉

 ボードで見えなくなっている真下から放たれた光線が、ボードに風穴を開けた。

 開いた風穴から、内部で発生した煙が漏れ始める。

「クソッ……!」

 治した所で、この状況が続くだけだ。

 僕は背中に翼を生やし、ボードを足蹴にして飛び立った。

 乗り捨てたボードは、飛んだ直後に爆発した。

 ボードがあった位置の真下にもう奴はいない、また僕の死角に回り込んで光線を放つつもりなんだろう。

 ここは一旦、地上に戻ろう。

 空中戦だと奴の動きに翻弄されるだけだ。

 僕は翼を硬くて厚い殻に変えて僕を包み、地面に落下する。

 この殻ならビームも防げるし、落ちた衝撃も吸収される。

「…………」


 地面に激突するまでの数秒間。

 僕は暗い殻の中で、奴を倒す方法を考えた。

 ……どうすればいい、どうすればあの鎧を壊せる。

 飛び回っている奴相手に、ただ闇雲に手を伸ばして無力するんじゃ駄目だ。

 もっと力を活用して機動力を殺さないと。

 どうやって、どうやって、どうやって。

 ……巨大化すれば、ビームも剣も掠り傷になるし、能力の範囲も広がって追い詰められるかもしれない。

 だけど、その分理気力の消耗が激しくなる。

 すばしっこいアイツを、短時間で倒せる自信がない。

 あの翼を壊すだけでもいい、もっと確実な方法を――。

 あぁ、思いつかない!

 何でも変えられるのに、何にでも変われるのに!!

 そもそも、あの密着した時に胸から手を生やして触れれば、鎧を壊せていたじゃないか。

 今考えたらあれが絶好のチャンスだった、何で生やす発想にならなかった。

 せめて、右手に付いてるあのビームを壊せていれば――。

 それにホバーボードに乗ってた時も、身体中に目を生やして視界を広げていたら、翻弄なんてされなかったし、ボードの真下へ潜られたことにだって気づけたかもしれない。

 どうして大事な場面で、今みたく考えつかなかったんだ。

 その結果が、こんな暗い所に閉じ籠ってる現状なんじゃないか!

 暗い所に居続けるのは、嫌なのに!!

「……はぁ」

 悔いてもしょうがない。

 大事なのは、今どうするのかであって――。

「えっ?」

 殻の一部が灯って、明るくしている。

 どうし――。

「ッ⁉ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 熱い!

 光線が殻を貫いて、僕の足に当たって焼いている!!

 足から腹に、腹から肩に上って!

 ――あの腰に付けてたビーム砲か!

 何だよ!考える時間くらい、こっちにくれたっていいじゃないか!!

「ッ!」

 デカいビーム砲の光線で殻を焼き裂かれ、その隙間から、遠ざかる空が目に映った。

 空にいるのは太陽を背にして、デカいビーム砲を構えながら僕を見下ろすロボットと――。

 その周囲で浮遊する、鳥みたいな機械の大群だった。

 30匹はいる、あれは一体……?

「……ひぃッ⁉」

 鳥の口に、あの朱い光が集まっていく!一斉に!!

 全部が、移動するビーム砲なんだ。

 それを一点集中で放射して、僕を焼き殺すつもりなんだ!

「ッ!」

 衝撃音と共に、背中に揺れが伝わった。

 よし、地面に着いた――。

 僕は、急いで殻を自切してかまくら状の防壁に作り直し、姿を見せないようにしながら地面を柔くして潜り込む。


 深く……もっと深く…………!


 ビームが届かないだろう奥深くまで掘り進み、僕は身体を今の半分ぐらいのサイズに縮んで、地中にスペースを作った。

 壁や天井を鋼鉄に変え、簡易的なシェルターも完成させて攻撃に備えた。

「ッ!」

 揺れが起きた。

 アイツと鳥達が、一斉にビームを地面に撃ち始めたんだ。

「…………」

 大丈夫。

 隠れて潜った以上、アイツは闇雲に放つしかない。

 時間は出来てる。

 今の内に冷静を取り戻して、対策を練る。

 ……いや、逃げるか?

 今の状況なら、問題なくここを離れられる。

 無理に戦うことなんてないし、一度離れてアイツとの決着は別の機会にするのも――。

「ッ…………!!」

 あぁ、五月蠅い五月蠅い五月蠅い!

 爆発の音が引っ切りなしに響いて、考えが鈍る!!

 何も見えないぐらい暗くて、五月蠅くて、揺れている…………。



「おい、早く逃げるぞ!!」

「で、でも……まだあの子が…………!」

「ッ……あんな足手纏いはもう、俺達の息子じゃない!行くぞ!!」



「ふふ。ふふふふ…………!!」

 逃げる?冗談じゃない。

 僕をこんな状況に陥れたアイツは、絶対に叩き潰す。

 嫌なことを思い出させやがって、必ずその鎧を剥いでぐちゃぐちゃにしてから、容赦なくぶちぶちと――。

 ……不思議と、頭が冷静になった。

 遠隔で物を変化出来る今の僕ならではのトラップで、あの翼を破壊する。

 例えば、透明で風船のように軽い物を気づかれないずに空中に漂わせ、奴がそれに背を向けた瞬間に棘へと再変化させて翼を壊す。

 ――うん、僕ながらいい作戦だ。

 じゃあタイミングを見計らって地上に出て、それを実行し――。

「…………?」

 揺れと爆発が突然治まり、完全な沈黙が訪れる。

 砲撃を止めて、出て来ていないか様子を見ている?それとも諦めてどこかに行った?

 確かめてみよう。

 僕はシェルターの一か所に小さな穴を開け、そこへ指を通して地上へ向かわせる。

 中から出たなら指先に目を作れば、状況は分かる。

 僕はひたすら指を伸ばし続けた。

 ………………。

 …………。

 ……。

 指先が空気を感じた。

 目を生やして、アイツが今何をしているのか、見えないよう観察し――。

「ッ⁉」




 地面に深く潜っていれば、見つからないとでも思ったか。

 甘い奴だ。

 レーダーの感度を上げれば、アンサラーが常時放出している微弱な理気力を感知して、位置を捉えられる。

 奴が今、触手の目で俺を見ていることも――。

「アクトリア、大型ビーム砲のモードを変更」

「了解。照射モードから命撃モードに変更します」

 大型ビーム砲の銃身が縦に展開し、電子回路めいたラインが走ったもう1つの銃身が露わになる。

「ターゲット。ロック」

 大型ビーム砲の砲口を地面に向け、チャージを開始。

 ビーム砲の内部で充填音が響き始め、銃身のラインに銀朱の光が灯る。

「……8……7……6……」

 これまで使用していた照射モードは、長く維持される熱線で寄せ来る障害を焼き切るものだが、命撃モードは違う。

 一発に9秒ものチャージが必要である上に、放てばアイゼン弐式の機体性能が一定時間低下してしまうという、高いリスクが存在する――。

 しかし放たれた光線は、ドグマ・バーストに匹敵する程、絶大な一撃となる。

 これで、決着をつけてやる。

「5……4……」

 充填音は激しくなり、砲口から光が漏れて周囲を眩かせる。

 普通なら目も開けられない輝度だが、ロックオンを済まし、マスクの対閃光防御機能が働いている俺に影響はない。

 狙いは、絶対に外さない。

 さぁどうする、アンサラー。

 何もしなければお前はビームの餌食だ。

「3……2……ッ!」

 地面が、ヒビ割れながら盛り上がり、大形の右手が地表を突き破った。

 一帯の大地が噴火のごとく凄まじい勢いで吹き飛び、巨人となったアンサラーが姿を現した。

「オオオォォォォォォォォォォォッ!!」

 重低音に変化した声を轟かせながら、アンサラーは俺に両手を伸ばして射撃の阻止に掛かる。

 しかし――。

 判断が、遅かったな。

「0」

 トリガーを引く。

 瞬間、朱い光で視界が染まり――。

 砲口から、大気を裂く衝撃が伴った、絶大な光子の激流が放出された。

 同時に俺はウイングスラスターも吹かし、反動を制御。

 狙いを1㎜たりともぶらさず、一直線に光線を奴の頭部へ命中させる。

「ッ!?ゥグゥゥゥゥゥ……ッァァァァァアアアアッ!!」

 最初、アンサラーは消滅と再生を必死に繰り返しながら頭部を守り、尚も両腕で俺を掴みに掛かるが――。

 この光線がもたらす過大な圧と熱に、その大した執念も次第にへし折られ――。

「ッ、グググ……ゥ……!ガ……ァアッ…………!!」

 身体は敢えなく仰け反り、背中から地面に倒れる。

 大地は震撼し、背落ちの衝撃で土煙が周囲に蔓延した。


 俺はエネルギーを切って放射を中断し、激しい排熱が起こすビーム砲を収納。

 奴が這い出て作られた穴を越えて降下し、徒歩で倒れたアンサラーの元に近づいた。

 撃った直後では暫く満足な飛行は出来ない、それを悟られないように歩きで余裕を見せる。

 まぁ、あの一撃を当てた以上、勝負は決まったも同然だがな。

 巨人化は既に解除され、元のサイズへ縮んでいる。

 倒れて開けた平らになった地面を緩やかに歩きながら、レーダーで奴を調べた。

「…………」

 感知した奴の理気力反応は微弱なものになっている、共命理はまだ解けていないが、倒れたまま動かない。

 意識を失ったか?

 いや、共命理状態でそれはない。

 なら倒れたまま再生に専念しているのか?それとも油断を誘っての不意討ち?

 だが仮に不意打ちが来て、何かしらの一撃を見舞われたとしても、最早アイゼン弐式なしでも片がつく戦いだ。

 万事、問題はないことを確信し、俺はアンサラーのすぐ近くにまで辿り着いた。

「ぐぅぅ、ぅッ……はぁ……はぁ…………!」

 倒れたアンサラーは必死になって、身体から火傷を取り除き、皮膚を新たに作り直していた。

 …………勝負は、決定的だな。

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