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Health Control  作者: ZIRO
14/23

第13話【入学式】

「百華!!用意できたの!?」


「ちょっとまって、リボンがキツイ」




入学式の朝。


中学の時より1時間早く鳴った目覚まし時計に、選んだ学校が遠い=通学時間が長い=早起きしなきゃいけないっていう現実を、思い知らされた。


思い知らされながら、二度寝に落ちていくあたしを、喧しく叩き起こしたのはもちろんお母さん。


まぁ、それはしょうがない。許す。


二度寝したあたしが悪いからな。


でも、そっからずーーーっとうるさいのは、ちょっとカンベンしてくれよって思う。


急いでるっつーの!


ちゃんと時計見ながら動いてるっつーの!




あたしが、洗面所の鏡の前で制服のリボン付けてたら、またお母さんの叫び声。


前もって長さを調整しといたはずなんだけど、なぜか今付けようとしたらリボンがキツくなってて、上手く着けられなくて、苦戦してイライラしてるってのに


「もう、何やってるのあんたは。制服は一回着て、いろいろ確認しておきなさいって言ったでしょ」


て言われたら


「そんなこと言ったって、知らない間にキツくなってたんだもん!!」


余計にイライラするに決まってんじゃん。


おっかしいなぁ。リボンは届いた日に試着して、長さを合わせておいたのに、今日になってキツくなってたんだ。


たぶん、使ってないと縮むゴム使ってるんだ。


じゃないとあり得ない。


こりゃ毎朝リボンの調節が必要になるかな。


「知らない間になんてことないでしょ!!ちゃんと合わせておかなかったから…」


「ああ、もうできたから、できたからもういいよ、行こう」


どうも最近のお母さんは怒りっぽい。


こっちまでイライラする。


はぁ、今日から高校生だっていうのに、朝からなんでこんなに気分が悪いんだ、まったく。




あたしが行く女子高はちょっと遠くにあるから、中学の同級生はほとんどいない。


電車を乗り継いで1時間ちょっと。


まずは、都心へ通うサラリーマンの群れに揉まれながらの通学に、慣れないといけない。


ま、あたしの体型なら大丈夫だろw


満員電車を降りて、学校最寄りの駅から更に歩いて20分。


バスもあるけど、通学の時間帯は他の学校や大学もあって超混むから、歩くか自転車の子がほとんどらしい。


いいダイエットになるかもって思ったから、あたしは歩くことにした。


こうやって自然にダイエット思考になれるなんて、春休み前の自分からは考えられないな。


毎日お宮の公園に出掛けてたから、歩いたり走ったりが苦じゃなくなったのかな。


先生に会いたくて通ってたから、先生のお陰だな。先生に感謝しないと。


その駅から学校までの道を、今日はお母さんと歩く。


周りを見渡せば、全然知らない女の子だらけ。


なんかね、女子高に来たんだなーって思うね。


お父さんと一緒に来てる子もいるけど、お父さんがソワソワしてる感じがちょっと笑える。




ちなみに、同じ敷地の中に附属の大学がある。


ていうか、大学の敷地の中に附属の高校があるって感じかな。


その大学の『講堂』っていう、でっかいコンサートホールみたいなところで入学式をやるらしい。


体育館じゃないんだって。


なんか、私立に来たんだなーって思うね。




旗を持った先生っぽい人達が、こっちだよーって誘導してくれる。


うわぁ、なんか厳つい感じの男の先生もいるなぁ。


高校の先生って、やっぱ怖いのかなぁ。




講堂に着くと、親と子は別々の所に案内される。


生徒達は前の方に、親達は後ろの方に案内されて、あたしたちはクラスごとに出席番号順に座る。


クラスは事前に知らされているから、あとは自分の番号を探して座る。


あたしは、C組か。『デブ』のDじゃなくてよかったwww


そういえば、同じ中学の子が1人、この熊沢女子に来てるって、中3の担任が言ってたな。


ま、中学で一度もクラスが一緒になったことない子だし、小学校は別だったし、面識もほとんどないから喋んないと思うけど。


それでもざっと見渡して、つい探してしまうのはなんでだろう?


ま、さすがに顔ぐらいは覚えてる。だってその子は……


「小松さん、おはよう」


「うぇ!?」


いきなり名前呼ばれて、変な声出たやないかい!!


てかなんであたしの名前わかるの!?


って思って、話しかけてきた人の顔を見ると


「あ、さ、桜井さん!えと……あ、おはよう」


今、なんとなく探してた中学の同級生だった。


見間違えるはずがない。だって桜井さんは、中学の3年間、ずっと学校で一番の美少女って言われてた、あたしと真逆の存在だから。


もちろん、取り巻きは常にスクールカースト上位陣。


このあたしの巨体を待ってしても、存在感で確実に負ける。


恋愛云々とはまた違った、別世界の人。


だから、たとえ高校で同じクラスになっても、まず喋らないって思ってたのに…


さっそく喋りかけられたしw


「よかったぁ!まさかの小松さんと同じクラス!?ここってさぁ、うちの中学からほとんど受けてないじゃん?あんまり知ってる人いるのも嫌だけど、知り合い全然いないのも嫌だもんね」


てか、めっちゃ喋るやないかいwww


「そ、そう、だね」


こんな可愛いコに話しかけられるなんて、全然想定してねぇから相槌もマトモにできねぇよwww


「でもまさか、同じクラスで席が隣なんて思わなかったぁ」


え?隣の席?


あ、そっか。


『こ』まつ と 『さ』くらいだから、出席番号順で連番になってんのか!!


うわぁ、全然想定してなかった。


いや、そもそも同じクラスになることすら、全く想像してないし。


つーか、学校1の美少女だったあなたが、なぜ学校1のデブ女のあたしにそんなフレンドリーなの?


まぁそりゃ、同じクラスになれば挨拶ぐらいは交わすだろうとは思うけど、決して交わることのない人種同士な気がするんだが。


「あの、さ…」


桜井さんの止まらないマシンガントークに、なんとか頑張って入り込むと


「ん?」


意外と聞く姿勢になってくれた。


「あ、あのさ、中学のときってさ、あたし桜井さんと、あんまり話したことないよね?」


「そうだっけ?」


いや、そうだよ。


人気者は、誰と喋ったかすら覚えてねぇのか!?


それとも、あたしが記憶喪失かい!?


「ああまぁ、言われてみればそうかも」


どっかよくわからん斜め上を向いて、右手の人差し指を顎にあてる桜井さん。


天然か?って仕草も、あたしがやってもただキモイだけなのに、こんな美少女がやると様になる。


「でも小松さんて有名だから、私はよく知ってるよ!」


「有名!?え、あたしが!?」


むしろ有名なのは、学校1の美少女やってた、アナタのほうでしょうがよ。


「あっ……うん、まぁ…ね。よく友達同士で話題になってたかな。小松さん元気いいから……ははっ」


て、思ったら、なんだかしどろもどろの桜井さん。


「あっ」てなんだ「あっ」て。


なるほど、あたしが知らないだけか。


そりゃそうだよな。


170cm近い身長と90kg級のデラックスな巨体で、目立たないわけないわな。納得納得。


「ああ、あれでしょ。デラックス的なやつでしょ」


あたしが満面の笑顔で言うと


「いやぁ……はははっ」


誤魔化しきれてないっつーの。


「いいよ、気にしなくても。あたしは生まれた時からデカイし、気にしてないから。てか気にされる方が逆に気になるしw」


明るいデブ特有の豪快な笑いで吹き飛ばす。


これをやると、大抵の人は気にしないどころか遠慮がなくなり、ネタ物にしか扱わなくなる。


更に


「そうなんだ。小松さんて…」


「あ、マツコでいいよ」


「え?」


「あたし、ずっとマツコって呼ばれてるから、マツコの方が落ち着くし」


まず、自分で自分を壊せるとこまで壊す。


これをしておけば、だいたい何を言われても傷つかなくなる。


デブがいじめに合わないための、防衛策だ。


「あはっ…やっぱり小松さんて…マツコって面白い人だね」


桜井さんの緊張が解けたのがわかった。

ご閲覧いただきありがとうございます。誤字・脱字、矛盾点等ありましたら、ご指摘頂けると幸いです。

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