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何で私は戻ったのでしょうか?死に戻り令嬢の何にもしたくない日々  作者: 万月月子


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お迎えよりも

おばば様の所へ行くと、ホッとした様に迎え入れられた。

「あぁ、良かった。出くわしてしまったのではないかと心配していたのよ」

「ええっと。それは何に?」

おばば様は、穏やかに微笑んで私の質問には答えなかった。

「それよりも、その精霊は?森の精霊なのね?こんな風に実体化したとは。スピカ、あなたは名付けをして契約を交わしたのね」

「名付け、というか。説明をしようと思ったのよ、ノアとレオンに。リーとスーはリスだけど、リスの森の精霊、リズはスーに良く似ているって」

リズは私の肩に乗ってふわふわの尻尾を揺らしている。

「これが森の精霊なのね。あなたが名付けたらここにいるたくさんの森の精霊が実体となって現れるのね。夢のようだわ」

おばば様はうっとりと目を閉じる。


おばば様の言う通り、ここにはリズ以外の森の精霊達もたくさんついて来てしまっている。

彼等皆に名前を与えたら、この部屋はぎゅうぎゅうになってしまうわね。

でも、実体を伴ったら皆にも見えるようになるわよね。

素敵だわ。


「でもね、スピカちょっと待って」

私が端から名前を考えていたことがわかったのか、おばば様がストップをかけてくる。

「実体化させるのはあと数年待ってほしいの」

「数年?」

「あなたが前回死んでしまった時までは」

私はドキリとしておばば様を見た。

「プロキオン、ラベンダー、リズ。もう既に3体があなたの周りに出現している。目立ち過ぎてしまうわ。国や神殿に目をつけられてしまう」

それは困るわ。

私がゴクリと唾を飲み込むと、レグルスお兄様に似た森の精霊がいつの間にか隣にいて、私の手を握った。

「おばば様。・・・神官の中にアルタイルお兄様に似た方がいたそうなのよ。そうしてお母様を見ておかあさまってつぶやいたらしいの」

「えぇ。・・・辺境伯から話は聞いているわ。でもね、ごめんなさい。私にもわからないのよ。彼がアルタイルの生まれ変わりなのかどうかは。ただ、死に戻りのように生まれ変わりの話も本当にあることなのよ」

あぁ、それなら。

神官の人が本当にアルタイルお兄様なのかしら?

私は少し肩を落としてレグルスお兄様に似た精霊を見た。

相変わらず私を見て優しく微笑む彼を・・・。


「ただ一つ言えるのは。今日はここでゆっくりして行きなさい」

「そうしたいのは山々なのだけれど。今日はレグルスお兄様とミアプラお姉様が帰って来るの。お迎えに出なければ」

ノアとレオンもその言葉で少しソワソワし始める。

もしかしたら、もう着いているかもしれないわ。

おばば様は、にっこり笑って「焼きプディングがもう出来上がるわ。それだけでも食べていったらどう?」と誘ってくる。

あぁ、おばば様の焼きプディングは絶品なのよね。

冷やしたのも勿論おいしいけれど、私は出来立ての熱々のプディングをハフハフしながら食べるのが好きなのだ。

「それならお言葉に甘えて」

ノアとレオンが食べ物に釣られた私を何とも言えない目で見てくる。

「な、何よぉ」

私がむくれて二人を見ると、仕方なさそうに首をすくめる。

「まぁ、腹減ったしいいんじゃね?」

とレオンは言って。

「プロキオン達が何かに警戒してるみたいだから、ここに留まった方が良いのかもしれないしね」

ノアにそう言われてプロキオンを見れば。

確かにいつもと違って私の前に出て何かを睨みつけるかのように立っていた。

いつもはスヤスヤ眠るラベンダーちゃんもいつの間にかポケットから抜け出て私の頭上で睨みをきかせる。

リズはふわふわの尻尾を逆立てているし、周りの森の精霊達も私を守るように陣形を組んでいるようにも見える。

まぁ、そんな風に見えるというだけで気のせいかもしれないけれど。

不安に揺れる私の手をレグルスお兄様に似た森の精霊がギュッと握ってくれた。

白い彼がアルタイルお兄様でなくてもお兄様と呼びたいわ、と思った。


「お待たせ。出来立て焼きプディングよ」


私はプディングに視線も思考も釘付けになり、憂いも何もかも忘れて夢中で食したのだった。


読んでくれてありがとうございます

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